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 ――残り時間0:52

 おどろおどろしい外観をした魔王城の城門をくぐり抜けると、大勢の兵士が待機していた。
 彼らがオレの代わりに魔界攻略をしてくれていた別働隊だろう。
 辺りに、魔物の気配はない。魔王城は彼らによって完全に制圧されたのだろう。

 彼らの声援を浴びながら、オレはリスティアとともに城内を進んでいく。
 オレなんかより彼らの方が賞賛に値するだろう。
 なにせ、オレは後をついて歩いてきただけだ。

 だけど、この先はそうはいかない。
 魔王の封印だけは、代わりがきかないのだ。
 勇者であるオレにしかできない仕事なのだ。

 全身を『勇者シリーズ』装備に包み込んで、オレはビビりながら魔王を目指す。

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 シズク・サクマ
 勇者 LV999

 HP  9999
 MP  9999
 STR  999(+999×2)
 DEF  999(+999×2)
 AGI  999(+999×2)
 DEX  999(+999×2)
 INT  999(+999×2)

 EQUIP
 ・勇者の剣(STR+999)
 ・勇者の鎧(DEF+666、AGI+999)
 ・勇者の盾(DEF+333、DEX+999)
 ・勇者の兜(INT+999)
 ・勇者の指輪

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 見よ、この綺麗に9が揃ったカンストっぷりを!
 ちなみに補正値が2倍なのは『勇者シリーズ』のセットボーナスだ。
 ただでさえ、スゴい数値なのに、更に倍率2倍というチート装備だ。
 レベル999のステータスとこの装備品があれば、魔王戦も恐れる必要はないだろう……きっと。

 魔王城は思っていた以上に広かった。
 城内を歩くこと20分以上。
 いよいよ、目的地に到着だ。
 見上げるばかりの大きな両開きの石扉。
 表面にはこれまた巨大な魔法陣が刻まれている。

 この先に魔王がいるのか……。
 あと30分で魔王を封印しなければならない。
 オレに出来るのだろうか…………。

「みんな、おまたせー」

 扉の前には3人の女性が待ち構えていた。
 イーヴァとラーヴルさんと、もう一人は知らない女の子だ。

 魔道士みたいな格好の女の子だった。
 蒼い三つ編みとメガネ姿の小柄な女の子だ。
 身長はイーヴァと同じくらい。
 黒いローブを纏(まと)い、同じく黒い宝玉をはめ込んだ長い杖を持っている。

「お待ちしておりました、シズク様」

 オレに向けて言葉を発した後、イーヴァちゃんの視線はリスティアに向く。刺々しい視線だ。
 リスティアのわがままで遅くなったことを咎めているんだろう。

 だがしかし、リスティアはどこ吹く風。

「やっほー」

 といつもの軽い調子に戻っている。

「イーヴァちゃん、この子は?」
「サーちゃんだよ」

 イーヴァちゃんと本人が答えるよりも早く、割りこむようにしてリスティアが答える。

「こほん。彼女は宮廷魔道士筆頭のサーラです」
「……サーラです」

 イーヴァの紹介に続き、ペコリと頭を下がるサーラちゃん。
 素朴で口数少ない感じだけど、整った顔をしている。
 ラーヴルさんといい、美人じゃないと強くなれない決まりでもあるのか?
 二人の姫さんを代表に、美女、美少女のオンパレードだ。

 それにしても、ずいぶんと幼く見えるのに、宮廷魔導士の筆頭なのか。
 ずいぶんと優秀なんだな。

「あっ、どうも、シズクです。勇者やってます。さっきなったばかりだけど」
「お初です。勇者様」

 オレの自虐風自己紹介にサーラちゃんがクスリと笑う。
 ほんの少し笑っただけだが、カワイイ笑顔だった。
 うん、この子はイイ子に間違いない。
 対照的に、ピクリとも表情を動かさないのがラーヴルさんだ。
 彼女も真面目で良い人なんだろうけど、ちょっと近寄りがたい雰囲気だ。

「じゃあ、開けちゃうよー」
【後書き】
次回――『ちょっとレンジでチンしてくる』
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