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「お~い!こんな所で寝ちゃダメだろ~!!」



俺が洗い物をしている間に、ソファーで横になり目を閉じてしまった夏生を起こす。
少しだけ目を開けた夏生が、俺を見て幸せそうに笑った・・・。




「シュー・・・」



両手をゆっくりと俺に伸ばしながら、ゆっくりと起き上がる・・・



それに吸い寄せられるように、俺も夏生を抱き締める。




夏生は酔っ払って覚えていないようだけど、どちらかの実家で飲むと、酔った夏生はだいたいこんな感じになる。
いつも強くて格好いい夏生が、こんなに可愛く甘えてくる姿が、どうしようもなく可愛い。




それと同時に・・・
俺以外の人にも、この姿を見せているかもしれない・・・と思うと、心がギュッと押し潰されそうになる。




夏生は自分では気付いていないけど、凄く綺麗な顔をしている。
シュッとした輪郭、形の整った高い鼻、力強い切れ長の目は大きくもある、笑うと大きく開く口。




中学の頃、初めて夏生を見た時は“男みたいな女”と思っていた。




夏生の持つ独特な雰囲気は、この綺麗に整っている顔と、いつでもどこでも誰にも屈しない心の強さと、周りを巻き込む力がある豪快な笑顔。
それらは、“普通の女の子”が持つモノではなくて。
その雰囲気に、“男みたいな女”と感じたと、今になって分かった。




「シュー・・・?」




俺をギュッと抱き締めたままの夏生が、可愛い声で俺の名前を呼ぶ。





普段の夏生からの、この可愛さのギャップは、威力がありすぎて・・・





俺は、堪らなくなり、夏生を抱き締める手に力を入れる。





「こんな姿・・・他の人に見せたらダメだよ・・・?」




「うん・・・シューにしか見せてない。
シューにしか、見せられない・・・。」




その言葉を聞いて、ギュッと目を閉じる。





「シュー・・・おっきくなってる・・・?」
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