青い花の里の物語

安珠あんこ

文字の大きさ
20 / 26

【第二十話 泣きながら同胞の命を摘み取るアオ】

しおりを挟む
 ナツの二の十四。

 里の中央の広場で、里の大人たちが見守る中、慰霊祭が開始されていた。
 この慰霊祭は、青い花のケシから作り出した黒い塊を燃やした煙を吸って、トランス状態となった生贄のアキを、里長であるアオが殺害するというものだった。

 黒い塊の煙を吸わされて、意識朦朧になっていたアキを、里の人間たちが見守っていた。
 
「やめて!! アキは何も悪く無いじゃない!!!」
 
「そうよ!! アキは生贄なんかじゃ無いわ!!! みんな!!目を覚ましてよ!!!」
 
 その様子を見かねたアキの姉二人が、アキを助けようと、アキの前に立ち塞がった。
 
 その二人の前に、厳しい表情をしたアオが近づいてきた。
 
「美しい姉弟愛だねえ。だが、里長の私の命令に背くことは許さない。二人とも、私の命令に従ってもらうよ」
 
 そこまで話し終えると、アオの目が赤く光った。
 その直後に、二人はアオに身体を操られてしまった。
 
「何これ、やめて!! やめ……」
 
 二人はそれ以上喋ることを許されなかった。
 
「二人とも、そこで大人しくしていて。そして、今から私がすることを、よく目に焼き付けておきなさい」

 そう話すと、里長のアオは、涙を流しながら、両手でアキの首を絞めあげた。

 アオの頭の中に、あの日自分を助けてくれた白い仮面の女性の言葉が甦ってきた。

「この先、君の作る集落に、両性具有のものが生まれたら、必ず殺せ。私たち鬼にとって、禍をもたらす存在となるからね。いいかい、生まれたら必ず殺すんだよ」

 アオに首を絞められたアキは、すぐにぐったりして、動かなくなった。
 
 そして、その最中に、何故か涙を流していたアオは、処刑が終わると、ハルとナツの手を取り、二人に語りかけた。
 
「同胞を手にかけなければならないことが、どれだけ辛いことか、あなたたちにはわからないでしょう?」
 
 アオは、涙を流したまま、自身のお腹を愛おしそうにさすっていた。

 ミトはこの儀式の一部始終をみていたが、何故か涙を流さなかった。

「アキくん、私、寂しくないよ。だって、新しいアキくんが、私のお腹の中にいるから。今度のアキくんは、私だけのアキくんだから。早くお腹の中から出てきて、また一緒に遊ぼうね」

 そう話すと、ミトは自分の下腹部をさすりながら、微笑んでいた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...