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猫に連れていかれた先は
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「私も行くの?」
さっさと歩いていく猫におずおずと聞くと、
「にゃっ!」
「はい」
何だか怒られてるみたいに返された。
実際、魚は取れないし怒ってるんだろうけど、ついて来いって、ダメな猫と思われてるのかも。
「あの~、虫とかは食べないからね」
かわりに餌を取ってくれるつもりかもしれないけど、虫は無理。ちらりとこちらを見た黒猫は無視して森の中をどんどん進む。
背の高い木がうっそうと茂っているものの、お日様が木の間から光の筋を作っている。明るい光が差す中、上を見上げると、木の葉がまぶしく輝いて見える。幻想的で夜とは大違いだ。
「ねえねえ、名前ないと不便じゃない?」
黒猫に名前がないと呼びにくいなあと思ってたのよね。
「色が黒だから、クロでいいんじゃないかなあ、なんて」
黒猫は知らん顔で進んでいく。
「じゃあ、黒いから、のり! ひじき、気に入らない? あっ、まっくろだからクロスケ」
「シャーッ!」
「はい、ごめんなさい。気に入らないわけね。もういいわ、クロって呼ぶからね」
クロはこちらを振り向いて「にゃ」と仕方ないように鳴いて小走りに進んでいった。
「待って」
あわててあとを追う。結構長いこと歩いたと思ったが、森の先が明るくなってきた。
「もしかして出口?」
クロは光に向かって走り抜けていった。
長い森から出た先には草原が広がっていた。
しかもその先に赤い屋根や青い屋根、家々が遠くに見える。
町というより村なような集落。
クロは村に向かって走っていく。
「ちょっと! 早い!亅
自慢じゃないけど運動は苦手なんだって。
それじゃなくても森を抜けるまでも相当体力使って倒れそうなのに。
「休みなしなの?!」
知らん顔で走るクロの後をバタバタと追った。
「あら、あんた昨日は来なかったけどどこにいたの? あら? あんたも迷い子かい?亅
膝に手をついてはーはー言ってた私はハッとして顔を上げた。
クロが止まったところで息をついていた私。
そこは赤い屋根の小さな家で、丸窓の付いた木のドアからおばあちゃんが出てきたのだ。
「あ、あの私は亅
焦る私におばあちゃんは、
「あんた、疲れた顔して。いいから入んなさい亅
クロは勝手知ったる顔でさっさと中に入っていく。玄関口で目を泳がせてた私はおばあちゃんに腕を掴まれ、椅子に座らせられた。
「ほら、これ食べなさい亅
目の前に湯気の立つスープが置かれた。横には丸いパン。
クロはスープと魚を出してもらい美味しそうに食べている。
「あの亅
顔を上げた私におばあちゃんはまたもやほらほらとスプーンを手に握らせてきた。
一口、スープを口に入れるとほのかに野菜の旨味が広がる。
パンも焼き立てでやわらかい
おいしくて次々と口に入れる私をにこにこして見ていたおばあちゃんが、
「うまいかい? おいしいと思えたら大丈夫!亅
ぽんと背中をたたかれた。
何もかもわかっているようで小さい頃のおばあちゃんを思い出す。悲しいときはまずは食べなさいと私の好きなものを出してくれたっけ。
「あの、ありがとうございます」
にこっとしたおばあさんは、
「生きてればいろいろあるからねえ」
よっこらしょと腰を伸ばしてる。
「この子もちょくちょく食べにくるんだよ。あんたもスープでよければいつでも食べにおいで」
もう人を信じるのも嫌気がさしてたんだけどな。温かい食べ物で体の中も温まってきたようだ。
スープを飲みほした私は息をついた。
「美味しかったです。ありがとうございました亅
あわせるようにクロがニャーと鳴いた。
さっさと歩いていく猫におずおずと聞くと、
「にゃっ!」
「はい」
何だか怒られてるみたいに返された。
実際、魚は取れないし怒ってるんだろうけど、ついて来いって、ダメな猫と思われてるのかも。
「あの~、虫とかは食べないからね」
かわりに餌を取ってくれるつもりかもしれないけど、虫は無理。ちらりとこちらを見た黒猫は無視して森の中をどんどん進む。
背の高い木がうっそうと茂っているものの、お日様が木の間から光の筋を作っている。明るい光が差す中、上を見上げると、木の葉がまぶしく輝いて見える。幻想的で夜とは大違いだ。
「ねえねえ、名前ないと不便じゃない?」
黒猫に名前がないと呼びにくいなあと思ってたのよね。
「色が黒だから、クロでいいんじゃないかなあ、なんて」
黒猫は知らん顔で進んでいく。
「じゃあ、黒いから、のり! ひじき、気に入らない? あっ、まっくろだからクロスケ」
「シャーッ!」
「はい、ごめんなさい。気に入らないわけね。もういいわ、クロって呼ぶからね」
クロはこちらを振り向いて「にゃ」と仕方ないように鳴いて小走りに進んでいった。
「待って」
あわててあとを追う。結構長いこと歩いたと思ったが、森の先が明るくなってきた。
「もしかして出口?」
クロは光に向かって走り抜けていった。
長い森から出た先には草原が広がっていた。
しかもその先に赤い屋根や青い屋根、家々が遠くに見える。
町というより村なような集落。
クロは村に向かって走っていく。
「ちょっと! 早い!亅
自慢じゃないけど運動は苦手なんだって。
それじゃなくても森を抜けるまでも相当体力使って倒れそうなのに。
「休みなしなの?!」
知らん顔で走るクロの後をバタバタと追った。
「あら、あんた昨日は来なかったけどどこにいたの? あら? あんたも迷い子かい?亅
膝に手をついてはーはー言ってた私はハッとして顔を上げた。
クロが止まったところで息をついていた私。
そこは赤い屋根の小さな家で、丸窓の付いた木のドアからおばあちゃんが出てきたのだ。
「あ、あの私は亅
焦る私におばあちゃんは、
「あんた、疲れた顔して。いいから入んなさい亅
クロは勝手知ったる顔でさっさと中に入っていく。玄関口で目を泳がせてた私はおばあちゃんに腕を掴まれ、椅子に座らせられた。
「ほら、これ食べなさい亅
目の前に湯気の立つスープが置かれた。横には丸いパン。
クロはスープと魚を出してもらい美味しそうに食べている。
「あの亅
顔を上げた私におばあちゃんはまたもやほらほらとスプーンを手に握らせてきた。
一口、スープを口に入れるとほのかに野菜の旨味が広がる。
パンも焼き立てでやわらかい
おいしくて次々と口に入れる私をにこにこして見ていたおばあちゃんが、
「うまいかい? おいしいと思えたら大丈夫!亅
ぽんと背中をたたかれた。
何もかもわかっているようで小さい頃のおばあちゃんを思い出す。悲しいときはまずは食べなさいと私の好きなものを出してくれたっけ。
「あの、ありがとうございます」
にこっとしたおばあさんは、
「生きてればいろいろあるからねえ」
よっこらしょと腰を伸ばしてる。
「この子もちょくちょく食べにくるんだよ。あんたもスープでよければいつでも食べにおいで」
もう人を信じるのも嫌気がさしてたんだけどな。温かい食べ物で体の中も温まってきたようだ。
スープを飲みほした私は息をついた。
「美味しかったです。ありがとうございました亅
あわせるようにクロがニャーと鳴いた。
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