死亡フラグと修正力に抗う一周目悪役令嬢な私【元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女 外伝3】

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52話 ステラモリス公国にて

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「というわけで伺いました」
「話さなくても分かるよねみたいなのやめろ」
「時間なくて」

 夜中に出て日の出と共にステラモリス公国に着いた。ヒーロー・サクとヒロイン・クラスが早起きなのは本編もとい一周目通りなので、なんとか二人に会えてほっとする。

「お願いがあるんですって」
「東に逃がした後、東への国境線の入出国査定を厳しくすればいいんだろ」
「話分かってるの助かる」

 厳しくするどころか封鎖してほしいけど、そこまでは無理だろう。そこは東の国が了承しないと叶わない。

「挙句、イルミナルクスのみでしか東に行けないようにしろってか」
「最高。そうしてください」
「お前、自分が無茶言ってるの分かってんのかよ」
「けど、東との交易をイルミナルクス王国が独占できれば、そちら的には御の字でしょう」
「過度な利益搾取は他国の反発を買うだけだ。お前戦争起こしたいのかよ」

 それは絶対駄目。推しカプが少しでも平和にいちゃつける世界であってほしいので、そこは妥協しよう。イルミナルクスより南から東の国に出ようとする場合、地形の兼ね合いでかなり遠回りになるから、その点では逃げる時間は稼げるし妥協できる範囲内ね。問題はやっぱりイルミナルクスからの出入国かな。

「ふん……お前これでいいのかよ」

 なんだかんだ面倒見いいの本当癒し。
 けど今回の私の決意はかたいんだから。

「サクたん、私にとっての死亡フラグは他人にとっての死亡フラグになりえる、そう言いましたよね」
「おう」
「エールにとって私フィクタは最大の死亡フラグだったってことですよね。あの爆発だって私が受けて本来の世界線に戻る為に回収されるべきフラグでした」

 小説、ではなく一周目である本来の世界線が正しい道なら私は悪として死なないといけない。死ななくてすむようすごしていたし、実際ここで修正力が働いても一周目と完全な同じ道はないだろう。けど、私の死は逃げられない運命ということだ。ならせめて他を巻き込まないで死ぬ方法を選びたい。

「私が大切に思う人間の死亡フラグ回収はごめんです。悪役としては無理ですが、どこかでひっそりとなら私は」
「お前まだ勘違いしてんな」
「え?」
「この世界線はお前を軸にやり直された」

 私が? と首を傾げるとサクが不機嫌そうに眉を寄せた。

「お前が収容所で死ぬのは嫌だとやり直したから今がある。巡回者の言葉で例えるなら、この物語の主人公はお前だ」
「中二病ありがとうございます」
「はぐらかすな」

 分からないわけではない。この物語が本編に戻ることはないし、このまま未来は進んでいくだろう。それでも可能性として残る死亡フラグの回収を私にも私以外にも向けるわけにはいかない。

「なんだかんだ順調で気づかなかったんです。長くいすぎて情もできちゃったし、離れるなら今しかない。国家連合はとっくに問題ないとこにきてて、まあなんといいますか、私の役目は終えたと思ってます」
「役目なんてもんは鼻からねえよ」

 珍しく真っ直ぐ見られた。

「お前がどうしたいかだろ」
「サクたん……格好良すぎてやばい」
「誤魔化すなよ」

 笑ってさらに誤魔化してみた。

「お前が本当にやりたいことをしろ」
「うーん……」
「気持ちを誤魔化すな」

 痛いところついてくるなあ。でもサクは自分がやりたいことをして幸せを掴んだ。本編、というか一周目のフィクタだって自分を貫いた。今の、この世界線のフィクタは臆病ね。やっと完全なフィクタになったのに。
 すると本編、もとい一周目かつ本来のヒロインのクラスがあの、と声をかけてくれる。いいタイミング。さすがヒロイン。

「誰も死なないですよ?」
「?」

 見ればサクの手を握っていた。いいね、滾る。

「フィクタさんの大事な人が死なない未来がみえました」
「あれ、それってサクたんのスキル?」
「あ、分け合ってる内に私にもみえるようになったんです!」

 尊い。
 クラスもやっぱり聖女としての器だったというわけだ。眩しすぎて目開けないわ。

「クラス、こんな奴の為に力使わなくていい」
「ひどい! ありがとうございます!」

 でも通常運行でたまらん。そこが好き。クラス以外にはツンだけでデレがどこにもない。それを貫いているだけで幸せだ。
 うふふとにやにやしている私の背後でひどく静かな声が響いた。

「……ひどいのはどちらですか」
「!」

 うっわ、まずい。
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