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1話 悪役令嬢の断罪劇
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「シャーリー・ティラレル・エネフィ! 君との婚約は破棄させてもらう! 数々の酷い所業、とても許されるものではない!」
シャーリー様の言っていたことが起きた。
「妹であるルーラに嫉妬し、陰湿な手口で痛めつけていたようだな。君のような性根の腐った女ではなくこの心優しく聡明なルーラこそがオレの婚約者に相応しい。彼女のおかげでオレは真実の愛に気づいたんだ」
嘘よ、嘘。
「妹を傷つけた罪は重い! よって国外追放とする!」
最悪だった。なにが最悪ってシャーリー様を悪者にしているところ、ただ一点。
「そんなことっ」
抗議の声をあげようとするもシャーリー様の手が私を制した。
「エーヴァ」
「アリス」
シャーリー様のお側で一緒に政務に携わってきたアリスにひそりと声をかけられる。できれば、この時までシャーリー様の近くにいたかったのに離れたところで見ているだけだ。
「エーヴァ、シャーリー様から言われてること忘れないで」
「分かってるわ」
シャーリー様はいつか婚約破棄になるだろうと考えていた。もし人の多い場所で断罪されるのなら側にいないよう言われている。大人しくしてれば私たちの処罰がないはずだからと。
「お前が牛耳っていた政務も担当を全て入れ替える!」
国のために未来の王子妃となるべく尽力されていた。適材適所の人員配置ができたのもシャーリー様がいたからだし、南東部の災害からの復興が早くにうまくいったのもシャーリー様の采配があったからだ。
「殿下、私以外の政務担当は継続いただけないでしょうか。政務が滞ります」
口答えするなとろくでなしが叫ぶ。
「オレがもっといい人材に変える! お前が選んだ人材は友人だろう。やってたことなど所詮ままごとだ」
「!」
なんて奴!
シャーリー様は友人だから優遇する人じゃない。能力があれば声がかかる。だから私はお声がけいただいた学院時代からシャーリー様の側に立てるよう勉学に励んだ。シャーリー様自身誰よりも努力され、誰よりも知識教養のある方なのに。
「何をしている! 早くこの女を捕らえろ!」
周囲の騎士がまごつくのを見かねて自身直属の騎士に命じる。
騎士たちが動こうとする時、シャーリー様の前に見知った男が立った。
「シェルリヒェット王太子殿下……」
「なんだ?」
我が国ソッケ東南部の災害派遣で来ている西の隣国ドゥエツの王太子、インスティンス・ヴィース・シェルリヒェット殿下。
出てくると思っていた。
「エネフィ公爵令嬢は国外追放でお間違いないですね?」
「何度も言わせるな! 身分を剥奪の上、追放だ! 覆らないぞ!」
隣国の王太子に向かってなんて口の聞き方だろう。外交問題にもなりかねない。
「ではシャーリー様はドゥエツ王国で保護します」
「は?」
シャーリー様が戸惑いを見せている。私は、シャーリー様にしてほしいことを王太子がしてくれたから内心少しほっとしていた。
「行き場のない民を救うことは何も問題ないでしょう」
「その女だけ優遇するのか?!」
難民受け入れは陸続きの三国、西の隣国ドゥエツ、我が国ソッケ、東の隣国キルカスは公に行っている。けどシャーリー様だけ、としたら特別待遇にとられてもおかしくない。
「公的な理由が必要ですか」
「罪人の保護を積極的にやる理由がない」
「では」
シャーリー様に向き直り、両手をとった。
「シャーリー様に婚姻の申し出をさせていただきます」
「え?」
「……は?」
「お返事は今すぐとは言いません。ドゥエツ国民として国内で過ごされている間に考えていただければ」
王太子付の騎士が二人を囲む。尚も叫ぶろくでなしを無視して会場を後にした。
「エーヴァ、私たちも」
「分かった」
アリスと一緒に会場を出る。
今頃シャーリー様は思っていた展開を迎えられなくて戸惑っているはずだ。
「明日、私は入城するわ。残務処理と引き継ぎをする。アリスは旦那様と?」
「ええ。旦那様と入城するわ。私は残れると思う」
「助かるわ」
アリスはオルソン公爵家へ嫁いだ。アリスの夫、オルソン公爵は王陛下も信頼する中立派代表格だ。王子は下手に手を出せない。だからこそアリスには政務の中核に残ってもらい立て直し中の経済を倒れないようにしてもらわないとだ。
「エーヴァ、いいの? 明日無理に来なくても」
「仕事を放り投げたくないの。処分がくだされるまではいるわ」
「……分かったわ。最悪、逃がす手筈は整えるから」
「ありがとう」
少し迷いを見せた後、アリスが静かに言葉を続けた。
「エーヴァ、貴方やりたいことあるんでしょう?」
「……どうかしら」
「貴方はシャーリー様のためと仕事をしてきたけど、これを機に自分の好きな道に進んでもいいと思うの」
「そうね……」
いい機会だと言うけど、両親にも話すことになる。あまりいい顔をしないのは過去に一度経験して分かっているから話したくない。けど、諦めてはいない夢だ。
「明日、また」
「ええ」
一人馬車に乗り、王城近くのタウンハウスへ戻る。両親は幸い仕事で外出中で明日帰ってくるからどやされることはない。シャーリー様の断罪は耳に入っているだろうけど。
「やりたいこと、か」
全て失えばできるかしら?
今はまだ私自身のことよりシャーリー様の安否が気になる。
「ひとまず明日になってから、ね」
情報の早い私付きの侍女侍従は何も言わず、いつも通り過ごさせてくれた。明日入城することと、恐らく仕事を失うこと、そして家族がこのタウンハウスに帰ってくることを伝え、以前から話していた通りにと話を終える。
シャーリー様の言っていたことが起きた。
「妹であるルーラに嫉妬し、陰湿な手口で痛めつけていたようだな。君のような性根の腐った女ではなくこの心優しく聡明なルーラこそがオレの婚約者に相応しい。彼女のおかげでオレは真実の愛に気づいたんだ」
嘘よ、嘘。
「妹を傷つけた罪は重い! よって国外追放とする!」
最悪だった。なにが最悪ってシャーリー様を悪者にしているところ、ただ一点。
「そんなことっ」
抗議の声をあげようとするもシャーリー様の手が私を制した。
「エーヴァ」
「アリス」
シャーリー様のお側で一緒に政務に携わってきたアリスにひそりと声をかけられる。できれば、この時までシャーリー様の近くにいたかったのに離れたところで見ているだけだ。
「エーヴァ、シャーリー様から言われてること忘れないで」
「分かってるわ」
シャーリー様はいつか婚約破棄になるだろうと考えていた。もし人の多い場所で断罪されるのなら側にいないよう言われている。大人しくしてれば私たちの処罰がないはずだからと。
「お前が牛耳っていた政務も担当を全て入れ替える!」
国のために未来の王子妃となるべく尽力されていた。適材適所の人員配置ができたのもシャーリー様がいたからだし、南東部の災害からの復興が早くにうまくいったのもシャーリー様の采配があったからだ。
「殿下、私以外の政務担当は継続いただけないでしょうか。政務が滞ります」
口答えするなとろくでなしが叫ぶ。
「オレがもっといい人材に変える! お前が選んだ人材は友人だろう。やってたことなど所詮ままごとだ」
「!」
なんて奴!
シャーリー様は友人だから優遇する人じゃない。能力があれば声がかかる。だから私はお声がけいただいた学院時代からシャーリー様の側に立てるよう勉学に励んだ。シャーリー様自身誰よりも努力され、誰よりも知識教養のある方なのに。
「何をしている! 早くこの女を捕らえろ!」
周囲の騎士がまごつくのを見かねて自身直属の騎士に命じる。
騎士たちが動こうとする時、シャーリー様の前に見知った男が立った。
「シェルリヒェット王太子殿下……」
「なんだ?」
我が国ソッケ東南部の災害派遣で来ている西の隣国ドゥエツの王太子、インスティンス・ヴィース・シェルリヒェット殿下。
出てくると思っていた。
「エネフィ公爵令嬢は国外追放でお間違いないですね?」
「何度も言わせるな! 身分を剥奪の上、追放だ! 覆らないぞ!」
隣国の王太子に向かってなんて口の聞き方だろう。外交問題にもなりかねない。
「ではシャーリー様はドゥエツ王国で保護します」
「は?」
シャーリー様が戸惑いを見せている。私は、シャーリー様にしてほしいことを王太子がしてくれたから内心少しほっとしていた。
「行き場のない民を救うことは何も問題ないでしょう」
「その女だけ優遇するのか?!」
難民受け入れは陸続きの三国、西の隣国ドゥエツ、我が国ソッケ、東の隣国キルカスは公に行っている。けどシャーリー様だけ、としたら特別待遇にとられてもおかしくない。
「公的な理由が必要ですか」
「罪人の保護を積極的にやる理由がない」
「では」
シャーリー様に向き直り、両手をとった。
「シャーリー様に婚姻の申し出をさせていただきます」
「え?」
「……は?」
「お返事は今すぐとは言いません。ドゥエツ国民として国内で過ごされている間に考えていただければ」
王太子付の騎士が二人を囲む。尚も叫ぶろくでなしを無視して会場を後にした。
「エーヴァ、私たちも」
「分かった」
アリスと一緒に会場を出る。
今頃シャーリー様は思っていた展開を迎えられなくて戸惑っているはずだ。
「明日、私は入城するわ。残務処理と引き継ぎをする。アリスは旦那様と?」
「ええ。旦那様と入城するわ。私は残れると思う」
「助かるわ」
アリスはオルソン公爵家へ嫁いだ。アリスの夫、オルソン公爵は王陛下も信頼する中立派代表格だ。王子は下手に手を出せない。だからこそアリスには政務の中核に残ってもらい立て直し中の経済を倒れないようにしてもらわないとだ。
「エーヴァ、いいの? 明日無理に来なくても」
「仕事を放り投げたくないの。処分がくだされるまではいるわ」
「……分かったわ。最悪、逃がす手筈は整えるから」
「ありがとう」
少し迷いを見せた後、アリスが静かに言葉を続けた。
「エーヴァ、貴方やりたいことあるんでしょう?」
「……どうかしら」
「貴方はシャーリー様のためと仕事をしてきたけど、これを機に自分の好きな道に進んでもいいと思うの」
「そうね……」
いい機会だと言うけど、両親にも話すことになる。あまりいい顔をしないのは過去に一度経験して分かっているから話したくない。けど、諦めてはいない夢だ。
「明日、また」
「ええ」
一人馬車に乗り、王城近くのタウンハウスへ戻る。両親は幸い仕事で外出中で明日帰ってくるからどやされることはない。シャーリー様の断罪は耳に入っているだろうけど。
「やりたいこと、か」
全て失えばできるかしら?
今はまだ私自身のことよりシャーリー様の安否が気になる。
「ひとまず明日になってから、ね」
情報の早い私付きの侍女侍従は何も言わず、いつも通り過ごさせてくれた。明日入城することと、恐らく仕事を失うこと、そして家族がこのタウンハウスに帰ってくることを伝え、以前から話していた通りにと話を終える。
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