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第1話 涼しき世にも裏ありて
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コオロギが雅に鳴く。
まるで、自ら宴を開こうかとしているよう。
この京庵治の屋敷では、毎年この月を楽しみにしているのだ。
盃を呑み交わし、一晩を過ごす。
まぁ、私にとってはまだ早いことだがな。
私は、今年18という齢になる。
この通り話し方は古風だが、普通の高校生だ。
話し方に特徴があるのには、そこそこの理由があるのだ。
アヤカシを知っているだろうか。
そう。あのアヤカシだ。
昔、陰陽道と関わりが深かったこの京都には、その名残がある。
私の中には、とあるアヤカシが封じられている。
このアヤカシは、先祖代々封じ移しをされている。
が、あまりにも私に愛着が沸いたのか、次第に好みも似てきて、挙げ句の果てこの通り口調まで移った。
「お嬢ー?何処にいらっしゃいますー?」
うげっ……つまらん奴が来た。
お目付け役の晶月だ……
本名は、晶月政晴。
私より、五つ年が上だ。
とはいえ、私の厄介者というのには変わりない。
ここはひとまず逃げ__
「あー見つけましたーここにいたんですねー!」
晶月は、私の腕を力一杯掴んだ。
まるで、夕暮れ時幼子を連れて帰るかのように。
私は、晶月をムッと睨んだ。
だが、奴は呆れ顔で溜め息を吐く。
「ちょっとは、言うこと聞いてくれてもいいんじゃないですか?確かにお嬢には、まだ不馴れな土地ということもあるでしょうけど……」
一ヶ月前、私は交通事故で両親を亡くした。
__というのも、巻き込まれた被害者ではない。
父に封じていたアヤカシが原因だったのだ。
アヤカシは、私の血筋の者が引き継いでいる。
と、聞いている。実際はどうか知らない。
だが、封じられた者は全て不吉な死を遂げる。
そのため、死を恐れた私の両親は、私を産む前に埼玉に引っ越したのだ。
しかし、父は逃れることができずに死んだ。
交通事故で亡くなった父に宿っていたはずのアヤカシは、儀式や術を使わずとも何故か私に移った。
今までなかったその出来事に対して異変を悟った祖母は、私を京庵治家に引き取った。
__京庵治一族。
京都で人気ある老舗を営む屈指の名家。
と、表向きではそう言われている。
実際に老舗を営んでいるのは確かだが、その裏では陰陽道に通じた者達が深く絡んでいるのだ。
京庵治一族は、私の父方の家系だ。
本当は、この老舗を継ぐはずだったらしいが、父はそれを固く断り、母と埼玉に逃げたのだ。
祖父も祖母も逃げたことには怒っていないらしい。
それよりも、むしろ心配だったのだ。
「夜は、アヤカシが起きる。晶月は、その見張りか?」
はい。と、晶月は普通に応える。
奴の目は、怖いほど透き通っている。
まるで、他人の全てを見透かしているかのよう。
奴が何を考えているのか検討もつかない。
「お嬢に封じているアヤカシは、お嬢を偉く気に入ってるようですね。封じを緩めても暴れる気配一つない」
晶月は、縁側に座る私の隣で胡座をかいた。
奴の言う通り、私の封じはそこまで固くしていない。何故か、動こうともしないのだ。
周りは、そのおかげで酷く警戒しているが……
アヤカシは、阿呆ではない。人並みの知識思考、感情は持ち合わせている。だからこそ、今はその機会を伺っているのではないか。そう言われているのだ。
「月が隠れたな……」
私は、ゆっくりとその場から立ち上がった。
そして、自室へと足を運ぶ。
まだ慣れない屋敷で眠りに就くために。
まるで、自ら宴を開こうかとしているよう。
この京庵治の屋敷では、毎年この月を楽しみにしているのだ。
盃を呑み交わし、一晩を過ごす。
まぁ、私にとってはまだ早いことだがな。
私は、今年18という齢になる。
この通り話し方は古風だが、普通の高校生だ。
話し方に特徴があるのには、そこそこの理由があるのだ。
アヤカシを知っているだろうか。
そう。あのアヤカシだ。
昔、陰陽道と関わりが深かったこの京都には、その名残がある。
私の中には、とあるアヤカシが封じられている。
このアヤカシは、先祖代々封じ移しをされている。
が、あまりにも私に愛着が沸いたのか、次第に好みも似てきて、挙げ句の果てこの通り口調まで移った。
「お嬢ー?何処にいらっしゃいますー?」
うげっ……つまらん奴が来た。
お目付け役の晶月だ……
本名は、晶月政晴。
私より、五つ年が上だ。
とはいえ、私の厄介者というのには変わりない。
ここはひとまず逃げ__
「あー見つけましたーここにいたんですねー!」
晶月は、私の腕を力一杯掴んだ。
まるで、夕暮れ時幼子を連れて帰るかのように。
私は、晶月をムッと睨んだ。
だが、奴は呆れ顔で溜め息を吐く。
「ちょっとは、言うこと聞いてくれてもいいんじゃないですか?確かにお嬢には、まだ不馴れな土地ということもあるでしょうけど……」
一ヶ月前、私は交通事故で両親を亡くした。
__というのも、巻き込まれた被害者ではない。
父に封じていたアヤカシが原因だったのだ。
アヤカシは、私の血筋の者が引き継いでいる。
と、聞いている。実際はどうか知らない。
だが、封じられた者は全て不吉な死を遂げる。
そのため、死を恐れた私の両親は、私を産む前に埼玉に引っ越したのだ。
しかし、父は逃れることができずに死んだ。
交通事故で亡くなった父に宿っていたはずのアヤカシは、儀式や術を使わずとも何故か私に移った。
今までなかったその出来事に対して異変を悟った祖母は、私を京庵治家に引き取った。
__京庵治一族。
京都で人気ある老舗を営む屈指の名家。
と、表向きではそう言われている。
実際に老舗を営んでいるのは確かだが、その裏では陰陽道に通じた者達が深く絡んでいるのだ。
京庵治一族は、私の父方の家系だ。
本当は、この老舗を継ぐはずだったらしいが、父はそれを固く断り、母と埼玉に逃げたのだ。
祖父も祖母も逃げたことには怒っていないらしい。
それよりも、むしろ心配だったのだ。
「夜は、アヤカシが起きる。晶月は、その見張りか?」
はい。と、晶月は普通に応える。
奴の目は、怖いほど透き通っている。
まるで、他人の全てを見透かしているかのよう。
奴が何を考えているのか検討もつかない。
「お嬢に封じているアヤカシは、お嬢を偉く気に入ってるようですね。封じを緩めても暴れる気配一つない」
晶月は、縁側に座る私の隣で胡座をかいた。
奴の言う通り、私の封じはそこまで固くしていない。何故か、動こうともしないのだ。
周りは、そのおかげで酷く警戒しているが……
アヤカシは、阿呆ではない。人並みの知識思考、感情は持ち合わせている。だからこそ、今はその機会を伺っているのではないか。そう言われているのだ。
「月が隠れたな……」
私は、ゆっくりとその場から立ち上がった。
そして、自室へと足を運ぶ。
まだ慣れない屋敷で眠りに就くために。
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