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板東社長からこう言われることには苦笑いしか出来ない。



「私、幸せになっちゃいけない女なんですよね。」



「なんでよ?」



「誰かを不幸にしてまで得た幸せ。
そこに、本当の幸せなんてきっとないから・・・。」



板東社長が真剣な顔で私のことを見詰めてくる。
そんな板東社長の顔を見て、私は泣きそうになり口を開いた。



「宝田と私の結婚に、愛はないんです。
永遠にないんです。
愛の言葉も囁かないし、キスもないんです。
永遠に・・・永遠にないんです。
それなのに、結婚してしまいました・・・。
私・・・宝田のことを縛り付けているんです・・・。」



「・・・別にいいんじゃない?
2人がそういう結婚生活でいいなら。」



「そんなの望んでないです・・・。
宝田は、こんなの望んでないです・・・。
でも、結婚してしまって・・・私が縛り付けてしまいました・・・。
私は・・・離婚とかそういうのはご法度なので・・・。
宝田もそれは知っているので・・・。」



「それは縛り付けられてるでしょ、駿。
昔から雪枝に縛り付けられてたから、それは今でも縛り付けられてるでしょ。」



「それは・・・そうなのかもしれませんけど、でも・・・でも、私・・・子どもは作れなくて・・・。
こんな生活で・・・子どもは作れなくて・・・。
怖くて、作れなくて・・・。」



いつか終わりが来てしまう・・・。



宝田と私の結婚生活に、いつか終わりが来てしまう・・・。



「宝田は・・・ちゃんとした結婚生活を送りたいはずです・・・。
子どもだって・・・作ろうかって言ってきて・・・。
私は・・・私は、そんな宝田を不幸にしています・・・。
宝田を不幸にしているから・・・私は幸せになっちゃいけない女なんです・・・。」



「じゃあ、離婚すれば?」



板東社長から即答され、それには何て言ったらいいのか分からなくなる。



そしたら、板東社長が優しい顔で笑ってきて・・・



「駿が認めなかったでしょ、そんなこと。」



その通りなことを、言ってきた・・・。
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