九十九神の世界線

時雨悟はち

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世界線の始まり

覇眼の主

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ザァー。

「はぁ…」

と僕はため息を漏らしていた。

「どうした?そんな顔して」

隣の席(ほんとに偶然)のともちゃんが聞いてきた。

「いや、最近雨ばっかりでさ…じめじめして嫌なんだ」と、半ばヤケになって言った。
「ほんと、こういう時期だと私たちも力出せなくて困るわ…」と隣にいた刀華さんが言った。
「そうなの?」
「ええ、神様はずうっと雨の時は力がセーブされるのよ。おかげで頭痛がひどくて…」

と、頭を抱えながら神妙な目つきで言った。嘘ではないらしい。

「それって…神様全員片頭痛持ちって事?」
「逆。片頭痛持ちの人は、ほんの少しでも神様のパワーがあるってことなの」

へ、へぇ~…。それ知ったら皆凄い反応しそうだな…。

「は~い席に着け。授業はじめっぞ~」

と数学担当の相刃唯築先生が言った、それと同時に皆が一斉に席に座り始めた。

「はいじゃあ今から数学を始めます」

言った直後。
バリィーン!と、けたましいまであるガラスの破壊音が廊下を駆け巡った。

「な、何?」

教室がざわつく。それを後押しするように、 「ギャァァァァー!た、たたたたた、助けてくれぇー!」と学年主任の断末魔が聞こえた。

教室は静まりかえる。皆が皆、状況を読み込めず、夢だと錯覚をおこしている。

「礼人、裏神よ」

後ろから聞こえた。

「う、裏神って…。早く行かなくちゃ!」

そして僕は音の元へとむかっていった。

「い、嫌だ…まだ、まだ死にたくない!」

辺りには消火器と鉄パイプ。きっと相当抵抗をしたのだろう。

「先生!」

側に駆け寄る。傷だらけなものの、治療すれば全然直る傷だった。

「つ、九十九くん!?こ、ここにきちゃダメだ!」
「何言ってんですか!先生がこんな状況なのに見捨てられる訳ないでしょう!」

そう言いながら応急処置をする。

「オマエ…ドケ。ジャナイトコロス。オマエトソイツヲ」

知性が…少しある?そんなことより…。

「終わりましたよ!さあ、逃げましょう!」

といい、一緒に行くふりをして、先生を逃げさせた。

「あなたには悪いけど…。倒させてもらうよ!」

そして、

「行くよ、刀華さん」

そして自分のお腹に突き刺す。模擬刀はみるみるうちに体に入っていき、そして刀華さんは僕の体に入っていった。
地面に五星陣を書き、

「式神術・創造結界」

辺りに広がる赤い結界。

「慈悲の間」

そして、僕と裏神の二人になった。

「行くよ…」

先制は裏神だった。黒い炎に包まれた拳は、僕の体を掠める。そのたび、少しずつダメージが重なっていく。

「っ!」

でも、僕は負けてられない。
少しずつ慣れていき刀で斬っていく。

「ウッ…コシャクナ…」

裏神はそう言い、こう訪ねた。

「オマエハ…オマエラハナゼタタカウ?ナンノタメダ?」

なぜ?

「どういう…事?」
「ワタシハ…タダマスターニミトメラレタカッタ。ダガマスターハミトメテクレナカッタ。ダカラワタシハタタカウ。ダガ、キサマハナゼタタカウノダ?」

「僕は…」

言葉が詰まった。何故戦うのか?それは分からない。でも…。

「人の…エゴ?。満足感ってやつのためかな?」

そう答えた。

「マン…ゾクカン?」

裏神は動揺していた。

「うん。誰かを守る。誰かを笑顔にする。誰かの命を掴む。理由はどうであれ、結局正義のヒーローをやってる人はそういうので満足感が得られるんだと思う。だから、そんなに大きくなくてもいい。ルールを守らなかったり、赤ちゃんが泣き止まなかったり。そんな状況で顔を見せる感情が大きいか小さいかなんだと思うな…」

心からの本心は、少し、自分を棚に上げすぎた気がした。

「ナルホド…ヤハリワタシハ…ワタシハヒーロー二ハナレナインダナ…」

そう言い、戦う気はないといった状況になった。

「それじゃあ、さよなら」

そして、魔方陣を描き。

「式神術・覇眼之終」

それは、完全に聞いたことなくて、でも、パッと頭に浮かんだ技だった。

「紅葉」

一閃だった。赤い線が、裏神の体を突き抜けていく。

ズリ…そしてゆっくりと体が二つに離れていく。そして程なく。裏神は消えていった。

「ふう…疲れた…」

と言いながら僕の体から出てきた。

「お、お疲れ様!刀華さん!」

「…まさか、____の持ち主だったなんて…」

と、何かを呟いた。

「どうかした?刀華さん」と聞いてみた。
「あ、ううん。ちょっと独り言。それより、授業戻ろ。もう始まってるし」と言って、時計を見る。
「あ!ほんとだ!急がないと!」

そう言い、走りながら教室にむかっていった。

礼人がひとりで駆け出す姿を尻目に、こんなことを考えた。

「礼人、なんであんなに力を出すことが出来たのかしら…」

そしてさっき言った事を思い出す。

「…そんなわけないわよね」

幻覚を見過ぎた。そう思い、礼人の後ろを追っていった。
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