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そんな当たり前のことを、笑いながら、静かに涙を流しながら・・・聞いてくる。



震える手でワイシャツのボタンを外している勝也の手を、ソッと握る。
信じられないくらい、冷たかった・・・。



「お風呂沸いてるから、先に温まって?」



「うん・・・シャワー浴びてくる。」



「勝也、湯船・・・入って?」



「湯船は・・・湯船は、いい・・・。」



「水道料金とガス代が掛かるから?」




勝也は、ここで一緒に住んでいる間・・・湯船に入っていないようだった。
最初はそういうタイプなのかと思ったけど、クーラーも使っていない勝也をしばらく見て・・・やっと、気付いた。




ずっと、そうやって生活していたからだと・・・。




「莉央は凄いな、何でも知ってる・・・。」




「知らなかったよ・・・。
私は、何も・・・何も知らなかったの・・・。
勝也・・・、勝也・・・」




泣きそうになったけど、意地でも泣かなかった。




ワイシャツを脱いだ勝也の、シュッとした身体を見る・・・。





痩せていた・・・。





痩せていた・・・。





それでも筋肉はついているけど・・・





それでも、勝也は・・・





こんなにも、痩せていた・・・。
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