悪魔少女狩り

みらいつりびと

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第14話 恋の悪魔少女 愛の悪魔少女

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 バンビーノ家はラシーラ村開拓を主導したこの地域の筆頭名家で、ピピン・バンビーノは35歳のときに村長に就任した。村長は世襲制で、ピピンはひとり娘のパンピーを次の村長にしようと考えている。
 パンピーは17歳、高等学校2年生。
 顔もスタイルも抜群に美しく、身体を構成するあらゆるパーツが黄金比で構成されている美少女。
 芸術的な美の化身のような女の子だ。
 美しすぎるがゆえに、悪魔少女ではないかとダダから濃厚に疑われている。

 パンピーの母、リンナも超絶的に美しい女性だ。村1番の美人と言われている。
 彼女はかつて、恋の悪魔少女だった。
 リンナは金髪碧眼の美少女だったが、変身すると、深紅の髪とオレンジの瞳になった。胸は美乳から巨乳に変貌した。ふだんのリンナは優等生で高嶺の花といった雰囲気だったが、恋の悪魔に変身したリンナは色気が倍増し、男をめろめろに魅了した。彼女はその姿でさんざん男と遊んだ。特に悪漢や悪党と呼ばれるような男とよく付き合い、何人かを秘かに殺した。
 男は恋の悪魔少女の言葉に抵抗できない。死んで、と言われれば、自殺した。
 バルーン教皇国にはゴールド&シルバーという名の暴力的な貨幣崇拝組織がある。ゴルシバと略称されるその組織は、教皇や国の有力者に莫大な額の献金をし、取り締まりから逃れていた。その支部がラシーラ村にもあった。根拠地は中心市街地にある4階建ての建物で、その外装は金と銀に塗られていた。ゴルシバは恐喝や麻薬密売、みかじめ料などで巨額の富を稼いでいる。
 リンナはその暴力組織を憎み、構成員を殺していた。
 悪魔少女には殺人や破壊の衝動を持つ者が多い。リンナもそのひとりだった。彼女はゴルシバの男を殺すことで、衝動を満たしていた。悪漢を殺すと、胸がスカッとした。
 20歳になると変身できなくなり、殺人衝動も消えた。21歳になる前に、彼女はラシーラ村の名家の息子ピピンと結婚した。夫は妻が悪魔少女だったことを知らない。
 ふたりの間に生まれた娘、パンピーも悪魔少女である。ダダの見立ては当たっていた。

 パンピーにも殺人衝動があった。
 彼女は中等学校2年生のときにそれを自覚した。クラスメイトを暴力や暴言でいじめる不良少年バッキー・アールを殺したいと思い、その願望は急速に大きくなっていった。
 パンピーはバッキーを学校の屋上に呼び出した。そして、本能が促すままに「愛の悪魔に変身」と唱えた。髪が金色からピンクに変化した。瞳の虹彩は碧から濃いピンクになり、黒く丸かった瞳孔は真っ赤なハート型になった。もともと大きかった乳房がさらにワンランク膨らんだ。
「ねえ、あたしのこと愛してる?」
 愛の悪魔少女がささやく。不良少年は彼女に魅入られ、完全に心を奪われている。 
「もちろんだ。愛してる、大好きだ」
「ここから飛び降りて死んでくれる?」
 愛の悪魔になったパンピーの言霊は強力で、男はそれに抗えない。愛の奴隷状態になっている。 
「わかった。死ぬよ」
 バッキーは屋上から飛び降りて死んだ。パンピーはすぐにその場から立ち去った。少年の死は自殺として処理された。

 パンピーはラシーラ村にいるどの少女よりも美しいルックスを持ち、父親が村長であるという権力もあって、たいていのことは思いどおりにすることができた。愛の悪魔に変身すると、男性に対する支配力はさらに強く、圧倒的になった。男を魅了し、奴隷化し、なんでも従わせることができる。それが愛の悪魔少女の異能。
 パンピーは母リンナにだけ、秘密を打ち明けた。
「あなたは愛の悪魔少女なのね。わたしは恋の悪魔少女だったのよ」
「お母さんも悪魔少女だったのね。なんだかそんな気がしていたわ」
「誰か殺した?」
「男の子をひとり」
「わたしもよく男を殺したわ。でも、殺す男は選んだ。この村から悪い男を消すために異能を使ったの」
「あたしもそうよ。乱暴者を殺した」
 リンナはパンピーの瞳を見つめた。
「恋と愛の悪魔少女は悪い男を排除するためにいるの。暴力的な貨幣崇拝組織ゴールド&シルバー。この国に巣くう悪の組織。その構成員を殺しなさい。この村のゴルシバを壊滅させて、パンピー!」

 パンピーは意識的にゴルシバの構成員に接近し、付き合うようになった。深夜の公園や深い森の中でデートし、数人の男を消した。リュウ・ジュピタの前の彼氏ギャラン・カッシーノは廃屋の中で殺した。
「ねえ、あたしを愛してる?」
「ああ、愛しているとも」
「あたしも愛してる。キスをしよう?」
 パンピーはギャランとキスした。舌を絡める。男の舌を自分の口内に深く吸い込み、噛み切った。
 彼女は男を自殺させるだけでなく、暴力的な殺しもした。その方が殺人衝動がより深く満たされ、快感が大きかった。舌を切られ、泣き叫ぶギャランを見たとき、パンピーの胸は躍った。その後、鈍器で頭を殴り、とどめを刺した。
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