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22話 口説き文句になってたね
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場所はサンルームを超えた庭。
今日も月が綺麗に出ていて、周囲もサリュもよく見える。
「お酒用意する?」
「いいえ」
通常運行塩対応ですねえ。
まあ突っ返されず、身につけてくれたネックレスから判断するに、割とデレてきてるとは思うのだけど。
これが最初ここに来た時だったら、そんなもの必要ありませんと返されていたんじゃないかな。そう思うと受け取ってくれたのは成長した証だ。
「お願いが、あります」
「なに?」
少しばかりの逡巡。
彷徨わせて、次に私を捕らえる。
サリュは大体話す時は目をしっかり見て話してくれるけど、その瞳から何を言いたいかは分かりにくい。
今回のお願いも言われるまでは分からなかった。
「私の瘴気を、浄化して頂けませんか」
「うん、いいよー」
サリュのご要望に即オッケーしたら、喜ばれず逆に眉間に皺寄せてきた。
「……主、即座にお応え頂くのは結構ですが、貴方の身体の負担になるのです。少しは考えて頂きたい」
逆にお説教きちゃったよ。なんでやねん。
いつでもウェルカムだったのに。
まあさておき、真面目な彼のこと、以前言われたことを実行する気なのかな。
遠征は一人で旅立ちを回避しつつミッション終了、次は瘴気をというとこだろう。
「大聖女様達の言ったこと気にしてる?」
「いいえ」
「そう」
「…………ただ、」
言いかけて口をつぐんだ。
言うのやめようとしたし。なんで勿体ぶるの。
「ただ?」
「……いえ、これは」
「言わなきゃやらない」
「主、大人げ」
「なくて結構だね!」
ぐぐっとサリュの喉が鳴る。次に溜息。
いやここは勿体振ったサリュにも問題ありでしょ。
最初から素振りなければ、私だってツッコまなかった。
「……主の精霊として、胸を張って隣に立ちたいのです」
「ん? 瘴気がなければ立てるってこと? 私はとっくにサリュが私の大事な精霊だって思ってるし、堂々と隣立ってくれてると思ってたけど?」
「主がそのように仰る方だと存じております。私は……何か形として欲しかった」
「形」
区切り的なイベントが欲しかったってことかな?
というよりも、すごい強烈なデレじゃない?
隣に立ちたいとか、え、なにそれ、私が思っていた以上に聖女という主人として認めてくれていたという……御先祖様、やりましたよ!
「戻るきっかけがほしい。それは主とでしか成し得ないと」
彼なりに考えた結果だろう。
そういう区切りを経て超えられるなら、私は全力で彼の助けになる。
だからサリュに笑顔を向けて応えた。
「いいよ、手出して」
「……」
両手を出して、その上に彼の手が乗せられる。
握るというよりは添えられた程度だけど、そこからすぐに瘴気を感じ、そのままこちらに取り込んでいく。
すぐだった。
「うん、いいね」
「……」
黒く濁る瘴気が消え、輝く金の瞳が戻ってきた。
見習いの時から気に入っていた色。
他の聖女達に控える水の精霊にはない、特別な瞳の色だ。
「やっぱり好きだなあ」
「え?」
「サリュの金の眼」
「ああ、眼、です、か」
ん? なんだ、どぎまぎしてるぞ。
何がどうした?
んん……あ、そうか。
「口説き文句になってたね」
「いえ、特別何かをもって仰ったわけではないと理解しています」
「折角だから、ときめき感じていいよ?」
急に畏まりすぎたあたり、これは動揺してるとみた。何気早口だし。
通常運行塩対応の割に、こういう不意打ちは苦手ですか、最高ですね。
今日はいつもより多くデレてる。
いや、私が訓練されてきたということ? 鋼メンタルになってきた?
脳内スタンディングオベーション拍手喝采の所に、サリュが冷静に温度低めに返してきて我に返る。
「私はそういう所が軽薄だと」
「えー、擬似体験いいじゃん」
「気持ちの所在がどうあれ、相手に失礼です」
「真面目ですねえ」
私、サリュに同じこと言われたら、ときめきに沈むよ?
御先祖様も言ってたけど、ツンデレのデレは尊さに世界が沈む。間違いない。
つまり、目の前のイケメンがデレにデレたら沈むわけだ。
おっと急な供給に耐えられるかな、私。
「……助かりました」
「うん」
うむ、完全に瘴気が消えて身なりも黒く淀んだものがないと、イケメンに磨きがかかる。見習い時代を思い出して感慨深い思いに至った。
にしても真面目だな、サリュは。律儀というのか。
「主、体調は?」
「大丈夫だよ」
「本当に?」
前回のことを気にしてるな。
あれは疲れが出ていた所に、一気に取り込んだのがよくなかっただけ。
今日はゆっくりやったからノープロブレムだ。
「本当だって。熱出さないよ」
「なら、よいのですが」
今回はサリュが協力的だった。
こちらに取り込みつつも、同時に浄化ができるぐらい余裕もあった。
だから今回は倒れることはないだろう。
「やっぱりお酒飲む?」
「最初にお断りしましたが」
「やること終わったじゃん」
「ならば、早く寝るべきです」
「お姑さん厳しい」
晩酌した時はこのぐらいの時間から始めたのに。
語り合いに応じるというデレをくれてもいいと思うの。
今ならデレくると、そう思っていたのに、この精霊は中々供給に応えてくれない。さすが。
今日も月が綺麗に出ていて、周囲もサリュもよく見える。
「お酒用意する?」
「いいえ」
通常運行塩対応ですねえ。
まあ突っ返されず、身につけてくれたネックレスから判断するに、割とデレてきてるとは思うのだけど。
これが最初ここに来た時だったら、そんなもの必要ありませんと返されていたんじゃないかな。そう思うと受け取ってくれたのは成長した証だ。
「お願いが、あります」
「なに?」
少しばかりの逡巡。
彷徨わせて、次に私を捕らえる。
サリュは大体話す時は目をしっかり見て話してくれるけど、その瞳から何を言いたいかは分かりにくい。
今回のお願いも言われるまでは分からなかった。
「私の瘴気を、浄化して頂けませんか」
「うん、いいよー」
サリュのご要望に即オッケーしたら、喜ばれず逆に眉間に皺寄せてきた。
「……主、即座にお応え頂くのは結構ですが、貴方の身体の負担になるのです。少しは考えて頂きたい」
逆にお説教きちゃったよ。なんでやねん。
いつでもウェルカムだったのに。
まあさておき、真面目な彼のこと、以前言われたことを実行する気なのかな。
遠征は一人で旅立ちを回避しつつミッション終了、次は瘴気をというとこだろう。
「大聖女様達の言ったこと気にしてる?」
「いいえ」
「そう」
「…………ただ、」
言いかけて口をつぐんだ。
言うのやめようとしたし。なんで勿体ぶるの。
「ただ?」
「……いえ、これは」
「言わなきゃやらない」
「主、大人げ」
「なくて結構だね!」
ぐぐっとサリュの喉が鳴る。次に溜息。
いやここは勿体振ったサリュにも問題ありでしょ。
最初から素振りなければ、私だってツッコまなかった。
「……主の精霊として、胸を張って隣に立ちたいのです」
「ん? 瘴気がなければ立てるってこと? 私はとっくにサリュが私の大事な精霊だって思ってるし、堂々と隣立ってくれてると思ってたけど?」
「主がそのように仰る方だと存じております。私は……何か形として欲しかった」
「形」
区切り的なイベントが欲しかったってことかな?
というよりも、すごい強烈なデレじゃない?
隣に立ちたいとか、え、なにそれ、私が思っていた以上に聖女という主人として認めてくれていたという……御先祖様、やりましたよ!
「戻るきっかけがほしい。それは主とでしか成し得ないと」
彼なりに考えた結果だろう。
そういう区切りを経て超えられるなら、私は全力で彼の助けになる。
だからサリュに笑顔を向けて応えた。
「いいよ、手出して」
「……」
両手を出して、その上に彼の手が乗せられる。
握るというよりは添えられた程度だけど、そこからすぐに瘴気を感じ、そのままこちらに取り込んでいく。
すぐだった。
「うん、いいね」
「……」
黒く濁る瘴気が消え、輝く金の瞳が戻ってきた。
見習いの時から気に入っていた色。
他の聖女達に控える水の精霊にはない、特別な瞳の色だ。
「やっぱり好きだなあ」
「え?」
「サリュの金の眼」
「ああ、眼、です、か」
ん? なんだ、どぎまぎしてるぞ。
何がどうした?
んん……あ、そうか。
「口説き文句になってたね」
「いえ、特別何かをもって仰ったわけではないと理解しています」
「折角だから、ときめき感じていいよ?」
急に畏まりすぎたあたり、これは動揺してるとみた。何気早口だし。
通常運行塩対応の割に、こういう不意打ちは苦手ですか、最高ですね。
今日はいつもより多くデレてる。
いや、私が訓練されてきたということ? 鋼メンタルになってきた?
脳内スタンディングオベーション拍手喝采の所に、サリュが冷静に温度低めに返してきて我に返る。
「私はそういう所が軽薄だと」
「えー、擬似体験いいじゃん」
「気持ちの所在がどうあれ、相手に失礼です」
「真面目ですねえ」
私、サリュに同じこと言われたら、ときめきに沈むよ?
御先祖様も言ってたけど、ツンデレのデレは尊さに世界が沈む。間違いない。
つまり、目の前のイケメンがデレにデレたら沈むわけだ。
おっと急な供給に耐えられるかな、私。
「……助かりました」
「うん」
うむ、完全に瘴気が消えて身なりも黒く淀んだものがないと、イケメンに磨きがかかる。見習い時代を思い出して感慨深い思いに至った。
にしても真面目だな、サリュは。律儀というのか。
「主、体調は?」
「大丈夫だよ」
「本当に?」
前回のことを気にしてるな。
あれは疲れが出ていた所に、一気に取り込んだのがよくなかっただけ。
今日はゆっくりやったからノープロブレムだ。
「本当だって。熱出さないよ」
「なら、よいのですが」
今回はサリュが協力的だった。
こちらに取り込みつつも、同時に浄化ができるぐらい余裕もあった。
だから今回は倒れることはないだろう。
「やっぱりお酒飲む?」
「最初にお断りしましたが」
「やること終わったじゃん」
「ならば、早く寝るべきです」
「お姑さん厳しい」
晩酌した時はこのぐらいの時間から始めたのに。
語り合いに応じるというデレをくれてもいいと思うの。
今ならデレくると、そう思っていたのに、この精霊は中々供給に応えてくれない。さすが。
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