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53話 ラストバトル、刀対剣
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大聖女が扉を閉めて、大広間に私と彼だけ。
相変わらず私の発言に、眉を寄せて訳の分からない事をと囁いている。
「それで私を斬るというのですか」
「斬らないよ。ほら刃がないでしょ」
彼に見えるようにシュリの刀を見せる。
こうなると、ただの鉄の棒みたいなものだ。
「やはり阻みますか」
「うん」
するりと金の剣が視界に入る。
サリュが構えた。
初めてだった。
いつだって手合わせを願い出ても、彼が私に対峙する事はなかったから。
ただの暴力を私に向ける事がなかったから。
「今回ばかりは譲れません」
「それはこっちの台詞」
「決裂ですね」
「だね」
それでも踏み出したのは私だった。
彼は構えているだけで、私の刀を受けるだけ。
「ねえ、死ぬ気?」
「どういう事ですか」
「次元を繋げる媒体になる気? もしくは跳ね返りを甘んじて受けるとか?」
「前者です」
やっぱり。
「きちんと復讐するの?」
「ええ。住めなくなったからという理由で、こちらの世界に勝手に侵入し蹂躙した者達を、元いた場所にかえすだけです」
「住めない頃に時間を戻して?」
「はい」
ご丁寧なものだなと思う。
かえすだけでもいいだろうに。
けど、そのままかえすだけなら、今の王族達の世界は、そこまでひどいものではないのだろう。
それを大聖女達はみえている。
より凄惨な時代に戻すことが、復讐として成り立つ。
そしてなにより、初めに戻すことで、自分達の再スタートとして見ているところもあるしな。
「鍵の夫である王族が見ていない転移者の記憶には、王族達の元いた世界がありました」
「見たの」
「鍵と夫の子達の記憶が教えてくれましたので」
まあつまるとこ世紀末を迎えた前の世界を捨てて、こちらの世界にやって来たのが王族達、復讐の対象だ。
それは私もギフトの御先祖様以外の記憶を辿れば、容易に見る事が出来た。
「全部見たんだよね?」
「ええ、ひどいものでした」
というか、全然私の刀捌きが通じないんだけど。
強化してるのに。
でも逆に油断してるなら、ちょっと変わったことするか。
「!」
「お、いい感じ」
やっぱり東方よりの国のものは対応しづらいのか。
参考にしていたシュリの刀の扱いを止めて、東の国の刀の流派全てを使い出すことにした。
「エクラは」
「ん?」
「体よく追放して、あわよくば魔との共倒れを狙う王族達に、一矢報いろうとは思わないのですか。怒りはないのですか」
魔が聖女と精霊が混じり合ったものなら、本来攻撃対象は大陸中央部に現存する王族達だ。
それをわざわざ外周に私達を配置して一掃しろなんて、結構ひどいことを命じてるなとは思う。
まあ、それはともかく、さすが東の国、刀捌きが通用するから、テンション上がるわ。
あれかな、そろそろ御先祖様が好きな漫画かアニメの必殺技出すべき? いやここはゲームの方?
さすがに雰囲気じゃないか。
「御先祖様の受けた苦しみを考えれば、報いた方がいいんだろうね」
「なら、」
「でもね、私はこの世界が好きなんだよ。一部にひどい人がいるのも知ってる。でも、その分いい人もたくさんいた。サリュも見たから分かるでしょ?」
御先祖様であるかつてのギフトと鍵が再会した二回目の邂逅時、鍵のあの子は生きることに前を向いた。
話を聞いた中には、その夫を含めた周囲の人物に恵まれたことは明らかで、幸せの中にいることがわかった。
その周囲の人々の半分以上は復讐の対象である王族と、その血を薄めた一族たちだったことはサリュだって分かっているはずだ。
「ただ異世界の人だからって、そのまま手放しで絶滅してしまえばいいと言うのは極論だよ」
「そんなもの、詭弁です」
後少しで刀捌きで押し勝てる気がするんだけど、中々隙を見せない。
んー、よし、心の中で必殺技を繰り出そう。
口にしたら怒られそうだしね。
雰囲気も非常にシリアスだしね。
「なんで私が聖女としての立場を甘んじて受け入れてるか、もう一度話そうか」
「え?」
どうして追放された身でありながら、この大陸を守るのか。
「今までは聖女として存在した方が、簡単に皆といられて楽だった。サリュと同じステージにいたし、会うことも出来た。聖女という立場がないと、会えない気がして見て見ぬ振りをずっと続けてた」
思えば臆病だった。
御先祖様なら、こうはいかないだろう。
御先祖様なら、ここぞとばかりに突っ込んで、色々取っ払って、新しいものを手に入れている。
だから私も、これを機に変わるとしよう。
「サリュと一緒に生きたい、から、私は聖女を止めるよ」
応えれば、瞳をふるわせて、浅く息をつく。
鍔迫り合いの中、掠れた返事が返ってきた。
「嘘、でしょう」
「は?」
「エクラが、そんなことを、考えるはずがない」
「はい?」
どういうこと。
こんな真面目に応えたのに。
サリュの真面目に合わせたのに。
戸惑うサリュを尻目に、ふつと何かが沸いて、ついで彼に合わせてきた真面目の糸が切れた。
これだけ頑張って応えた自分が阿呆らしくなってくる。
同時イラっとしてきた。
私の努力。真面目にした努力はなに!
「素直に頷いてなよ」
「え?」
「もうさー」
「何を」
分かってない、サリュってば全然分かってない!
「こんのおおお! こっちが大人しくシリアスに付き合って真面目に応えたつううのにいいい!」
「っ!」
「皆さんのお好きな必殺技をお入れ下さい! せーの! → 」
渾身の一撃が金の剣をはじき飛ばした。
相変わらず私の発言に、眉を寄せて訳の分からない事をと囁いている。
「それで私を斬るというのですか」
「斬らないよ。ほら刃がないでしょ」
彼に見えるようにシュリの刀を見せる。
こうなると、ただの鉄の棒みたいなものだ。
「やはり阻みますか」
「うん」
するりと金の剣が視界に入る。
サリュが構えた。
初めてだった。
いつだって手合わせを願い出ても、彼が私に対峙する事はなかったから。
ただの暴力を私に向ける事がなかったから。
「今回ばかりは譲れません」
「それはこっちの台詞」
「決裂ですね」
「だね」
それでも踏み出したのは私だった。
彼は構えているだけで、私の刀を受けるだけ。
「ねえ、死ぬ気?」
「どういう事ですか」
「次元を繋げる媒体になる気? もしくは跳ね返りを甘んじて受けるとか?」
「前者です」
やっぱり。
「きちんと復讐するの?」
「ええ。住めなくなったからという理由で、こちらの世界に勝手に侵入し蹂躙した者達を、元いた場所にかえすだけです」
「住めない頃に時間を戻して?」
「はい」
ご丁寧なものだなと思う。
かえすだけでもいいだろうに。
けど、そのままかえすだけなら、今の王族達の世界は、そこまでひどいものではないのだろう。
それを大聖女達はみえている。
より凄惨な時代に戻すことが、復讐として成り立つ。
そしてなにより、初めに戻すことで、自分達の再スタートとして見ているところもあるしな。
「鍵の夫である王族が見ていない転移者の記憶には、王族達の元いた世界がありました」
「見たの」
「鍵と夫の子達の記憶が教えてくれましたので」
まあつまるとこ世紀末を迎えた前の世界を捨てて、こちらの世界にやって来たのが王族達、復讐の対象だ。
それは私もギフトの御先祖様以外の記憶を辿れば、容易に見る事が出来た。
「全部見たんだよね?」
「ええ、ひどいものでした」
というか、全然私の刀捌きが通じないんだけど。
強化してるのに。
でも逆に油断してるなら、ちょっと変わったことするか。
「!」
「お、いい感じ」
やっぱり東方よりの国のものは対応しづらいのか。
参考にしていたシュリの刀の扱いを止めて、東の国の刀の流派全てを使い出すことにした。
「エクラは」
「ん?」
「体よく追放して、あわよくば魔との共倒れを狙う王族達に、一矢報いろうとは思わないのですか。怒りはないのですか」
魔が聖女と精霊が混じり合ったものなら、本来攻撃対象は大陸中央部に現存する王族達だ。
それをわざわざ外周に私達を配置して一掃しろなんて、結構ひどいことを命じてるなとは思う。
まあ、それはともかく、さすが東の国、刀捌きが通用するから、テンション上がるわ。
あれかな、そろそろ御先祖様が好きな漫画かアニメの必殺技出すべき? いやここはゲームの方?
さすがに雰囲気じゃないか。
「御先祖様の受けた苦しみを考えれば、報いた方がいいんだろうね」
「なら、」
「でもね、私はこの世界が好きなんだよ。一部にひどい人がいるのも知ってる。でも、その分いい人もたくさんいた。サリュも見たから分かるでしょ?」
御先祖様であるかつてのギフトと鍵が再会した二回目の邂逅時、鍵のあの子は生きることに前を向いた。
話を聞いた中には、その夫を含めた周囲の人物に恵まれたことは明らかで、幸せの中にいることがわかった。
その周囲の人々の半分以上は復讐の対象である王族と、その血を薄めた一族たちだったことはサリュだって分かっているはずだ。
「ただ異世界の人だからって、そのまま手放しで絶滅してしまえばいいと言うのは極論だよ」
「そんなもの、詭弁です」
後少しで刀捌きで押し勝てる気がするんだけど、中々隙を見せない。
んー、よし、心の中で必殺技を繰り出そう。
口にしたら怒られそうだしね。
雰囲気も非常にシリアスだしね。
「なんで私が聖女としての立場を甘んじて受け入れてるか、もう一度話そうか」
「え?」
どうして追放された身でありながら、この大陸を守るのか。
「今までは聖女として存在した方が、簡単に皆といられて楽だった。サリュと同じステージにいたし、会うことも出来た。聖女という立場がないと、会えない気がして見て見ぬ振りをずっと続けてた」
思えば臆病だった。
御先祖様なら、こうはいかないだろう。
御先祖様なら、ここぞとばかりに突っ込んで、色々取っ払って、新しいものを手に入れている。
だから私も、これを機に変わるとしよう。
「サリュと一緒に生きたい、から、私は聖女を止めるよ」
応えれば、瞳をふるわせて、浅く息をつく。
鍔迫り合いの中、掠れた返事が返ってきた。
「嘘、でしょう」
「は?」
「エクラが、そんなことを、考えるはずがない」
「はい?」
どういうこと。
こんな真面目に応えたのに。
サリュの真面目に合わせたのに。
戸惑うサリュを尻目に、ふつと何かが沸いて、ついで彼に合わせてきた真面目の糸が切れた。
これだけ頑張って応えた自分が阿呆らしくなってくる。
同時イラっとしてきた。
私の努力。真面目にした努力はなに!
「素直に頷いてなよ」
「え?」
「もうさー」
「何を」
分かってない、サリュってば全然分かってない!
「こんのおおお! こっちが大人しくシリアスに付き合って真面目に応えたつううのにいいい!」
「っ!」
「皆さんのお好きな必殺技をお入れ下さい! せーの! → 」
渾身の一撃が金の剣をはじき飛ばした。
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