君の見た色

Sora10gp

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ひび割れた色

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「じゃあ…何で
 こんな物持ってるんですか!?」





私はそう口に出すと同時に
先輩の腕を掴む





「!」







先輩は咄嗟に
私の手から逃れようとするも
私の方が僅かに早かった





先輩の手には





パレットナイフが握られていた







先輩は一瞬だけ
抵抗の素振りを見せるも



私と目が合うや
すぐに諦めたように
静かになった





「敵わないな…後輩には
 今、私の色は何色…なんだ?」




先輩が
そう力無げに呟く



以前、
先輩にだけ話した事がある





【人にも色がある】
という事





そして、



私には
それが見える
という事





「先輩の色は、普段と変わりませんよ…
 いつもの曇りない銀色です
 ただ…」



「ただ…?」



「嘘、つきましたよね…」

「…」





「その瞬間だけ、
 ほんの少しだけですけど
【揺らぐ】んです」







「先輩…だったんですね…」







「あぁ…」



先輩は力の抜けたように

椅子へと身を沈める







この高校で
少し前から



奇妙な事件が起こっていた



それは
展示されていた絵が
切り刻まれる



という



悪戯としては
少し度を過ぎたもの







「私、薄々気付いてました…
 先輩じゃないかって
 でも…、信じられなかった…
 いや、信じたくなかった…かな」



「…」





この事件で切り刻まれた絵
全部で五枚



その内訳は
先輩の絵が三枚
私の絵が二枚





だったからだ





「だから、今日
 私は絵を描く事にしました
 それをここに置きっぱなしにして、
 帰るつもりでした」





私は【あの絵】を見ながら
そう口にする







校内に飾れた私の絵は
もうない





残りは





この美術室にある
ユリのデッサン





それとー





先輩が初めて認めてくれた
あの絵





それだけは
守らなきゃ、



と思った











「あぁ、そう、だったのか…」





「先輩は、本当は
 止めてほしかったんじゃないですか…?」



「…」



「じゃなかったら
 私に声をかけるのはおかしいですから…」



「そう…かも、しれないな…」



色は揺るがない

色褪せる事もない



「私に…、描く事を辞めてほしかったですか?」
「それは違う!!」



「それは…違う
 辞めて欲しいなんて思わない…
 ただ…、羨ましかったんだ…」









「私…、先輩に憧れてました
 先輩の絵はとても綺麗じゃないですか」







先輩は少しだけ

目を臥せる



「あぁ、でも…
【綺麗なだけ】
 なんだ」





先輩の絵は
県のコンテストで何度も賞をとっている







その強みともいえるのは
細部まで丹念に描き込まれた
写真とも疑うほどの





【完璧な模写】





だった







「綺麗…な、だけじゃ
 ダメなんだ
 足りないんだよ…」



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