婚約破棄された家出令嬢の私、大好きな人に弟子入り! 溺愛は全然必要ありません!

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55話 結婚してください

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「あっれ、終わってた?」
「ディーナ様!」
「シャーリーもいるよ」
「シャーリー様?!」

 再び謁見の間の扉が開いたと思ったら、ディーナ様とシャーリー様がいらした。

「ディーナ様、何故こちらへ?」
「カチコミって言うらしいよ。テュラが言ってた」
「ぶっ」

 パサウリス様が吹いた。魔法使い同士にしか分からない言葉らしい。

「ネカルタス王国からルール違反しようとしてる国があるから対応よろしくって言われちゃってね~! それがエーヴァも絡んでるって分かって来たってわけ」
「その話は終わりましたよ」

 バーツ様が呆れ気味に伝え、ディーナ様が「本当?!」と驚きつつも笑う。 

「二人なら大丈夫だって分かってた」

 でも、と続ける言葉は周囲の利権絡みの貴族たちにだった。

「折角ネカルタス王国が歩みよったのに横槍いれようなんて無粋だと思いません?」

 ネカルタスが望まない介入を続けるなら私の拳かネカルタスの魔法でぼこぼこにする、と断言されると水を打ったかのように静かになった。さすがディーナ様。

「エーヴァ」
「シャーリー様……」
「私もディーナ様もあなたのことを聞いて急いで来たの。でも何も必要なかったわね」
「そんなことありません」

 私にとってヒーローみたいなお二人が来てくれただけでこんなにも心強い。嬉しい気持ちで満たされる。

「ありがとうございます」
「結婚祝いで来た、みたいになったね。それはそれでよかったよ」
「ディーナ様もありがとうございます」

 いいって、と笑うディーナ様は次に王陛下に「話しようか?」と言って頷かせた。ソッケ王国はディーナ様に借りしかない。頷く以外の返事はないだろう。
 内容はネカルタス王国への密な関係作りを強硬しようとしたこと、ね。

「私の用事が終わったらになるんだけど、エーヴァこの後時間ある? バーツもだけど」
「大丈夫です。お待ちしてます」
「私からも話があります」

 バーツ様がそう言うとディーナ様の口元が弧を描き嬉しそうに瞳を輝かせた。

「バーツ、いい顔してる。すごく格好よくなった」
「え? 私が?」
「エーヴァのおかげだね。いいよ、リッケリのことでしょ。私が話したいのも同じだから」
「え?!」

 じゃあとでねと軽く手を振って陛下とシャーリー様と共に去っていった。
 まさかバーツ様がリッケリの領主をやめてフィーラ公爵家にとどまる話を知っているの? 先程いらしたばかりのはずなのに。察していたのならすごい力だ。さすがディーナ様。

「エーヴァ」
「アリス」
「暫く待つなら城の客室を使って」
「いいの?」
「ええ」

 案内されたのは私が政務で使っていた部屋だった。応接間兼用として使用していたのを執務関係を完全に別部屋にしたらしい。
 窓からの眺めも変わらないのに、ひどく懐かしく感じた。

「エーヴァ?」

 遠くを見つめる私の視線を追ってバーツ様が窓の外を見やる。
 隣に立つバーツ様が夕陽に照らされていた。瞳が反射して煌めいている。

「ここは私が仕事をしてた部屋だったんです」
「ここが……」

 周囲を見やり、再び窓の外へ視線を向ける。

「内装は変わりましたけど、ここからの景色は変わらないなと思って」
「……エーヴァにとって思い入れの深い場所なんだね」

 頷いて、もう一度窓の外を見た。
 今はバーツ様と二人きり。時間もある。
 話せる気がした。

「バーツ」

 窓の側、夕暮れの光を浴びる中でしっかり瞳をとらえる。

「好きです」

 まだ失う恐怖の不快感は残ってる。けど、抱えていける程小さくなった。バーツ様が私に向き合い待ってくれたからだ。

「僕もエーヴァが好きだよ」

 ずっと一緒に時間を歩みたい人だと甘く微笑む。

「私も一緒にいたいです」

 一緒に銀細工を作りたい。
 領地経営だって二人ならどこでもやれる自信があるし、銀をとりに東の大陸にだって行ける。 
 そう伝えるとバーツ様が笑った。

「はは、エーヴァとならなんでもできそう」
「それはこちらの台詞です」

 なら改めて。
 と、バーツ様が私の手をとった。

「僕と結婚してください」

 やっと応えられる。

「はい、喜んで」

 やっとバーツ様からの好きに応えられた瞬間だった。

「エーヴァ、いい?」
「……ふふ、聞かないでください」

 バーツ様の首に腕を回してぐいっと引き寄せる。耳元で「もう夫婦になるんですから好きな時にしていいんです」と囁いた。

「……うん」

 腕を緩め、お互いの距離近くで見つめあって笑い合う。そのまま静かに距離をなくし、唇が重なった。
 確かめ合うような口付けだった。
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