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21話 ご飯デート、壁ドン
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「芸術に飛び抜けてる子は店選びも飛び抜けてるのかな?」
「気に入られたようでよかったです」
本当ソッケ王国はもったいないことをする。国宝になり得る職人のサポートはしてなんぼなのに。
「また一人落ちました」
「ええ……またそれ?」
ヴォルムは慣れてますと微笑む。
三国間は仲良くしようね~って子供でも分かる協定結んでるんだから、このぐらいいいでしょ。どちらにしろ私が推薦状を出す出さないにかかわらず彼女は国宝になるだろう。ソッケ王国なんだかんだまだ混乱していて渡航も難しいけど、今やりたいならそれを後押ししてあげるのがいい。私は出来る限りで手伝う。これでいいと思うけど。
「ディーナ様」
「?」
フォークに刺さった肉に料理を差し出してくる。食べろってこと? なかなか行儀悪いことをしてくるわね。
「ん」
食べたら満足そうに笑った。貴族がやることじゃないけど、この店は周囲の席とは距離が空いていてカーテンで半分以上囲まれているから周囲に行儀が悪いところは見られない。
「俺に集中して下さい」
「してるけど」
「これはデートなので」
「デートなんだ……」
エーヴァと話し終わってからはデート時間だったらしい。知らなかったよ。
「ディーナ様、こちらも」
「ん」
差し出されたら食べてしまうじゃない。下手に美味しいから尚更逆らえないし。
「ヴォルムの分がなくなるよ」
「ではディーナ様のを食べさせて下さい」
俺がやったように、と満面の笑みで言ってくる。これが狙いね?
フォークに刺して口元に持っていけば喜んで食べた。所作が綺麗で少しイラっとする。
「これでいいの?」
「はい」
まあ楽しそうだからいいか。
「ヴォルムは今までと比べると表情豊かになったね」
「そうでしょうか」
「なんだろう……緊張してたというか……今よりもっとおかたい感じだったかな?」
「自制していたので」
我慢してたってこと?
そんなしなくてもいいのにと思うけど、あの頃は殿下の婚約者としてやっていたから遠慮せざるを得なかったのかな?
「あの頃じゃ横並びでご飯食べるなんてなかったものね」
ソファに身を預ける。大きなソファであっても並ぶことはなかった。対面が基本で、たぶんそれがヴォルムにとっての自制範囲だったってことだ。
「そうですね。この位置ならキスもしやすそうです」
「する気?」
「いいえ、まだ」
まだって……いつかする気満々じゃん。
「ヴォルム本人を前にして言うのも悪いけど、私、恋愛のときめきが分からないのよ」
「大丈夫です。俺を好きになってもらえば自ずと知ることになりますので」
「そう」
にしても私、枯れてる。
壁ドンでもしてもらおうかな。そうしたら分かるよね。
「しましょうか」
「え?」
「今回はきちんと声に出されていました」
「あれ」
ヴォルムが身体を起こして両手をソファの背もたれに置く。私を囲う形で両手が置かれ見下ろされた。
「どうでしょうか」
「うーん、近いなあってだけかな?」
「そうですか……残念です」
まだ早かったようですねと静かに戻っていく。
「その時が来たらまたします」
「次もあるんだ」
「ええ」
壁ドンは人を選ぶのかもしれない。私がシャーリーの義妹にやった時も効果なかったし。
「ヴォルムは今のでときめいたの?」
「テュラが使う表現で言うならドキドキしましたよ」
「どきどき」
「文学的な表現なら、胸が高鳴る、でしょうか」
「詩人」
「ありがとうございます」
ヴォルムが羨ましくなる。いいなあと思いながら行儀悪く頬杖をついてヴォルムを見ていると「ディーナ様、手を」と言われ素直に片手を差し出した。
「俺はこうしてディーナ様の手に触れるだけでも嬉しいです」
「そうなの」
「今までは社交界のエスコートで王太子殿下の代わりを務めた時ぐらいしか触れることが出来なかったので」
後は拳振り上げた時に止めるぐらいかな?
「ディーナ様は身内に甘いので、俺を拒む事はないと分かっていますが、今こうして触れることが出来るのが嬉しいんです」
「そう」
乗せた手をヴォルムの親指が撫でる。少しくすぐったい。
ヴォルムはそのまま私の手を自身の口元へ持ってきて、そのまま唇を落とした。黒灰色の前髪が僅かに揺れる。
そのまま視線だけを私に向けた。青灰色の瞳の中に滲む緑色が輝く。今まで見たことのなかった。ずっと隠してきたのだと分かる。それと同じもので応えたいと思った。
「六年一緒にいたと思うんだけど」
「はい」
「どうして私を好きになったの? 外見?」
「ディーナ様の白金色の髪も、金色が走る緑色の瞳も好きですよ。ですが、決定的なのはもっと違う所です」
確かに初めてお会いした時は鮮烈な外見でした、と続ける。私の瞳は珍しいとよく言われるけどね。それにこの髪色で結構強いイメージを持たれやすい。
「んー、じゃあ身体?」
身体強化の魔法を使っているとはいえ、最低限鍛えている。とはいっても鍛えているほどムキムキにはなれなかった。あまり筋肉つかないらしく細いままだ。
「魅力的ですが、やはり違います」
少しだけ眦を上げて「その内話します」と笑った。
ほっとけないのも人たらしなのも超えてヴォルムは私への特別な想いがあると分かる。あ、今少し恋愛が分かった。特別にされて嬉しいというか、優越感的な? ちょっと違う?
「ディーナ様、明日は早いのでそろそろ戻りましょう」
「そうね」
明日はさらに東、三国連盟の一つキルカス王国へ進む。ソッケのお馬鹿さんがやらかしてくれたから不穏な空気しかないけど、やるしかないよね。
「気に入られたようでよかったです」
本当ソッケ王国はもったいないことをする。国宝になり得る職人のサポートはしてなんぼなのに。
「また一人落ちました」
「ええ……またそれ?」
ヴォルムは慣れてますと微笑む。
三国間は仲良くしようね~って子供でも分かる協定結んでるんだから、このぐらいいいでしょ。どちらにしろ私が推薦状を出す出さないにかかわらず彼女は国宝になるだろう。ソッケ王国なんだかんだまだ混乱していて渡航も難しいけど、今やりたいならそれを後押ししてあげるのがいい。私は出来る限りで手伝う。これでいいと思うけど。
「ディーナ様」
「?」
フォークに刺さった肉に料理を差し出してくる。食べろってこと? なかなか行儀悪いことをしてくるわね。
「ん」
食べたら満足そうに笑った。貴族がやることじゃないけど、この店は周囲の席とは距離が空いていてカーテンで半分以上囲まれているから周囲に行儀が悪いところは見られない。
「俺に集中して下さい」
「してるけど」
「これはデートなので」
「デートなんだ……」
エーヴァと話し終わってからはデート時間だったらしい。知らなかったよ。
「ディーナ様、こちらも」
「ん」
差し出されたら食べてしまうじゃない。下手に美味しいから尚更逆らえないし。
「ヴォルムの分がなくなるよ」
「ではディーナ様のを食べさせて下さい」
俺がやったように、と満面の笑みで言ってくる。これが狙いね?
フォークに刺して口元に持っていけば喜んで食べた。所作が綺麗で少しイラっとする。
「これでいいの?」
「はい」
まあ楽しそうだからいいか。
「ヴォルムは今までと比べると表情豊かになったね」
「そうでしょうか」
「なんだろう……緊張してたというか……今よりもっとおかたい感じだったかな?」
「自制していたので」
我慢してたってこと?
そんなしなくてもいいのにと思うけど、あの頃は殿下の婚約者としてやっていたから遠慮せざるを得なかったのかな?
「あの頃じゃ横並びでご飯食べるなんてなかったものね」
ソファに身を預ける。大きなソファであっても並ぶことはなかった。対面が基本で、たぶんそれがヴォルムにとっての自制範囲だったってことだ。
「そうですね。この位置ならキスもしやすそうです」
「する気?」
「いいえ、まだ」
まだって……いつかする気満々じゃん。
「ヴォルム本人を前にして言うのも悪いけど、私、恋愛のときめきが分からないのよ」
「大丈夫です。俺を好きになってもらえば自ずと知ることになりますので」
「そう」
にしても私、枯れてる。
壁ドンでもしてもらおうかな。そうしたら分かるよね。
「しましょうか」
「え?」
「今回はきちんと声に出されていました」
「あれ」
ヴォルムが身体を起こして両手をソファの背もたれに置く。私を囲う形で両手が置かれ見下ろされた。
「どうでしょうか」
「うーん、近いなあってだけかな?」
「そうですか……残念です」
まだ早かったようですねと静かに戻っていく。
「その時が来たらまたします」
「次もあるんだ」
「ええ」
壁ドンは人を選ぶのかもしれない。私がシャーリーの義妹にやった時も効果なかったし。
「ヴォルムは今のでときめいたの?」
「テュラが使う表現で言うならドキドキしましたよ」
「どきどき」
「文学的な表現なら、胸が高鳴る、でしょうか」
「詩人」
「ありがとうございます」
ヴォルムが羨ましくなる。いいなあと思いながら行儀悪く頬杖をついてヴォルムを見ていると「ディーナ様、手を」と言われ素直に片手を差し出した。
「俺はこうしてディーナ様の手に触れるだけでも嬉しいです」
「そうなの」
「今までは社交界のエスコートで王太子殿下の代わりを務めた時ぐらいしか触れることが出来なかったので」
後は拳振り上げた時に止めるぐらいかな?
「ディーナ様は身内に甘いので、俺を拒む事はないと分かっていますが、今こうして触れることが出来るのが嬉しいんです」
「そう」
乗せた手をヴォルムの親指が撫でる。少しくすぐったい。
ヴォルムはそのまま私の手を自身の口元へ持ってきて、そのまま唇を落とした。黒灰色の前髪が僅かに揺れる。
そのまま視線だけを私に向けた。青灰色の瞳の中に滲む緑色が輝く。今まで見たことのなかった。ずっと隠してきたのだと分かる。それと同じもので応えたいと思った。
「六年一緒にいたと思うんだけど」
「はい」
「どうして私を好きになったの? 外見?」
「ディーナ様の白金色の髪も、金色が走る緑色の瞳も好きですよ。ですが、決定的なのはもっと違う所です」
確かに初めてお会いした時は鮮烈な外見でした、と続ける。私の瞳は珍しいとよく言われるけどね。それにこの髪色で結構強いイメージを持たれやすい。
「んー、じゃあ身体?」
身体強化の魔法を使っているとはいえ、最低限鍛えている。とはいっても鍛えているほどムキムキにはなれなかった。あまり筋肉つかないらしく細いままだ。
「魅力的ですが、やはり違います」
少しだけ眦を上げて「その内話します」と笑った。
ほっとけないのも人たらしなのも超えてヴォルムは私への特別な想いがあると分かる。あ、今少し恋愛が分かった。特別にされて嬉しいというか、優越感的な? ちょっと違う?
「ディーナ様、明日は早いのでそろそろ戻りましょう」
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