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二級国民
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そのころ、北米の大国ではホモルクスにとって許容しがたい政策が立案されていた。ホモルクスに基本的人権を認めず、自由を抑制しようとしていた。そのための憲法改正が議論され、国民投票が実施された。過半数の票が憲法改正に賛成した。憲法は変わり、ホモルクスは二級国民とされた。その後、驚くほどの速さでホモルクスを差別する法律が次々と制定された。選挙権が剥奪された。公務員になれなくなった。銃の所持が禁止された。居住の自由さえ奪われて、ホモルクスは指定された収容地区にしか住めなくなった。多くのホモルクスが反対運動を繰り広げたが、反抗した二級国民は容赦なく逮捕された。
私は暗澹たる気持ちで北米の変貌のニュースに注目していた。二年ほどの間に、かの国のホモルクスの地位はみじめなほど低下した。そしてそれは、世界各国に広がる兆しを見せていた。日本でもホモサピエンスの国民の多くが、差別的な目でホモルクスを見るようになっていた。凪ちゃんは例外的に平等主義者だったけれど、私は幻想文学研究会に居づらくなって、サークルをやめた。家では、両親までが私をホモルクスに生んだことを後悔している雰囲気があって、いたたまれなかった。
日本政府もホモルクスの差別政策に舵を取り、与党は憲法改正案を作成した。日本のホモルクスは反対運動を実行し、国会議事堂前でデモを行ったりした。光司に誘われて、私もデモに参加した。非活動的な私ではあったが、さすがに黙ってはいられなかった。
しかしホモルクスは圧倒的少数派で、しかもその多くが未成年だった。私たちが主張する平等は認められなかった。私が大学四年のとき、北米の大国に遅れること二年で、日本の憲法も改正された。ホモルクスは亜人間とされ、その人権は制限されることとなった。
「ひどい」
私は泣いた。
光司は狩猟免許を取得していたが、ホモルクスが猟銃を持つことは禁止され、免許は剥奪された。
私は司書資格を取っていたので、地方自治体の図書館の職員になることを目指し、いくつかの就職試験を受けたが、どこの自治体にも採用されなかった。自治体だけでなく、あらゆる就職試験に合格しなかった。私は公務員にも会社員にもなることができず、大学卒業と同時にニートになった。
私はバイトをする気力もなく、自宅の庭で光合成をし、本を読んで過ごした。両親はそんな私を苦々しく見ていた。つらかった。だがそれでもまだマシだったのだ。大学卒業の二年後、ホモルクスの居住の自由を奪う法律が制定されるにおよんで、私のニート生活も終わりを告げた。
私は収容地区に移住させられ、粗末な亜人間用住宅の住民となり、工場労働者になることを強いられた。強制労働!
私は食品工場に毎日通い、ベルトコンベアーに乗って流れてくるスポンジケーキの上に生クリームを絞る作業をやらされた。来る日も来る日も私は生クリームを絞り続けた。ホモサピエンスの最低賃金よりもさらに安いホモルクスの最低賃金しかもらえなかった。私たちは搾取される労働者だった。奴隷だったのかもしれない。率直に言って、私は地獄にいた。立ちっぱなしの労働はきつかった。工場は薄暗く、光合成ができなかった。私は痩せ細った。
同じ収容地区に光司と久慈くんもいた。彼らは自動車工場で働いていた。光司は私のことを気遣ってくれた。
「光合成ができる時間が少ないから、食事の量を増やさないとだめだよ」
「無理。私の胃は発達していないから」
「無理しても食うんだ」
「食欲なんてない。無理に食べても吐いちゃう」
この過酷な生活をしながらも健康なのは光司だけで、久慈くんもよく風邪をひいているようだった。私は頻繁に胃痛や頭痛になった。私も久慈くんもぎりぎりで生きている感じだった。死んだ方がマシとよく思った。
私は暗澹たる気持ちで北米の変貌のニュースに注目していた。二年ほどの間に、かの国のホモルクスの地位はみじめなほど低下した。そしてそれは、世界各国に広がる兆しを見せていた。日本でもホモサピエンスの国民の多くが、差別的な目でホモルクスを見るようになっていた。凪ちゃんは例外的に平等主義者だったけれど、私は幻想文学研究会に居づらくなって、サークルをやめた。家では、両親までが私をホモルクスに生んだことを後悔している雰囲気があって、いたたまれなかった。
日本政府もホモルクスの差別政策に舵を取り、与党は憲法改正案を作成した。日本のホモルクスは反対運動を実行し、国会議事堂前でデモを行ったりした。光司に誘われて、私もデモに参加した。非活動的な私ではあったが、さすがに黙ってはいられなかった。
しかしホモルクスは圧倒的少数派で、しかもその多くが未成年だった。私たちが主張する平等は認められなかった。私が大学四年のとき、北米の大国に遅れること二年で、日本の憲法も改正された。ホモルクスは亜人間とされ、その人権は制限されることとなった。
「ひどい」
私は泣いた。
光司は狩猟免許を取得していたが、ホモルクスが猟銃を持つことは禁止され、免許は剥奪された。
私は司書資格を取っていたので、地方自治体の図書館の職員になることを目指し、いくつかの就職試験を受けたが、どこの自治体にも採用されなかった。自治体だけでなく、あらゆる就職試験に合格しなかった。私は公務員にも会社員にもなることができず、大学卒業と同時にニートになった。
私はバイトをする気力もなく、自宅の庭で光合成をし、本を読んで過ごした。両親はそんな私を苦々しく見ていた。つらかった。だがそれでもまだマシだったのだ。大学卒業の二年後、ホモルクスの居住の自由を奪う法律が制定されるにおよんで、私のニート生活も終わりを告げた。
私は収容地区に移住させられ、粗末な亜人間用住宅の住民となり、工場労働者になることを強いられた。強制労働!
私は食品工場に毎日通い、ベルトコンベアーに乗って流れてくるスポンジケーキの上に生クリームを絞る作業をやらされた。来る日も来る日も私は生クリームを絞り続けた。ホモサピエンスの最低賃金よりもさらに安いホモルクスの最低賃金しかもらえなかった。私たちは搾取される労働者だった。奴隷だったのかもしれない。率直に言って、私は地獄にいた。立ちっぱなしの労働はきつかった。工場は薄暗く、光合成ができなかった。私は痩せ細った。
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