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27話 魔力枯渇→魔力補充(体液摂取もしくは体液交換)
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小難しい言葉を使うなら阿鼻叫喚。
城の前にある山の斜面は地獄絵図だった。一方的な駆逐という意味で。
「エフィってこんなに強いの?」
「おー。てか、貴族院で主席か次席しかとってなかっただろ?」
「そういうの興味なくて」
「お前……」
私が知らなかっただけでエフィは相当優秀らしい。
一個師団の魔法使いの集団相手に一切傷を負わず叩きのめしている。
もしかして、俺つえええの雷も本当は避けられたんじゃないの?
ていうか、私が俺つえええモードでやったやつ、エフィが今やってんだけど?
素で俺つえええ人いるんだ……。
「けどまー、さすがに枯渇すんな」
「それってやばいやつだよね?」
「そりゃな」
魔力枯渇は一歩間違えれば死を招く。
辛うじて助かったとしても、最低三ヶ月は高熱でうなされ寝たきり。
「治せないの?」
「俺が使える治癒魔法使っても一ヶ月だな。聖女の使う治癒も効かねえからな」
「一ヶ月……」
そんな苦しむことになるのに、エフィは躊躇いなんて見せずに戦い続ける。
これがゲームなら、クリアした時点で全回復とかするけど、今は現実だからそうもいかない。
「私、こうまでして戻ってきてほしいわけじゃない」
「んなこと、エフィだって分かって、」
「こんなの嫌」
「落ち着けって」
あのやり取りがあったが故に、ギリギリまで自分を酷使してるなら、それは絶対に嫌。
気づくのが遅かったから、もう加勢なんてしても意味がない。
「まあそうだな、後は」
アステリに解決策を教えられる。
ああそういえば、聖の記憶にもあった。
「魔力の強い人間の体液摂取」
「あー、聞かなかったことにしろ」
「なんで?」
「お前が今考えたこと、エフィ嫌がんだろ」
「……精霊王の祝福でパワーアップした私の血でも飲めば一発じゃない?」
「それが駄目だっつの」
「なんでよ」
エフィが嫌がるのはなんで。
一ヶ月も苦しむぐらいなら、ちゃちゃっと強い人間の血飲んじゃえばいいのに。
美味しくはないだろうけど、高熱で苦しむことと天秤にかけたら飲むでしょ。
「お、終わったぞ」
「え、エフィ全滅させたの」
「みたいだな」
カロがエフィを抱えて戻ってくる。
動けないということは、魔力枯渇状態だ。
「アステリ、私やる」
「ええ……お前」
「アステリには迷惑かけないようにするから。責任は私がきちんととる」
「いや、そこじゃなくてな……」
「元々揉めた原因は私の所在でしょ。それに一ヶ月も苦しむエフィなんて見たくない。死んじゃうかもしれないって思いながら起きるの待つのも嫌……ねえ、やらせてよ」
「お前、今のエフィんとこ行って、自分がどうなるか分かってんのかよ」
「分かってる。それでもエフィを助けたい」
「あー……いや、んー…………分かった」
なんとかアステリが了承してくれた。
そこにカロが一人で戻ってきて、結果報告をしてくれる。
エフィは部屋のベッドの中だ。
見ていた通り、二個師団退かせて本人は魔力枯渇状態。
馬鹿だよねえとカロが苦笑した。
「じゃあ行く」
「おー」
「え? イリニちゃんが? まずいでしょ」
「イリニが行くってきかねえんだよ」
「イリニちゃん分かってるの?」
「うん」
いつも軽そうににほほんとしているカロでも、さすがに今回のは驚きに顔を染めていた。
そうだよねえ、ここは本来アステリが行くところだよね。
でもだめ、譲れない。
「いってくる」
* * *
「エフィ?」
エフィにあてた客間に入って数歩歩みを進めれば、エフィがすぐに気づいてベッドから起き上がった。
相当無理をしている。起き上がれる程の元気ないのに。
「な、なんで……」
来るはずのない私が来て驚いている。
高熱でか、顔が赤い。
息も絶え絶えにエフィが私の名前を呼んだ。
熱に浮かされて目がうつろ。私のこと見えてるのかな。
「アステリは、」
「頼み込んで、私が来た感じ」
「駄目だ、戻って」
「エフィ苦しいでしょ?」
というか、これ一ヶ月も耐えるのきつくない?
やっぱり私の判断正しい気がする。
起き上がったはいいけど、そこから動けないエフィの目の前、すなわちベッドの上に乗り込んで座り込んだら、うつろに潤んだ瞳が見開かれた。
行儀悪いのはこの際、許してほしい。
「イリニ」
小さなナイフを取り出して、自分の指を切った。
ああ、指先って痛いんだよね。
でもこのぐらいって話か。エフィはもっと辛いんだから。
「手っ取り早く治そ。ね?」
「駄目、だ、もごっ」
血が滲む指を問答無用でエフィに突っ込んだ。
こくりと喉が動くのを見て、飲んだことを確認した。
「人の血飲むのなんておいしくないし嫌だろうけど我慢して」
「うっ」
相当身体がきついみたい。
指を吸われてエフィが血を吸っているのが分かった。
少しぴりっとした痛みがあったけど、なるたけ顔に出さずにエフィの様子を窺う。
顔は赤いまま、力も入ってない感じ。
そんなすぐには治らないか。
「っ」
「エフィ?」
エフィの右手が私の手首を掴んで、エフィの口の中から外された。
瞳に少し力が戻ってきてる。
このまま飲み続けたら治りそうなのに。
「これ以上はいい。戻って」
「魔力強い人間の体液摂取が手っ取り早いんだからいいじゃん」
「俺の為にイリニがここまでやる必要なんてない」
「私がやりたいからやってるだけだよ」
「駄目だ」
さっきから否定の言葉ばかり。
私の純粋にエフィを助けたいって気持ちはどこへいけばいいの。
「今すぐこの部屋から出ていけ」
「一ヶ月も寝込むの?」
「それでいい」
「エフィ苦しいでしょ?」
「君が目の前にいる事よりはマシだ」
なんなの。
あれだけ帰ってきたいって言ったくせに。その言葉が嬉しかったのに。
戻ってきたエフィが苦しんでたんじゃ意味ない。
「そんなになって戻ってきてほしいんじゃない」
「俺はこれで構わない。どうなってもいいから、ここに戻れればよかった」
「エフィ苦しいだけじゃん」
「それでも、この城にいられるならいい」
「やだ。苦しんでるエフィ見たくない」
駄々をこねるな、とエフィが窘める。
エフィのこんな姿を見るぐらいなら、あんな本音を吐露するんじゃなかった。
もっとよく考えてれば言えばよかった。
浅はかな自分に腹が立つ。
「体液摂取より、もっと手っ取り早いのにする?」
「え?」
「エフィも分かってるでしょ」
「それは、」
「体液交換。する?」
年齢指定でよくあるテンプレ。
魔力補充は体液交換。これ以上は語らないんだから。
これがあったから、アステリも渋ったし、カロも驚いたんだと思う。
テンプレ通り、魔力枯渇状態の時は理性もきかないらしいし。
だから、私がエフィの部屋に入った時点で、そういうことだったりする。
「分かって、ここに?」
「うん。ファンタジー系年齢指定もののテンプレだからね」
城の前にある山の斜面は地獄絵図だった。一方的な駆逐という意味で。
「エフィってこんなに強いの?」
「おー。てか、貴族院で主席か次席しかとってなかっただろ?」
「そういうの興味なくて」
「お前……」
私が知らなかっただけでエフィは相当優秀らしい。
一個師団の魔法使いの集団相手に一切傷を負わず叩きのめしている。
もしかして、俺つえええの雷も本当は避けられたんじゃないの?
ていうか、私が俺つえええモードでやったやつ、エフィが今やってんだけど?
素で俺つえええ人いるんだ……。
「けどまー、さすがに枯渇すんな」
「それってやばいやつだよね?」
「そりゃな」
魔力枯渇は一歩間違えれば死を招く。
辛うじて助かったとしても、最低三ヶ月は高熱でうなされ寝たきり。
「治せないの?」
「俺が使える治癒魔法使っても一ヶ月だな。聖女の使う治癒も効かねえからな」
「一ヶ月……」
そんな苦しむことになるのに、エフィは躊躇いなんて見せずに戦い続ける。
これがゲームなら、クリアした時点で全回復とかするけど、今は現実だからそうもいかない。
「私、こうまでして戻ってきてほしいわけじゃない」
「んなこと、エフィだって分かって、」
「こんなの嫌」
「落ち着けって」
あのやり取りがあったが故に、ギリギリまで自分を酷使してるなら、それは絶対に嫌。
気づくのが遅かったから、もう加勢なんてしても意味がない。
「まあそうだな、後は」
アステリに解決策を教えられる。
ああそういえば、聖の記憶にもあった。
「魔力の強い人間の体液摂取」
「あー、聞かなかったことにしろ」
「なんで?」
「お前が今考えたこと、エフィ嫌がんだろ」
「……精霊王の祝福でパワーアップした私の血でも飲めば一発じゃない?」
「それが駄目だっつの」
「なんでよ」
エフィが嫌がるのはなんで。
一ヶ月も苦しむぐらいなら、ちゃちゃっと強い人間の血飲んじゃえばいいのに。
美味しくはないだろうけど、高熱で苦しむことと天秤にかけたら飲むでしょ。
「お、終わったぞ」
「え、エフィ全滅させたの」
「みたいだな」
カロがエフィを抱えて戻ってくる。
動けないということは、魔力枯渇状態だ。
「アステリ、私やる」
「ええ……お前」
「アステリには迷惑かけないようにするから。責任は私がきちんととる」
「いや、そこじゃなくてな……」
「元々揉めた原因は私の所在でしょ。それに一ヶ月も苦しむエフィなんて見たくない。死んじゃうかもしれないって思いながら起きるの待つのも嫌……ねえ、やらせてよ」
「お前、今のエフィんとこ行って、自分がどうなるか分かってんのかよ」
「分かってる。それでもエフィを助けたい」
「あー……いや、んー…………分かった」
なんとかアステリが了承してくれた。
そこにカロが一人で戻ってきて、結果報告をしてくれる。
エフィは部屋のベッドの中だ。
見ていた通り、二個師団退かせて本人は魔力枯渇状態。
馬鹿だよねえとカロが苦笑した。
「じゃあ行く」
「おー」
「え? イリニちゃんが? まずいでしょ」
「イリニが行くってきかねえんだよ」
「イリニちゃん分かってるの?」
「うん」
いつも軽そうににほほんとしているカロでも、さすがに今回のは驚きに顔を染めていた。
そうだよねえ、ここは本来アステリが行くところだよね。
でもだめ、譲れない。
「いってくる」
* * *
「エフィ?」
エフィにあてた客間に入って数歩歩みを進めれば、エフィがすぐに気づいてベッドから起き上がった。
相当無理をしている。起き上がれる程の元気ないのに。
「な、なんで……」
来るはずのない私が来て驚いている。
高熱でか、顔が赤い。
息も絶え絶えにエフィが私の名前を呼んだ。
熱に浮かされて目がうつろ。私のこと見えてるのかな。
「アステリは、」
「頼み込んで、私が来た感じ」
「駄目だ、戻って」
「エフィ苦しいでしょ?」
というか、これ一ヶ月も耐えるのきつくない?
やっぱり私の判断正しい気がする。
起き上がったはいいけど、そこから動けないエフィの目の前、すなわちベッドの上に乗り込んで座り込んだら、うつろに潤んだ瞳が見開かれた。
行儀悪いのはこの際、許してほしい。
「イリニ」
小さなナイフを取り出して、自分の指を切った。
ああ、指先って痛いんだよね。
でもこのぐらいって話か。エフィはもっと辛いんだから。
「手っ取り早く治そ。ね?」
「駄目、だ、もごっ」
血が滲む指を問答無用でエフィに突っ込んだ。
こくりと喉が動くのを見て、飲んだことを確認した。
「人の血飲むのなんておいしくないし嫌だろうけど我慢して」
「うっ」
相当身体がきついみたい。
指を吸われてエフィが血を吸っているのが分かった。
少しぴりっとした痛みがあったけど、なるたけ顔に出さずにエフィの様子を窺う。
顔は赤いまま、力も入ってない感じ。
そんなすぐには治らないか。
「っ」
「エフィ?」
エフィの右手が私の手首を掴んで、エフィの口の中から外された。
瞳に少し力が戻ってきてる。
このまま飲み続けたら治りそうなのに。
「これ以上はいい。戻って」
「魔力強い人間の体液摂取が手っ取り早いんだからいいじゃん」
「俺の為にイリニがここまでやる必要なんてない」
「私がやりたいからやってるだけだよ」
「駄目だ」
さっきから否定の言葉ばかり。
私の純粋にエフィを助けたいって気持ちはどこへいけばいいの。
「今すぐこの部屋から出ていけ」
「一ヶ月も寝込むの?」
「それでいい」
「エフィ苦しいでしょ?」
「君が目の前にいる事よりはマシだ」
なんなの。
あれだけ帰ってきたいって言ったくせに。その言葉が嬉しかったのに。
戻ってきたエフィが苦しんでたんじゃ意味ない。
「そんなになって戻ってきてほしいんじゃない」
「俺はこれで構わない。どうなってもいいから、ここに戻れればよかった」
「エフィ苦しいだけじゃん」
「それでも、この城にいられるならいい」
「やだ。苦しんでるエフィ見たくない」
駄々をこねるな、とエフィが窘める。
エフィのこんな姿を見るぐらいなら、あんな本音を吐露するんじゃなかった。
もっとよく考えてれば言えばよかった。
浅はかな自分に腹が立つ。
「体液摂取より、もっと手っ取り早いのにする?」
「え?」
「エフィも分かってるでしょ」
「それは、」
「体液交換。する?」
年齢指定でよくあるテンプレ。
魔力補充は体液交換。これ以上は語らないんだから。
これがあったから、アステリも渋ったし、カロも驚いたんだと思う。
テンプレ通り、魔力枯渇状態の時は理性もきかないらしいし。
だから、私がエフィの部屋に入った時点で、そういうことだったりする。
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