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一章
伊藤翔4
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誰しもが死を考える時はあると思う。
死んでしまったらどうなってしまうのか。本当に無なのだろうか。
仮に無だとした時に、恐怖の感情を抱く人と快楽の感情を抱く人がいる。
恐怖する人達は、その人それぞれの逃げ道を探す。例えるなら、天国地獄や幽霊といった存在等だ。
この人達は弱いから逃げるのではなくて、自分が生きる為に少しでも生きやすくしようとする利口な知恵だと思う。
そして快楽を求める人達は、死ぬ事によって辛く、今自分を縛りつけているモノからの解放。自由。といったところだろう。
この人達は決してサイコパスなんかじゃ無く、疲れているのだと思う。
けれどこの疲れもただ一言、疲れているからしょうがない。などと口にしてしまえるほど薄いモノではない。ましてや他人と度合いを比較するなんてもっての外だ。
身体的にも精神的にも、個人が疲れたと感じればそれがその人の何よりも頑張った証拠だ。
人の頑張りやその人なりの努力を認められない人程心が貧しいと思う。
じゃあ人は、何でそこまで疲れながらも頑張って生きるのか。
俺は幼い頃に病気で母を亡くしてから、死に対して恐怖をもっていた。どうせいつかは死ぬのに何かを頑張る事は無意味とすら思っていた。そんな時、誰かが死に対しての話をしていて偶然耳に入った言葉に救われた。
まだ幼かったのもあって、それを言ったのが誰なのかも何も覚えてない。
ただ、
「人が完全に死ぬ時は自分を覚えてる人が誰一人居なくなった時だ。」
とその言葉だけはしっかり残っていた。
今俺が頑張る理由は、伊藤翔という人間が生きる為に必死に頑張ったんだと少しでも多くの人に覚えてもらい、何かふとした瞬間に思い出してもらえる様に生きている。いや、生きていた。
「なんせもう死ぬのは確定したしなぁ。」
犯人捜しを諦めた訳では無い。これはあくまでまだ推測でしかないが、時間が戻る前に起きていて俺が思い出した未来は変える事が出来ない。気がする。
あくまで気がするだけだが、これは当たっていると思う。
まず最初の違和感は美希と喫茶店に行った時の、店員が珈琲を俺にぶちまけたとき。
たしかに俺はあの時椅子をしまったはずなんだ。
そして次に、狩屋とのみに行ったときの会計と狩屋を送り届けるという行動。
これだけだと、俺の不注意なだけの可能性も否めない。
なので、ここ数日間思い出した事に逆らって生活をしてみたら、案の定結果はどう頑張っても変えられなかった。
だけどこれなら、事件に関する記憶が思い出せないのも説明がつく。
つまりは俺が死ぬこと以外はまだ変えられるという事だ。最初は結局死ぬなら一緒の事だとも思ったが、違う。
俺がわざわざ時間を戻ってまで生きてる理由。きっと俺が死ぬまでの過程に意味があるんだ。
ここの過程を変えることで俺は死んだ後でも誰かの記憶の中に生き続けることが出来る。気がする。
最初に言った通り、気がするだけ。
あくまでも穴だらけの俺のこじつけで、こんな考えでもしなきゃただバットエンド落ちだけネタバレされた漫画でも読んでる気分になってしまう。
だいたい、死ぬ前の事を思い出せないのにどうして死ぬまでの過程を変える事ができようか。
そんな都合の悪い疑問を考えないようにして、忘れたふりをして生きるのが人間なんだ。
生きるのは向いてないくせに人間らしさはありやがる矛盾に少し腹を立てながら事件について振り返る。
振り返ろうとした。その時、一瞬にして生きる気力を根こそぎ削がれた。
「美希が、死ぬ?」
その記憶を思い出した瞬間、まず思考は停止した。
思考が停止したまま感情だけが先に動き出した。目からは涙、言葉にならない声を発し、体に力が入らない。
少し遅れて思考が巡った。動かなければ、早く美希のもとに行かなければ。そう思ってはいる。
ただ感情が言うことをきかせてくれない。
むせび泣きながら頭だけは働かせ、美希の死という結果が変わらない事はまだ自分の仮定でしかないと信じる。
すぐにでも電話をかけて、美希を助けなければいけない。
ぐちゃぐちゃになりながらもスマホを手に取り美希に電話をかけた。
それも虚しく、留守番電話の音声が流れる。
「なんで、クソ、誰が、誰が美希を。」
重いからだを起こして部屋着のまま外へ飛び出し美希の家まで急ぐ。
幸い美希の家まで自転車をとばせば二十分程で着く。
美希の家も片親で美希の父親はこの時間だと仕事に出ていて家には美希が一人。
幸い昔からの親同士でも付き合いがあり美希も俺も両家の家の鍵を保持している。
美希の家に着き次第持っていた鍵で玄関を開け、一目散に美希の部屋まで向かう。
玄関を入ってすぐの階段を上り二階の奥の部屋。
「美希!!」
・・・・・
「翔くん、警察だ。署まで一緒に来てもらうよ。」
「どうして俺が。」
美希が死んだのは俺の時間が戻ってから二週間程後の出来事だった。
結果は変えられなかった。そして俺は土屋刑事に連行された。
もう、死んでもいい。
いつぶりかの快楽を求めた。
死んでしまったらどうなってしまうのか。本当に無なのだろうか。
仮に無だとした時に、恐怖の感情を抱く人と快楽の感情を抱く人がいる。
恐怖する人達は、その人それぞれの逃げ道を探す。例えるなら、天国地獄や幽霊といった存在等だ。
この人達は弱いから逃げるのではなくて、自分が生きる為に少しでも生きやすくしようとする利口な知恵だと思う。
そして快楽を求める人達は、死ぬ事によって辛く、今自分を縛りつけているモノからの解放。自由。といったところだろう。
この人達は決してサイコパスなんかじゃ無く、疲れているのだと思う。
けれどこの疲れもただ一言、疲れているからしょうがない。などと口にしてしまえるほど薄いモノではない。ましてや他人と度合いを比較するなんてもっての外だ。
身体的にも精神的にも、個人が疲れたと感じればそれがその人の何よりも頑張った証拠だ。
人の頑張りやその人なりの努力を認められない人程心が貧しいと思う。
じゃあ人は、何でそこまで疲れながらも頑張って生きるのか。
俺は幼い頃に病気で母を亡くしてから、死に対して恐怖をもっていた。どうせいつかは死ぬのに何かを頑張る事は無意味とすら思っていた。そんな時、誰かが死に対しての話をしていて偶然耳に入った言葉に救われた。
まだ幼かったのもあって、それを言ったのが誰なのかも何も覚えてない。
ただ、
「人が完全に死ぬ時は自分を覚えてる人が誰一人居なくなった時だ。」
とその言葉だけはしっかり残っていた。
今俺が頑張る理由は、伊藤翔という人間が生きる為に必死に頑張ったんだと少しでも多くの人に覚えてもらい、何かふとした瞬間に思い出してもらえる様に生きている。いや、生きていた。
「なんせもう死ぬのは確定したしなぁ。」
犯人捜しを諦めた訳では無い。これはあくまでまだ推測でしかないが、時間が戻る前に起きていて俺が思い出した未来は変える事が出来ない。気がする。
あくまで気がするだけだが、これは当たっていると思う。
まず最初の違和感は美希と喫茶店に行った時の、店員が珈琲を俺にぶちまけたとき。
たしかに俺はあの時椅子をしまったはずなんだ。
そして次に、狩屋とのみに行ったときの会計と狩屋を送り届けるという行動。
これだけだと、俺の不注意なだけの可能性も否めない。
なので、ここ数日間思い出した事に逆らって生活をしてみたら、案の定結果はどう頑張っても変えられなかった。
だけどこれなら、事件に関する記憶が思い出せないのも説明がつく。
つまりは俺が死ぬこと以外はまだ変えられるという事だ。最初は結局死ぬなら一緒の事だとも思ったが、違う。
俺がわざわざ時間を戻ってまで生きてる理由。きっと俺が死ぬまでの過程に意味があるんだ。
ここの過程を変えることで俺は死んだ後でも誰かの記憶の中に生き続けることが出来る。気がする。
最初に言った通り、気がするだけ。
あくまでも穴だらけの俺のこじつけで、こんな考えでもしなきゃただバットエンド落ちだけネタバレされた漫画でも読んでる気分になってしまう。
だいたい、死ぬ前の事を思い出せないのにどうして死ぬまでの過程を変える事ができようか。
そんな都合の悪い疑問を考えないようにして、忘れたふりをして生きるのが人間なんだ。
生きるのは向いてないくせに人間らしさはありやがる矛盾に少し腹を立てながら事件について振り返る。
振り返ろうとした。その時、一瞬にして生きる気力を根こそぎ削がれた。
「美希が、死ぬ?」
その記憶を思い出した瞬間、まず思考は停止した。
思考が停止したまま感情だけが先に動き出した。目からは涙、言葉にならない声を発し、体に力が入らない。
少し遅れて思考が巡った。動かなければ、早く美希のもとに行かなければ。そう思ってはいる。
ただ感情が言うことをきかせてくれない。
むせび泣きながら頭だけは働かせ、美希の死という結果が変わらない事はまだ自分の仮定でしかないと信じる。
すぐにでも電話をかけて、美希を助けなければいけない。
ぐちゃぐちゃになりながらもスマホを手に取り美希に電話をかけた。
それも虚しく、留守番電話の音声が流れる。
「なんで、クソ、誰が、誰が美希を。」
重いからだを起こして部屋着のまま外へ飛び出し美希の家まで急ぐ。
幸い美希の家まで自転車をとばせば二十分程で着く。
美希の家も片親で美希の父親はこの時間だと仕事に出ていて家には美希が一人。
幸い昔からの親同士でも付き合いがあり美希も俺も両家の家の鍵を保持している。
美希の家に着き次第持っていた鍵で玄関を開け、一目散に美希の部屋まで向かう。
玄関を入ってすぐの階段を上り二階の奥の部屋。
「美希!!」
・・・・・
「翔くん、警察だ。署まで一緒に来てもらうよ。」
「どうして俺が。」
美希が死んだのは俺の時間が戻ってから二週間程後の出来事だった。
結果は変えられなかった。そして俺は土屋刑事に連行された。
もう、死んでもいい。
いつぶりかの快楽を求めた。
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