婚約破棄された家出令嬢の私、大好きな人に弟子入り! 溺愛は全然必要ありません!

文字の大きさ
34 / 59

34話 私がききたいのはバーツがどうしたいかです

しおりを挟む
「ちょっとバーツ」
「ディーナ様!」

 騒ぎを聞いてディーナ様が間に入ってくれた。

「バーツの気持ちは素敵だけど、エーヴァが困ってるでしょ」
「あ……」
「ドロム公爵も夫人も。久しぶりに顔を合わせたんだから、もう少し優しくしてください」

 ディーナ様には頭が上がらないらしく、御両親も静かになった。
 気まずそうにしているバーツ様の御両親を見た後、バーツ様に向き直り、よくよくバーツ様の表情を見ている。

「バーツってば何したいの? 言い争いしたいの?」

 ディーナ様の言葉に肩が鳴る。
 はしたなくても構わないと触れていたバーツ様の腕に深く腕を絡めるとバーツ様が私の瞳を捉えた。

「バーツ」
「……」

 私が呼ぶもバーツ様は全く声を発しない。ディーナ様が小首を傾げた。

「エーヴァ」
「はい、ディーナ様」
「バーツを任せる。今日は帰ってもらってもいい?」 
「はい」
「こっちは私が話するから」
「はい」
「バーツ、今日は銀細工のお披露目に来たんでしょ?」

 ぎこちない所作で頷くバーツ様にディーナ様は「堂々と帰りなさい」と言い切った。そして私に目配せをし、その意図を察する。帰るタイミングだわ。
 バーツ様の腕を引くとすんなり従ってくれた。あくまでバーツ様のエスコートに見えるように進む。
 ディーナ様の言う通り、堂々と歩く意識をとった。諍いなんてなかったかのように戻ろう。

「ティルボーロン伯爵」

 馬車に乗り込んですぐ、ディーナ様の元護衛騎士現婚約者が駆け寄ってきた。
 二つに折ったメモ用紙をバーツ様に渡す。

「ディーナからです」
「……分かりました」

 中身を一緒に見ると「明日も来なさい」と書かれていた。元々社交界の招待状は今日明日どちらも参加できるものだ。私はもう一度いけるなら行きたい。問題はバーツ様だ。

「……」
「バーツ、伺っても?」

 馬車の中、無言で頷かれる。
 思いきってきいてみた。

「御両親と話をして和解したくはありませんか?」
「……」

 長い沈黙の後、少し掠れた声で応えてくれた。

「……そうだね。御祖父様も望んでいるから」
「私がききたいのはバーツがどうしたいかです」
「え?」
「御祖父様が望まれているのかは関係ありません。バーツが御両親と話し合って仲を改善したいかが大事だと思うんです」

 したくなければ、明日の社交界には参加せず音信不通にすればいい。けど逆なら動かないと。動くなら今が最大のチャンスだ。

「……」
「……」

 しばらくの無言の間、バーツ様は考え続けていた。
 一つ瞬きをゆっくり深くしてから決まる。

「…………話すよ」
「はい」
「エーヴァの言いたいこと、分かってる。今日の銀細工お披露目も本当にするつもりだったろうけど、僕に両親を会わせるつもりだったのも察していたよ」
「差出がましい真似をすみません」
「いいんだ。そうでもしないと動かないままだった」

 やっとその時が来たんだとバーツ様が微笑む。少し強ばりがとれている気がした。

「明日の社交界のために準備したいことがあるんだ」

 手伝ってくれる? と言われ、喜んでと応えた。

「はい! お手伝いします!」
「ありがとう」


* * *


「大丈夫です」

 緊張に固くなるバーツ様の腕をとる。エスコートをされつつもできる限り支えられるよう努めた。

「うん、行こう」

 バーツ様がしっかり前を見た。大丈夫。

「バーツ!」
「ループト公爵令嬢」
「こっち」

 来て早々ディーナ様に呼ばれる。
 広い会場の中の壁際端に場所を作ってくれていた。
 御両親は先に到着していて、昨日より表情が暗い。ディーナ様が間に入ってどんな話になったのだろう。

「バーツ」
「……昨日は失礼しました」

 バーツ様が真っ先に謝った。
 これには御両親以外の私も含め、ディーナ様ですら驚く。

「いえ、私もこの人も悪かったわ。ねえ」
「ああ……あんな話をしたかったわけではない」
「………」

 無言の時間が少し、バーツ様が小さな箱を二つ取り出した。
 箱をバーツ様が開け、中身を見て御両親が少しだけ肩を揺らして気がする。

「これを、受け取ってもらえますか」
「これは……」
「婚姻した時に御父様がくださったものか」
「え、覚えて、」
「当然だろう」

 徹夜でバーツ様と銀細工を作った。極細の模様で編んだ家紋がついたアクセサリーピンだ。これは今回、新しい銀に合わせてバーツ様がリニューアルとして作ったのだけど、元々はバーツ様の御祖父様が作られていたものだった。
 バーツ様の御祖父様から見た自分の子供たちへ向けたものだ。

「御祖父様が祝いだとくれたのに返してしまった」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

処理中です...