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51話 返事を、きいても?
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「今の私はエフィの知ってる私じゃないのに」
「君がそう思っていたとしても、ここでイリニを知れば知るほど気持ちが膨らむ一方だった」
この城に来て、側にいて、それでも揺るがなかったとエフィははっきり告げた。
元々いい子ちゃん時代の私は見た目でしか分からない。だからここで過ごして、改めて自分の目で見て知って、エフィの私への気持ちは変わらず確かなものになった。
「以前は表面上のイリニしか知らなかった。何を考えているのか、本音はどうなのか知りたいのに遠くから見てるだけだった」
それが私が聖女をしていた頃の想い。
聖女をやめて、婚約破棄もあって、やっと私を知れる機会ができたとエフィはこの城にやってきた。
「ここにいてイリニが何を思っているのか、少しずつ分かるようになった」
それがたまらなく嬉しいことだったらしい。
ラッキースケベなんて恥ずかしいだけなのに、エフィにとっては私がいつ淋しいか分かる良い指標だったと。仮に淋しい気持ちが知られるとしても、ラッキースケベで知られたくない。ぽそりとそう言うと、エフィは分からなくもないと困ったように笑って返した。
「今日はその、狡いとは思ったんだが、婚約という話を勝手に出した」
「言ってくれれば」
「君に嫌がられたらきつい」
その手段使わなくてもとは言うかも。
しかも告白を受けないと、この婚約の話は持ってこれないわけで。
そうだとしたら、恥ずかしさに増々お断りしてる可能性もある。
恋のライバルモードがあって気づけたぐらい私は私自身のことに疎かったのだから、告白を受けたら恥ずかしさで自分の本当の気持ちを隠してしまうかもしれない。
「嘘でもいいから叶えたいと思ってしまって」
「いいよ」
「イリニ?」
「そこは……別に、嫌じゃ、ないし」
エフィの瞳が僅かに上がる。
少し息を詰まらせて、掠れる声で囁いた。
「返事を、きいても?」
エフィの告白の返事。あのモードが出た時点で結果は見えてしまっている。
恋のライバルモード。
ピラズモス男爵令嬢をライバル視してヤキモチ焼いて、エフィに触らないでほしいという気持ちがそのまま形になった。
「返事?」
「ん」
だめ、恥ずかしい。
さっきから顔は熱いし、鼓動は速くなるし、経験したことない状態だけど、エフィに返事をしなきゃいけないことだけは分かる。
「エフィ、あ、の、っ!」
どんと下から大きく突き上げられた。
次に横に足元が揺れる。
「イリニ!」
よろけるところを腰に腕が回って抱きしめられる。
地震と思われる揺れは最初の大きなもの以降、なにも起きなかった。
「様子を見に行こう」
「うん」
手をとられ外に出た。
ドラゴンが見張りをする場所に着けば、険しい顔をしてパノキカトを見下ろしている。
「来たか」
「ドラゴン?」
「先の揺れのみだな」
シコフォーナクセーとパノキカトを眼下に確認するけど、特段異常らしいものは見えない。
火事らしき煙は、ドラゴン曰く鎮火したと言う。
「地震なんて今まで一度もなかったのに」
「それはイリニが守っていたからだ」
「え?」
フェンリルもやってきた。
二人が言うには、聖女の魔法があったから今まで地震は起きなかったと。シコフォーナクセーやエクセロスレヴォが恩恵を受けていたと言う表現をするのはこういうところにある。
地震だけではなく異常気象といった自然災害も聖女の力で回避してきた。
精霊王からの祝福は聖女が守り祈る場所に直接影響が及ぶ特殊な魔法。
「精霊王は知ってるはずなのに」
意識の世界でも無視されたけど、私が聖女をやめたいことは知ってるはず。
これだけ時間が経ったのだから、さっさと出てきてピラズモス男爵令嬢を新しい聖女にすればいいのにする気配はない。私がパノキカトに戻って聖女として祈るとは精霊王も考えてないと思うけど。
「まあ精霊王が出てこないというのは前にもあったからな」
「聖女不在期間もあったのだから、おかしなことではない」
「不在期間があったの?」
「最初の聖女を失ってから二代目に移行するまでの間にあったか」
「あの不在期間は精霊王もこちら側に中々出てこなかった」
精霊王が出てこないということは、私たちが立つ世界の精霊の統制をしないということ、当然世界は荒れる。しかもリーサの時代は魔物も今より荒れていた。尚更状況がよくない。
自然災害に魔物との不和、当時は国家間の争いも多かったと史実にはあった。今よりはるかに困難な時代だったのは明白。
「もしかして、リーサの時と今って似てる?」
まあ大きく見ればそうだろうなとドラゴンが頷いた。
「今のはあくまで前兆だ。パノキカトの身の振り方によっては、というところだな」
「フェンリル、精霊王は」
「イリニの方が分かるだろう? 出てくる気配がない」
早くピラズモス男爵令嬢を聖女にしないと。神殿に行けば解決するのに、当の本人は行くって観念なさそうだったし、元婚約者は嫌がりそうだった。
フェンリルが溜め息を吐く。
「あの男は新しい聖女を迎えたくないのだろう」
「ん? 元婚約者?」
「イリニ、俺の前でそいつの話をするな」
「はい?」
黙っていたエフィが急に話に割り込んできた。しかもなに? 元婚約者の話をするなって、今の会話からならせざるをえないでしょ。
なのにエフィは不満顔だ。なんでそうなるの。
「君がそう思っていたとしても、ここでイリニを知れば知るほど気持ちが膨らむ一方だった」
この城に来て、側にいて、それでも揺るがなかったとエフィははっきり告げた。
元々いい子ちゃん時代の私は見た目でしか分からない。だからここで過ごして、改めて自分の目で見て知って、エフィの私への気持ちは変わらず確かなものになった。
「以前は表面上のイリニしか知らなかった。何を考えているのか、本音はどうなのか知りたいのに遠くから見てるだけだった」
それが私が聖女をしていた頃の想い。
聖女をやめて、婚約破棄もあって、やっと私を知れる機会ができたとエフィはこの城にやってきた。
「ここにいてイリニが何を思っているのか、少しずつ分かるようになった」
それがたまらなく嬉しいことだったらしい。
ラッキースケベなんて恥ずかしいだけなのに、エフィにとっては私がいつ淋しいか分かる良い指標だったと。仮に淋しい気持ちが知られるとしても、ラッキースケベで知られたくない。ぽそりとそう言うと、エフィは分からなくもないと困ったように笑って返した。
「今日はその、狡いとは思ったんだが、婚約という話を勝手に出した」
「言ってくれれば」
「君に嫌がられたらきつい」
その手段使わなくてもとは言うかも。
しかも告白を受けないと、この婚約の話は持ってこれないわけで。
そうだとしたら、恥ずかしさに増々お断りしてる可能性もある。
恋のライバルモードがあって気づけたぐらい私は私自身のことに疎かったのだから、告白を受けたら恥ずかしさで自分の本当の気持ちを隠してしまうかもしれない。
「嘘でもいいから叶えたいと思ってしまって」
「いいよ」
「イリニ?」
「そこは……別に、嫌じゃ、ないし」
エフィの瞳が僅かに上がる。
少し息を詰まらせて、掠れる声で囁いた。
「返事を、きいても?」
エフィの告白の返事。あのモードが出た時点で結果は見えてしまっている。
恋のライバルモード。
ピラズモス男爵令嬢をライバル視してヤキモチ焼いて、エフィに触らないでほしいという気持ちがそのまま形になった。
「返事?」
「ん」
だめ、恥ずかしい。
さっきから顔は熱いし、鼓動は速くなるし、経験したことない状態だけど、エフィに返事をしなきゃいけないことだけは分かる。
「エフィ、あ、の、っ!」
どんと下から大きく突き上げられた。
次に横に足元が揺れる。
「イリニ!」
よろけるところを腰に腕が回って抱きしめられる。
地震と思われる揺れは最初の大きなもの以降、なにも起きなかった。
「様子を見に行こう」
「うん」
手をとられ外に出た。
ドラゴンが見張りをする場所に着けば、険しい顔をしてパノキカトを見下ろしている。
「来たか」
「ドラゴン?」
「先の揺れのみだな」
シコフォーナクセーとパノキカトを眼下に確認するけど、特段異常らしいものは見えない。
火事らしき煙は、ドラゴン曰く鎮火したと言う。
「地震なんて今まで一度もなかったのに」
「それはイリニが守っていたからだ」
「え?」
フェンリルもやってきた。
二人が言うには、聖女の魔法があったから今まで地震は起きなかったと。シコフォーナクセーやエクセロスレヴォが恩恵を受けていたと言う表現をするのはこういうところにある。
地震だけではなく異常気象といった自然災害も聖女の力で回避してきた。
精霊王からの祝福は聖女が守り祈る場所に直接影響が及ぶ特殊な魔法。
「精霊王は知ってるはずなのに」
意識の世界でも無視されたけど、私が聖女をやめたいことは知ってるはず。
これだけ時間が経ったのだから、さっさと出てきてピラズモス男爵令嬢を新しい聖女にすればいいのにする気配はない。私がパノキカトに戻って聖女として祈るとは精霊王も考えてないと思うけど。
「まあ精霊王が出てこないというのは前にもあったからな」
「聖女不在期間もあったのだから、おかしなことではない」
「不在期間があったの?」
「最初の聖女を失ってから二代目に移行するまでの間にあったか」
「あの不在期間は精霊王もこちら側に中々出てこなかった」
精霊王が出てこないということは、私たちが立つ世界の精霊の統制をしないということ、当然世界は荒れる。しかもリーサの時代は魔物も今より荒れていた。尚更状況がよくない。
自然災害に魔物との不和、当時は国家間の争いも多かったと史実にはあった。今よりはるかに困難な時代だったのは明白。
「もしかして、リーサの時と今って似てる?」
まあ大きく見ればそうだろうなとドラゴンが頷いた。
「今のはあくまで前兆だ。パノキカトの身の振り方によっては、というところだな」
「フェンリル、精霊王は」
「イリニの方が分かるだろう? 出てくる気配がない」
早くピラズモス男爵令嬢を聖女にしないと。神殿に行けば解決するのに、当の本人は行くって観念なさそうだったし、元婚約者は嫌がりそうだった。
フェンリルが溜め息を吐く。
「あの男は新しい聖女を迎えたくないのだろう」
「ん? 元婚約者?」
「イリニ、俺の前でそいつの話をするな」
「はい?」
黙っていたエフィが急に話に割り込んできた。しかもなに? 元婚約者の話をするなって、今の会話からならせざるをえないでしょ。
なのにエフィは不満顔だ。なんでそうなるの。
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