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お祈りメールから始まる就活生のやけ酒
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居酒屋の喧騒の中、軽やかなメロディを奏でて、スマホが鳴る。見なくてもわかる。最悪だ。これは俺が超能力者だからというわけではない。
「徳明 和様 先日は弊社の面接にお越しいただきありがとうございます。誠に残念ながら今回は貴意に添いかねる結果となりました。貴殿の今後のご活躍をお祈り申し上げます」
今後のご活躍ってなんだ。天啓でも受けて、スーパーヒーローに変身し、地球でも救えっていうのか。俺はカウンターにジョッキを叩きつけて
「日本酒、熱燗で」
と不愛想に店員に告げた。もう四年の一月だ。周囲の皆は就職先が決まっている。幸いなことに卒論は終わっているが、しかしこのままではニート決定だ。運ばれてきた熱燗を猪口で一口飲むとアルコールを含んだ湯気が鼻を通り抜け、のどに染み渡る。
量販店でスタンダードなスーツを買い、靴やカバンを皆に合わせて揃え、何十枚とエントリーシートを書き、嫌になるような移動時間と馬鹿にならない交通費。それらの努力が無に帰したと思うとやるせなさがわいてくる。俺は現実から一瞬でも目を逸らすために味のしない酒を飲み続けた。
どれほど飲んだだろう。気が付くと公園のベンチで夜空を見ていた。星が一つ二つ霞んで見える程度の都会の空。酔いが回って冷たいはずの夜風も心地よい。明日からどうしたらいいのだろう。手持ちのカードは全て切ってしまった。また一からあの地獄に戻らねばならない。
「お兄さん、何してるの?」
ぼんやりと顔を上げると、声をかけてきたのは四十後半の恰幅のいいおっさんだった。無視してやろうと思ったが、その丸顔に人好きする笑みに押されてつい口を滑らせてしまった。
「就活で面接に落ちてやけ酒してるんですよ」
おっさんは隣のベンチに重そうに腰を下ろした。
「へぇ、やりたいことってなんだったの?」
おっさんの質問にぐっと詰まった。やりたいことなど無かった。ほどほどの給料で、適度に休みがあり、人に誇れる仕事であれば何でもよかったのだ。手に持ったカップ酒を一気に呷った。
「かっこいいことですよ」
嘘ではない。成績も学歴も平凡な俺もかっこいい自分というのを諦めきれなかった。
「ふーん、ねぇ君、何かスポーツやってた?タバコ吸う?」
「陸上やってましたよ、高校の頃は。タバコは吸いません。俺なんか何やったって中途半端で一つも良いものなんてありません。何の未来もありませんよ」
俺はこんなおっさんに何を言ってるんだろう。何が面白かったのかおっさんは笑みを深め、空を仰いだ。
「なるほどね、それでその酒は旨いかね?」
「全く。俺たち学生にしたら酔えれば何でもいいんですよ」
なんだってこんなおっさんに人生相談してるんだ、俺は。それよりリクルートサイトを見て、説明会に出席してそれから……
「よし、わかった。私は会社を経営していてね。寮完備、一日三食昼寝付きどうだね?」
(は?)
疑問符だけが頭に浮かんだ。泥酔した頭脳にドーパミンが溢れてパンク状態だった。そして、おっさんは最後にこう言った。
「最高に旨い酒を飲ませてやろう」
俺はこの出会いの幸運について心底感謝した。就活地獄から抜け出せる、それしか頭になかった。そのことをすぐに後悔することになるが、この夜を境に俺の人生は一変した。
「徳明 和様 先日は弊社の面接にお越しいただきありがとうございます。誠に残念ながら今回は貴意に添いかねる結果となりました。貴殿の今後のご活躍をお祈り申し上げます」
今後のご活躍ってなんだ。天啓でも受けて、スーパーヒーローに変身し、地球でも救えっていうのか。俺はカウンターにジョッキを叩きつけて
「日本酒、熱燗で」
と不愛想に店員に告げた。もう四年の一月だ。周囲の皆は就職先が決まっている。幸いなことに卒論は終わっているが、しかしこのままではニート決定だ。運ばれてきた熱燗を猪口で一口飲むとアルコールを含んだ湯気が鼻を通り抜け、のどに染み渡る。
量販店でスタンダードなスーツを買い、靴やカバンを皆に合わせて揃え、何十枚とエントリーシートを書き、嫌になるような移動時間と馬鹿にならない交通費。それらの努力が無に帰したと思うとやるせなさがわいてくる。俺は現実から一瞬でも目を逸らすために味のしない酒を飲み続けた。
どれほど飲んだだろう。気が付くと公園のベンチで夜空を見ていた。星が一つ二つ霞んで見える程度の都会の空。酔いが回って冷たいはずの夜風も心地よい。明日からどうしたらいいのだろう。手持ちのカードは全て切ってしまった。また一からあの地獄に戻らねばならない。
「お兄さん、何してるの?」
ぼんやりと顔を上げると、声をかけてきたのは四十後半の恰幅のいいおっさんだった。無視してやろうと思ったが、その丸顔に人好きする笑みに押されてつい口を滑らせてしまった。
「就活で面接に落ちてやけ酒してるんですよ」
おっさんは隣のベンチに重そうに腰を下ろした。
「へぇ、やりたいことってなんだったの?」
おっさんの質問にぐっと詰まった。やりたいことなど無かった。ほどほどの給料で、適度に休みがあり、人に誇れる仕事であれば何でもよかったのだ。手に持ったカップ酒を一気に呷った。
「かっこいいことですよ」
嘘ではない。成績も学歴も平凡な俺もかっこいい自分というのを諦めきれなかった。
「ふーん、ねぇ君、何かスポーツやってた?タバコ吸う?」
「陸上やってましたよ、高校の頃は。タバコは吸いません。俺なんか何やったって中途半端で一つも良いものなんてありません。何の未来もありませんよ」
俺はこんなおっさんに何を言ってるんだろう。何が面白かったのかおっさんは笑みを深め、空を仰いだ。
「なるほどね、それでその酒は旨いかね?」
「全く。俺たち学生にしたら酔えれば何でもいいんですよ」
なんだってこんなおっさんに人生相談してるんだ、俺は。それよりリクルートサイトを見て、説明会に出席してそれから……
「よし、わかった。私は会社を経営していてね。寮完備、一日三食昼寝付きどうだね?」
(は?)
疑問符だけが頭に浮かんだ。泥酔した頭脳にドーパミンが溢れてパンク状態だった。そして、おっさんは最後にこう言った。
「最高に旨い酒を飲ませてやろう」
俺はこの出会いの幸運について心底感謝した。就活地獄から抜け出せる、それしか頭になかった。そのことをすぐに後悔することになるが、この夜を境に俺の人生は一変した。
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