魔王と呼ばれる元聖女の祝福はラッキースケベ(旧題:婚約破棄と処刑コンボを越えた先は魔王でした)

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13話 テンプレ過去回想、祝福と二人の前世

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「三人寄ればなんとかってやつ」
「いえ、その……」
「なんで?」

 小首を傾げる精霊王。
 ああやはり王。見えているのね。

「私が長生きしたいと思ったからですか?」
「うん」

 一度目はなんでという疑問しかわかず、二度目はもっと長く生きたいと思って死んだ。
 その気持ちを目の前の王は汲んでくれたと。

「あと、さらに祝福しとくね。パワーアップってやつ」
「え?」

 何気なくすごいことを言っている。
 祝福を重ねがけ? 現存する魔法使いよりも強くなるのでは?

「君の祈りや願いが素早く強力に反映するようにしたよ」
「それは具体的に?」
「んと、君の隠す癖を補えるように、気持ちがすぐに形として反映するよ! 誰が見ても分かるように!」
「それって、かなり厄介なんじゃ……」

 ニッコリ満面の笑みで精霊王が遠ざかっていく。
 説明省いて消える気ね。
 すぐに取り消してほしい。私は聖女なんて称号も力もいらないのだから。

「見れば分かる。感覚でも分かるかな?」
「いえ、逆に聖女の力なくしてほしいんですけど」
「せっかく祝福したんだから満喫してよ」
「いいえ、私聖女辞めたいんですって」
「うん、ま、頑張って」

 雑な挙句話聞いてくれないし。笑顔で誤魔化して完全に消える。
 溜息一つ、仕方なしに振り向いて二人の前世と対峙した。

「自己紹介からします?」
「そうだな」
「はい、是非! お二人のことは知ってますけど!」

 さて、前世一人目はよく知る女性。
 リーサ・アギオス、最初の聖女。そして、姓から分かる通り、私の御先祖様だ。肖像画も残っているし、貴族院の勉強でも出てくる有名人。世界を股にかけ、勇者として混沌とした地を纏めあげたと言われている。

「御先祖様が前世なのは分かりますが……」

 もう一人にちらりと視線を動かすと、それはもう幸せそうな満面の笑みで立つ女性。

「シリーズ二つのヒロイン並ぶとか壮観ですわあ」

 悦に浸るもう一人の女性、こちらは異世界の人物。名をヒジリ・ササゲというニホンジン。
 彼女の話は非常に興味深かった。私と御先祖様の存在がゲームという存在になっていると言うから。私とご先祖様は作り物の御伽話の登場人物というわけ。

「ここにいるなら互いの記憶を見た方が手っ取り早くないか?」
「ああ、確かに」
「どういうことです?」

 私はまだ世界に戻っていない。その途中の仮称宇宙にいる。ここは恐らく意識の世界。となると、互いが心開いて触れ合えば、それぞれの記憶や知識を見ることができるはず。

「なにそれうける。ゲームやファンタジー漫画のテンプレじゃないですか!」
「うん?」

 納得してくれたなら構わないけれど、言葉がよくわからない。
 まあ見ればいいか。見てしまえば、ヒジリの言うことが分かる。

「繋がるにあたって人格はどうする?」

 念の為だと御先祖様が言う。
 前世でその過去や思い・知識を見ると、そちら側に引っ張られると。御先祖様よく知ってるな。
 それを言うと御先祖様は苦笑した。

「前に記憶そのまま転生した時に、人格が私と身体の持ち主でしょっちゅう切り替わってな。割と面倒なことになりがちだった」
「なるほど」

 御先祖様転生経験ありなんだ。転生後の記憶持ちってすごい。さすが最初の聖女、参考になった。

「なら、人格統合しちゃいましょう」
「いいのか?」
「そうですよ。人格はイリニさんでよいのでは? イリニさんの身体だし、私たちおまけだし」
「私、生まれ変わりたくて。誰にも惑わされない自分の芯がある女性になりたい。だから、いっそ性格も変わるぐらいがいいかなって」

 婚約破棄なんかでおろおろしない、自分らしく生きていくとびきり良い女性に。
 自由で自分の気持ちに正直で、笑って誤魔化すこともしないで、やりたいことをやって幸せを感じて時を過ごす。最高じゃない?

「そういうことなら力になろう」
「んー、私の知識見る時点でアウトな気もしますが、お役に立てるなら是非」

 そうして私たちは手を取り合った。三人で輪になれば急速に訪れる記憶、知識、それぞれの思い。

「……すごい」
「……というか、みんな刺されて死んでるとか笑えますね」
「だからこその前世なのだろう」

 三人とも何かしらの刃にかかっている。
 御先祖様は魔物と人の間で起きた諍いを止めようとして裏切り者と叫ばれ夫に斬られた。
 聖は毎日残業で頑張っていたある日、通り魔に刺された。
 この死に方が私たちを繋いでいるもの?

「というか、私ヒロインじゃなくて当て馬じゃない」
「確かにゲームでは、イリニは主役ではなかったな」
「いや私にとってヒロインですので」

 そんなきりっとした顔向けられても。ひじりにとって外せないらしい。
 現実に戻ったら、私も私自身がヒロインだと思いながら過ごすの?
 それはちょっと、自分でも引くかもしれない。
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