17 / 55
17話 外伝推しカプ要の年
しおりを挟む
さらに四年後。
国際法が制定された。
細かく言うなら、国際法と位置付けられた各法律が全て定まり施行された、が正しい。
「ええと、慣習法が戦争前? で、平和維持法は、ん? どっち?」
「こちらを」
「あ、ありがと」
図書館で施行された全ての法律を網羅する勉強会を一人行う予定だった。のに、相変わらず当然のようにマーロン弟もといエールが一緒にいる。これまた様々な資料や新聞や文献を出してくれた。最近こうした私のアシストがうまい。助かるけど裏がありそうだなと思う。だってエールは死亡フラグだもの。
「皇帝を止められたら私いらなくない?」
「いいえ。国家連合設立がまだですよ」
「それは私抜きでできるでしょ」
「ほら、こちらを」
難しい本が積まれた。いやもうよくない?
皇帝が動いたらアウトなぐらい法律網羅したんだから、あとは時を待つだけじゃん。
「うっわ、判例集?」
「国際法が施行されたとはいえ、まだ目標には至っていません。予行練習だと思って判例から学びを深めましょう」
目標とは皇帝の失脚だ。あまり大っぴらにできないのでいつも濁して話している。
「あ、やば」
私とマーロン弟ことエールは窓際の席を陣取っている。そこからは図書館入り口がよく見えた。丁度会いたくない人間が入ってきて判例集で顔を隠す。
「いかがしました?」
「静かにしててください」
周囲を見つつ奥へ進んでいった。よし、後は近くに来た時だけ気を付けよう。
「……第一皇子ですか?」
「!」
取り巻きを引き連れた帝国第一皇子。
皇弟が息子のことを鑑みたのか第一皇子を入学させた。この男も私にとっては最たる死亡フラグの一人だ。結構馬鹿だからボロを出しやすい。小説でもべらべら喋ってたし。皇帝派である以上、巻き添えくらって死ぬわけにはいかない。離れておくにこしたことはないわね。
「彼が気になりますか?」
「……関わりたくないんです」
ふむと顎に手を添えている。もう片方の手にあった本を静かに机の上に戻した。
さすがにかつての夫とは関わらない方がいいだろう。物語の修正力がかなりききそうだし。
「分かりました」
「は? なにが?」
いいえ、と微笑むマーロン弟もといエール。
本当に子供らしくない表情と所作だ。
「まあいいや……ちょっと息抜き」
近場の新聞を手に取った。ゴシップはたまに役に立つから気晴らしがてら毎日読むことにしている。
ふむ。レースノワレ王国の王女殿下の専属護衛騎士はユースティーツィア・マーレ・ユラレ伯爵令嬢が有力と。グレース騎士学院演習での蛮族戦での活躍が評されて、か。おっと、一つ目の外伝五話間近なの?
「ねえ」
「いかがしました?」
「今って何年?」
「皇歴四百五十年です」
フィクタ十四歳、第一皇子レックスも十四歳、となると第二皇子ヴォックスは十三歳、ユースティーツィアも十三歳。
待った。
推しカプ、ヴォックスとユースティーツィアの重要な年! 王女専属騎士になったユースティーツィアにヴォックスが枯れない薔薇をプレゼントした年だ。この薔薇は後々役に立ってくれるから大事。
いや待って。仮に薔薇の件がうまくいっても先は大丈夫? やれる?
「騎士学院は問題ない。おじいちゃん皇帝は現役だけど……国際法制定の前座でレースノワレ王国が軍縮してる。第一皇子は皇帝に呼び出されていないから勅命での戦争はない。ヴォックスの騎士団長就任もまだだし……」
「?」
一見物語に影響なさそうだけど軍縮は気になる。皇帝が動けば国際法によって拘束できるからレースノワレ王国がなくなることはない。
待った。そもそも帝国による武力侵攻がなくなったらヴォックスとユースティーツィアの物語が始まらない。よき友人で終わるんじゃ……?
「進展する為のきっかけがないと……互いに好きあってるからそこはよしとして……ああやっぱり現状を把握しないとだめね。双子に探りをいれる? でも変な動きをして二人が死亡フラグ回収しても困るし……」
「……」
グレース騎士学院はここテンプスモーベリ総合学院と近い。同じ中立性を持っているし、いつもの会議のおかげで理事長同士顔合わせはできている。
中立性を持つようになって数年経った。
なにかイベントをしてもおかしくないのでは?
「よし」
「はい、どうぞ」
「ん……え、なにこれ」
「理事長に対しての嘆願書と提案書です。要望がある場合こちらを使うことが多いですよ」
「……はい?」
「独り言から判断しました。違いますか?」
違わないけど、どうなの? 最近甲斐甲斐しさが割り増しだとは思っていた。というより秘書かなにか? 私、社長? んー……まあいいか。
「ありがとう」
「はい」
結果、グレース騎士学院とテンプスモーベリ総合学院の交流会が催されることとなった。
なぜかいつもの会議で議決するはめになってイグニスやらマーロン兄に知られ、にこにこされたけどもう気にするのはやめた。死亡フラグ回収でなければなんでもいい。
国際法が制定された。
細かく言うなら、国際法と位置付けられた各法律が全て定まり施行された、が正しい。
「ええと、慣習法が戦争前? で、平和維持法は、ん? どっち?」
「こちらを」
「あ、ありがと」
図書館で施行された全ての法律を網羅する勉強会を一人行う予定だった。のに、相変わらず当然のようにマーロン弟もといエールが一緒にいる。これまた様々な資料や新聞や文献を出してくれた。最近こうした私のアシストがうまい。助かるけど裏がありそうだなと思う。だってエールは死亡フラグだもの。
「皇帝を止められたら私いらなくない?」
「いいえ。国家連合設立がまだですよ」
「それは私抜きでできるでしょ」
「ほら、こちらを」
難しい本が積まれた。いやもうよくない?
皇帝が動いたらアウトなぐらい法律網羅したんだから、あとは時を待つだけじゃん。
「うっわ、判例集?」
「国際法が施行されたとはいえ、まだ目標には至っていません。予行練習だと思って判例から学びを深めましょう」
目標とは皇帝の失脚だ。あまり大っぴらにできないのでいつも濁して話している。
「あ、やば」
私とマーロン弟ことエールは窓際の席を陣取っている。そこからは図書館入り口がよく見えた。丁度会いたくない人間が入ってきて判例集で顔を隠す。
「いかがしました?」
「静かにしててください」
周囲を見つつ奥へ進んでいった。よし、後は近くに来た時だけ気を付けよう。
「……第一皇子ですか?」
「!」
取り巻きを引き連れた帝国第一皇子。
皇弟が息子のことを鑑みたのか第一皇子を入学させた。この男も私にとっては最たる死亡フラグの一人だ。結構馬鹿だからボロを出しやすい。小説でもべらべら喋ってたし。皇帝派である以上、巻き添えくらって死ぬわけにはいかない。離れておくにこしたことはないわね。
「彼が気になりますか?」
「……関わりたくないんです」
ふむと顎に手を添えている。もう片方の手にあった本を静かに机の上に戻した。
さすがにかつての夫とは関わらない方がいいだろう。物語の修正力がかなりききそうだし。
「分かりました」
「は? なにが?」
いいえ、と微笑むマーロン弟もといエール。
本当に子供らしくない表情と所作だ。
「まあいいや……ちょっと息抜き」
近場の新聞を手に取った。ゴシップはたまに役に立つから気晴らしがてら毎日読むことにしている。
ふむ。レースノワレ王国の王女殿下の専属護衛騎士はユースティーツィア・マーレ・ユラレ伯爵令嬢が有力と。グレース騎士学院演習での蛮族戦での活躍が評されて、か。おっと、一つ目の外伝五話間近なの?
「ねえ」
「いかがしました?」
「今って何年?」
「皇歴四百五十年です」
フィクタ十四歳、第一皇子レックスも十四歳、となると第二皇子ヴォックスは十三歳、ユースティーツィアも十三歳。
待った。
推しカプ、ヴォックスとユースティーツィアの重要な年! 王女専属騎士になったユースティーツィアにヴォックスが枯れない薔薇をプレゼントした年だ。この薔薇は後々役に立ってくれるから大事。
いや待って。仮に薔薇の件がうまくいっても先は大丈夫? やれる?
「騎士学院は問題ない。おじいちゃん皇帝は現役だけど……国際法制定の前座でレースノワレ王国が軍縮してる。第一皇子は皇帝に呼び出されていないから勅命での戦争はない。ヴォックスの騎士団長就任もまだだし……」
「?」
一見物語に影響なさそうだけど軍縮は気になる。皇帝が動けば国際法によって拘束できるからレースノワレ王国がなくなることはない。
待った。そもそも帝国による武力侵攻がなくなったらヴォックスとユースティーツィアの物語が始まらない。よき友人で終わるんじゃ……?
「進展する為のきっかけがないと……互いに好きあってるからそこはよしとして……ああやっぱり現状を把握しないとだめね。双子に探りをいれる? でも変な動きをして二人が死亡フラグ回収しても困るし……」
「……」
グレース騎士学院はここテンプスモーベリ総合学院と近い。同じ中立性を持っているし、いつもの会議のおかげで理事長同士顔合わせはできている。
中立性を持つようになって数年経った。
なにかイベントをしてもおかしくないのでは?
「よし」
「はい、どうぞ」
「ん……え、なにこれ」
「理事長に対しての嘆願書と提案書です。要望がある場合こちらを使うことが多いですよ」
「……はい?」
「独り言から判断しました。違いますか?」
違わないけど、どうなの? 最近甲斐甲斐しさが割り増しだとは思っていた。というより秘書かなにか? 私、社長? んー……まあいいか。
「ありがとう」
「はい」
結果、グレース騎士学院とテンプスモーベリ総合学院の交流会が催されることとなった。
なぜかいつもの会議で議決するはめになってイグニスやらマーロン兄に知られ、にこにこされたけどもう気にするのはやめた。死亡フラグ回収でなければなんでもいい。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?
ぽんぽこ狸
恋愛
仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。
彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。
その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。
混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!
原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!
ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。
完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子
ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。
(その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!)
期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。
悪役令嬢と転生ヒロイン
みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」
鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。
そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。
乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。
乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。
ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。
その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。
この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。
改めて、鏡の中の姿を見る。
どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。
問題は、そこではない。
着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。
これはもしかして、小説版に転生?
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる