101 / 168
6
6-4
しおりを挟む
モルダン近衛騎士団長と並ぶステル殿下の後ろからサッと離れ、私は扉近くの端に立った。
そこにはミランダとカルベルが立っていて、私に気付いたカルベルがパッと嬉しそうな顔で笑い掛けてきた。
それに笑い返していたら・・・
「カルティーヌ姫・・・っ
それはもしかして血ですか?
真っ白なドレスが真っ赤になっているじゃありませんかっ」
ミランダが驚いた顔で小声で言ってきて、私は自分の姿を見下ろした。
そしたら真っ白だったはずのドレスがクレハの血で真っ赤に濡れている。
「良い感じに血を浴びられた。」
満足しながらミランダに笑うと、ミランダは呆れた顔で王の座の方に視線を移した。
それを追うように私も視線を移すと、虚ろな目をギラギラと光らせている灰色の髪の男が王の座に座っている。
そして、その隣の王妃の座には1人の女が。
暗い茶色の髪の毛、明るい水色の豪華なドレスを着た女。
夜中にあの古い扉の前で私に食器がのったトレーを渡してきた女が座っている。
それには少しだけ驚いていると、灰色の髪の男、ジルゴバート王弟殿下だと思われる男が目の前に膝をつき頭を下ろしているステル殿下とモルダン騎士団長を見下ろしながら口を開いた。
「ステル、やはりお前は国を滅ぼそうとしているのか。
王都が魔獣の遺体で埋め尽くされ崩壊していると報告があった。」
「被害を最小限にする為、王都の真上から高原の方に移動しながら戦いました。
ですが、クレハとの最初の衝突は王都の真上となりましたので、その時の遺体が王都に落ちていったかと思います。
兵をすぐに出していただき、王都に住む民に死者が出なかったと先ほど聞きました。」
「死者などどうでもいい。
4つの大国の中で最も栄えた王都を持つ我が国の王都をお前が崩壊させた。」
民の命よりも王都のことを言い出したジルゴバートには思わず吹き出してしまった。
大人しくしているつもりだったけれど、私は端から抜け出しゆっくりと王の座に座っているジルゴバートの元へ歩いていく。
「命があるのならまた立て直せる。」
歩きながら声を出した私にジルゴバートは視線を移してきた。
「魔獣は必ず王都を目指し、そして国王や王族を殺そうとする。
その後は国全土を陥落させる。」
各国を旅していた“商人”、クレド。
そのクレドが仕入れた情報をインソルドとインラドルに提供してくれていた。
「平民は魔獣と戦う術を持たない。
国が守ってくれなければ王都だけではなく命までも取られてしまう。
出来るだけ王宮から離れた位置で戦うのが最善だった。
王族を殺した後、次にクレハが狙うのは民になっていたはずだから。」
私のことを目を丸くしながら見詰め、そして慌てたように王の座から立ち上がったジルゴバート。
膝をつくステル殿下の隣に立ち、私は続ける。
「クレハはグースのような足はない。
それでも“死の森”から1時間もあれば王都に辿り着ける。
アデルの砦からグースに乗った騎士から報告を受け、それからマドニス宰相や騎士団長達による会議、騎士や兵達の統率、討伐準備。
それらをしてるうちにクレハが王都の真上まで辿り着いてしまうのは分かりきったこと。
大切なのはそこからどこまで最善を尽くせるか。」
喋り続ける私にジルゴバートは虚ろな目を大きく大きく開き、口まで開きヨロヨロと近付いてくる。
「王都は遺体で埋め尽くされてはいない。
地獄のような光景に私は見えなかった。
クレハの遺体が転がってはいたけれど、建物が壊れてもいたけれど、民の死者が1人も出なかったという事実は最善を尽くせたということだと判断して良いはず。
命がある限りは立て直せる。
国が一丸となれるよう、力ある者は尽力を尽くさなければいけない。」
そこまで言った時、ジルゴバートは私の目の前に立った。
そして・・・
何故か私の顔に震えている右手をゆっくりと伸ばしてきて・・・
少しだけ避けても私の顔を追うように右手がついてくる。
だからその右手を払おうとした時・・・
ジルゴバートの右手をステル殿下の大きな右手が掴んだ。
「俺の妻に触るな。」
そこにはミランダとカルベルが立っていて、私に気付いたカルベルがパッと嬉しそうな顔で笑い掛けてきた。
それに笑い返していたら・・・
「カルティーヌ姫・・・っ
それはもしかして血ですか?
真っ白なドレスが真っ赤になっているじゃありませんかっ」
ミランダが驚いた顔で小声で言ってきて、私は自分の姿を見下ろした。
そしたら真っ白だったはずのドレスがクレハの血で真っ赤に濡れている。
「良い感じに血を浴びられた。」
満足しながらミランダに笑うと、ミランダは呆れた顔で王の座の方に視線を移した。
それを追うように私も視線を移すと、虚ろな目をギラギラと光らせている灰色の髪の男が王の座に座っている。
そして、その隣の王妃の座には1人の女が。
暗い茶色の髪の毛、明るい水色の豪華なドレスを着た女。
夜中にあの古い扉の前で私に食器がのったトレーを渡してきた女が座っている。
それには少しだけ驚いていると、灰色の髪の男、ジルゴバート王弟殿下だと思われる男が目の前に膝をつき頭を下ろしているステル殿下とモルダン騎士団長を見下ろしながら口を開いた。
「ステル、やはりお前は国を滅ぼそうとしているのか。
王都が魔獣の遺体で埋め尽くされ崩壊していると報告があった。」
「被害を最小限にする為、王都の真上から高原の方に移動しながら戦いました。
ですが、クレハとの最初の衝突は王都の真上となりましたので、その時の遺体が王都に落ちていったかと思います。
兵をすぐに出していただき、王都に住む民に死者が出なかったと先ほど聞きました。」
「死者などどうでもいい。
4つの大国の中で最も栄えた王都を持つ我が国の王都をお前が崩壊させた。」
民の命よりも王都のことを言い出したジルゴバートには思わず吹き出してしまった。
大人しくしているつもりだったけれど、私は端から抜け出しゆっくりと王の座に座っているジルゴバートの元へ歩いていく。
「命があるのならまた立て直せる。」
歩きながら声を出した私にジルゴバートは視線を移してきた。
「魔獣は必ず王都を目指し、そして国王や王族を殺そうとする。
その後は国全土を陥落させる。」
各国を旅していた“商人”、クレド。
そのクレドが仕入れた情報をインソルドとインラドルに提供してくれていた。
「平民は魔獣と戦う術を持たない。
国が守ってくれなければ王都だけではなく命までも取られてしまう。
出来るだけ王宮から離れた位置で戦うのが最善だった。
王族を殺した後、次にクレハが狙うのは民になっていたはずだから。」
私のことを目を丸くしながら見詰め、そして慌てたように王の座から立ち上がったジルゴバート。
膝をつくステル殿下の隣に立ち、私は続ける。
「クレハはグースのような足はない。
それでも“死の森”から1時間もあれば王都に辿り着ける。
アデルの砦からグースに乗った騎士から報告を受け、それからマドニス宰相や騎士団長達による会議、騎士や兵達の統率、討伐準備。
それらをしてるうちにクレハが王都の真上まで辿り着いてしまうのは分かりきったこと。
大切なのはそこからどこまで最善を尽くせるか。」
喋り続ける私にジルゴバートは虚ろな目を大きく大きく開き、口まで開きヨロヨロと近付いてくる。
「王都は遺体で埋め尽くされてはいない。
地獄のような光景に私は見えなかった。
クレハの遺体が転がってはいたけれど、建物が壊れてもいたけれど、民の死者が1人も出なかったという事実は最善を尽くせたということだと判断して良いはず。
命がある限りは立て直せる。
国が一丸となれるよう、力ある者は尽力を尽くさなければいけない。」
そこまで言った時、ジルゴバートは私の目の前に立った。
そして・・・
何故か私の顔に震えている右手をゆっくりと伸ばしてきて・・・
少しだけ避けても私の顔を追うように右手がついてくる。
だからその右手を払おうとした時・・・
ジルゴバートの右手をステル殿下の大きな右手が掴んだ。
「俺の妻に触るな。」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
109
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる