手軽に読める短い話

ぴろわんこ

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入れ替わりリモコン

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ある博士が珍妙なリモコンを発明した。そのリモコンをテレビに向けてスイッチを押せば、その人に入れ替わって自分がテレビに登場するのである。 

と言って効力があるのはリモコンを向けたテレビだけで、テレビ全てがそうなるわけではない。またそれをするためには、リモコンに自分の顔写真を入れておく必要があった。

しかしそうやって割り切れば、憧れの女優と共演するような気分を味わうことができた。男優が演じる顔や声も全て自分に入れ替わっているからだ。博士は毎晩ドラマや映画の男優と自分を入れ替えて、恍惚とする日々を送っていた。

その気になれば世に発表して儲けることもできたかもしれないが、博士はそうはしなかった。著作権とか肖像権とか、ややこしい問題がありそうだったからだ。それに何より自分一人で楽しみたかった。こんな趣味を人に知られるのが、少し恥ずかしくもあった。

ところがある日、博士の家は泥棒に入られた。多額の金と物を盗まれたが、その中に入れ替わりリモコンも入っていた。すぐに警察に届け出たが、リモコンのことは恥ずかしくて言えなかった。

泥棒が使い道を分かるとは思えなかったし、分かったとしても自分のように他愛もないことに使う分には害はないだろうと思ったのだ。

だが泥棒は悪賢かった。リモコンの使い道を見抜き、別人の顔写真をリモコンにセットした。そしてリモコンを防犯カメラに向けて、スイッチを押した。
その結果泥棒は荒稼ぎして、無実の人が捕まった。
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