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「やっぱり無理そうだね、少し待って。」



男さんが急にそう言って、立ち上がった・・・。
それでも、私は目の前にある団地の写真を見下ろし続ける・・・。



見下ろし続ける・・・。



そしたら、すぐに私の背中に大きな手が添えられて・・・



その温もりを感じ、その手の主を見上げてみると・・・



「光一・・・。」



光一が、いた・・・。



そして、私を見下ろしニッと笑って・・・



「あいつら、何が死神だよ!!
本物の犯罪者はどこまでも卑劣だよな!!
そんな嘘までつきやがって!!!」



そう、言った・・・。



そう、言ってきた・・・。



3月3日、私がこの世界に生まれた日・・・



その日がお母さんの命日になった娘の私に・・・。



そして、その数日後、お母さんのお母さん・・・私のおばあちゃんまで亡くなってしまった私に・・・。



そんな、死神のような私に・・・



光一は、そう言って・・・



「桃子のお母さんの親戚も良樹の親戚も、めちゃくちゃ生きてたぞ!!」



親戚はいないはずだった・・・。
私に親戚はいないはずだった・・・。



お父さんからもそう聞かされていた。



だから、私は・・・



私は・・・。



私は・・・。



「良樹がガキの頃に死んだ母親、そっちの親族は桃子のことをずっと探してたらしいぞ?」



そんな・・・



そんな言葉には、泣いた・・・。
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