婚約破棄された家出令嬢の私、大好きな人に弟子入り! 溺愛は全然必要ありません!

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17話 怪しい使者

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「使者がいらっしゃいました」
「……分かった。エーヴァ嬢」
「私は大丈夫です。どうぞご対応を」
「ありがとう」

 銀細工作りがなかなか進まない。
 体調不良者の急激な増加に、ドゥエツ王国本土から使者が来た。その対応でバーツ様が席を立つ。自習に限りはあるので、そういう時は諸島の歴史や領主が残した資料を読ませてもらった。

「ドゥエツ王国、ルーレ様がいらしています」
「っ!」
「ああ」

 去る直前で聞こえた使者の名前に心臓が飛び付く。ルーレという名の貴族はいないし、王太子側近でもいないし、執事でしかその名前を持つ人間はいない。アリスの手紙の内容を思い出す。

「執事から側近に?」

 ドゥエツ王国では前例がない。余程緊急な状態になっている? 仮にそうだとしたらディーナ様が他国にいるはずがない。深くは知り得てないけど、ディーナ様は緊急であれば速やかに自国で対応されるはずだ。
 情報も古くない。毎日アリスから手紙がきている。海賊でざわついている緊急時に執事を政務中枢を担うような役職に昇格する時間はないはずだ。

「旦那様!」

 侍従のエリックが焦りながら伝えてきたのは、最西端の島エン付近の海上に海賊が現れたということだった。

「こんな時に……」
「ルーレ様は私が案内します。旦那様はルーレ様へご挨拶しましたら港へ」
「そうするしかないな」

 応接間に入っていく二人を見届け、私は自室へ戻る。
 あの後さらにシャーリー様から返事が来た。シャーリー様の側仕えにルーレという名前の執事はいない。王太子の側にもいないと書かれていた。
 では、大元王太子付きの執事は何をしている? まさか本当に特使に昇級したの?
 ……どうしても納得ができない。特使にする理由がないからだ。嫌な予感がざわざわ胸の内から広がってくる。
 このままではいけない気がした。

「接触、してみようかしら」

 執事のペーテルでは権限が弱い。ルーレが本土の使者であればルーレの命令には逆らえないはずだ。
 例えば「治療のために患者と二人きりにしてくれ」とか、それこそ「一人にしてくれ」と言われればペーテルは席を外さざるを得ない。

「……よし」

 部屋を出て応接間に向かうと既に誰もいなかった。玄関に行くと動き出した馬車を見送るバーツ様がいて、私に気づいて申し訳なさそうに眉を下げる。

「エーヴァ嬢、すまない。時間がかかりそうだ」
「構いません。今は緊急事態、気になさらないで下さい」
「早く帰ってくるようにする」

 早く帰ってくるだなんて気遣いが素晴らしい。やはりバーツ様は別格ね。

「ふふ、気遣ってくださるバーツ様の優しさは好きですが、今回ばかりは本当に海賊と使者への時間を優先してくださいね」
「ありがとう。一度港に出る。恐らくエン島に行く必要はないと思うけど、使者への対応もあるからここシーヴには必ず連絡して戻る」
「お待ちしてます。使者の方はどちらへ?」
「港近くのフユキス病院だね。その後はこの屋敷に戻ってこられる」
「そうでしたか。なにかあれば私もお手伝いします」
「ありがとう」

 バーツ様が去った後、私は買い物があると侍女長クリスティーナに伝え外に出た。港までは早い。件の病院はすぐだった。

「どれ」

 玄関前に馬車が着いていたけど、幸いなことにペーテルはいなかった。ぐるりと建物を回り中を確認する。

「……いた」

 身なりはしっかりしている男性に病院長とペーテルが一緒にいた。見たところ違和感はない。
 話し合いが終わった後、使者はペーテルにいくらか伝え、一人で歩きだした。ペーテルは病院の中に入る。

「……」

 追うしかない。
 使者が向かった先は港町で、積極的に声をかけては領民の声を聞いている。一見、普通の光景に見えるけど、最後に必ず小瓶を渡していた。それも飲食食品関係の場所でだけ。

「怪しい……」

 一度バーツ様と話したことがあるお店の店主に聞いてみることにしよう。

「こんにちは」
「エーヴァ嬢! 今日は領主様と一緒じゃないんですね」
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