19 / 22
19.
しおりを挟む
ーーお父様はごく稀に、時と場所を選ばずいきなり爆弾を落とす事がある。
いやまぁ、もうすぐ俺が10歳の誕生日を迎えるにあたり、クリスの時は家のホールを使ってダンスパーティが開かれたのに対して、ーー俺の場合準備が始まりつつある中、開かれる場所が王宮なあたり薄々嫌な予感はしていたのだけど。
「伝えるのが遅くなってしまったが、今度王宮で開かれるパーティで、……クレアが第一王子の婚約者だと発表する事が決まった」
突然俺の右隣に座るティメオから落とされた爆弾に、食後終わりの紅茶を飲んでゆっくりとしていた和やかな雰囲気が一瞬にして凍りついた。
「……お父様? 僕はそんな話聞いていなかったのですが」
驚きのあまり微動だにすることすらできなかった俺とは違い、なにかオーラを背負ったような気がしなくもないクリスが疑問を口にする。
「話題としては何年か前から上がっていたのだが、……決まったのは最近だからな」
そこまで言ってからティメオが俺の頭を撫ぜて、ワンクッションを挟んでから言葉を続ける。
「とは言え、……よくある偽の婚約だ。問題は何一つないから安心していい」
むしろメリットしかないという。
ティメオの話によれば、同程度の権力を持つ貴族同士での偽造婚約はよくあることらしい。
それでいいのか……。なんて思ってしまう事もなくはないが、例えば学院にいる間のいざこざを避けたり。
俺の場合、ーー学年が離れてしまうと兄妹でも中々会うことができないクリスとも、マティスの婚約者になればよく一緒に行動しているらしいから、それを利用して学院内でも気軽に会うことができるようになるらしい。所詮、王様権力という奴だ。
「それに関しては確かに魅力的ですが、……もしクレアが王家に、そのまま成り行きで強制されてしまう可能性があるのでは?」
なんて質問に対しても、その可能性はあり得ない。ティメオによってバッサリと切られた。
そもそもこの婚約自体が王から提案されたようで、それ故にクリュッグ家の方から婚約を破棄しても問題ないらしい。
「それなら、……仮にも相手は王家に連なる者なのだから、クレアがどう思うかに僕は一任します」
ーーそんな急に話を振ってこないでほしい。
あまりにも急すぎる展開に、表面上は何とかいつも通りを取り繕っているが大パニックだ。
そりゃだって、いきなり第一王子の婚約者になる事が決まったなんて言われてみろ? あまりにも酷すぎる運命の無慈悲さに、もはや嘆くしかない。
「……マティス様の婚約者?」
「クレアが嫌なのならば、……マティス様が学院を卒業するまでは流石にできないが、その後なら婚約破棄してもいい」
例え仮に相手が何か言ってきたとしても、ある意味王家同等の力を持つのだから。なんて事も付け足された。
だとすると猶予は今からマティスが卒業するまでーー学院は13歳からの5年制だーー約6年間。でも冷静に考えてみればその6年間の中に、俺の本来の目的である『乙女ゲームの悪役であるクレアノーラのバッドエンド回避』をしなくてはならないのだ。
攻略候補の人物に関わってしまっては意味がない……。いや、この場合むしろその方がいいのか?
だって一層の事関わってしまえば常に動向を確認できるし、何ならすぐにやばい感じの出来事を回避する事ができるかもしれない。
それにティメオが言ったメリットを考慮して考えると、……案外いい感じなのでは?
なんなら最悪婚約破棄してしまえるのだし、お互いがお互いをーーこの場合は立場だがーー利用し合うようなもの。それならば最後まで好きなようにその立場を使って立ち回ればいい話ではないだろうか。
「ええと、私は大丈夫です」
そんな下心を隠しながら言えば、本当に大丈夫なのか? 無理してはいないのか? なんてクリスが心配そうに聞いてくるのが本当申し訳ない……。
なにせ吹っ切れてしまった俺の心境は、まぁ学院を卒業するまでに何かあったとしても、すぐに破棄して逃げちゃえばいいよね。なんて心配する必要は一欠片もないものなのだから。
そうしてまたしても俺の楽観的な何とかなるだろう精神によって、あれよあれよと言う間に俺と第一王子の婚約が決まったのであった。
ちなみに、卒業後に婚約破棄する事前提の話である。
いやまぁ、もうすぐ俺が10歳の誕生日を迎えるにあたり、クリスの時は家のホールを使ってダンスパーティが開かれたのに対して、ーー俺の場合準備が始まりつつある中、開かれる場所が王宮なあたり薄々嫌な予感はしていたのだけど。
「伝えるのが遅くなってしまったが、今度王宮で開かれるパーティで、……クレアが第一王子の婚約者だと発表する事が決まった」
突然俺の右隣に座るティメオから落とされた爆弾に、食後終わりの紅茶を飲んでゆっくりとしていた和やかな雰囲気が一瞬にして凍りついた。
「……お父様? 僕はそんな話聞いていなかったのですが」
驚きのあまり微動だにすることすらできなかった俺とは違い、なにかオーラを背負ったような気がしなくもないクリスが疑問を口にする。
「話題としては何年か前から上がっていたのだが、……決まったのは最近だからな」
そこまで言ってからティメオが俺の頭を撫ぜて、ワンクッションを挟んでから言葉を続ける。
「とは言え、……よくある偽の婚約だ。問題は何一つないから安心していい」
むしろメリットしかないという。
ティメオの話によれば、同程度の権力を持つ貴族同士での偽造婚約はよくあることらしい。
それでいいのか……。なんて思ってしまう事もなくはないが、例えば学院にいる間のいざこざを避けたり。
俺の場合、ーー学年が離れてしまうと兄妹でも中々会うことができないクリスとも、マティスの婚約者になればよく一緒に行動しているらしいから、それを利用して学院内でも気軽に会うことができるようになるらしい。所詮、王様権力という奴だ。
「それに関しては確かに魅力的ですが、……もしクレアが王家に、そのまま成り行きで強制されてしまう可能性があるのでは?」
なんて質問に対しても、その可能性はあり得ない。ティメオによってバッサリと切られた。
そもそもこの婚約自体が王から提案されたようで、それ故にクリュッグ家の方から婚約を破棄しても問題ないらしい。
「それなら、……仮にも相手は王家に連なる者なのだから、クレアがどう思うかに僕は一任します」
ーーそんな急に話を振ってこないでほしい。
あまりにも急すぎる展開に、表面上は何とかいつも通りを取り繕っているが大パニックだ。
そりゃだって、いきなり第一王子の婚約者になる事が決まったなんて言われてみろ? あまりにも酷すぎる運命の無慈悲さに、もはや嘆くしかない。
「……マティス様の婚約者?」
「クレアが嫌なのならば、……マティス様が学院を卒業するまでは流石にできないが、その後なら婚約破棄してもいい」
例え仮に相手が何か言ってきたとしても、ある意味王家同等の力を持つのだから。なんて事も付け足された。
だとすると猶予は今からマティスが卒業するまでーー学院は13歳からの5年制だーー約6年間。でも冷静に考えてみればその6年間の中に、俺の本来の目的である『乙女ゲームの悪役であるクレアノーラのバッドエンド回避』をしなくてはならないのだ。
攻略候補の人物に関わってしまっては意味がない……。いや、この場合むしろその方がいいのか?
だって一層の事関わってしまえば常に動向を確認できるし、何ならすぐにやばい感じの出来事を回避する事ができるかもしれない。
それにティメオが言ったメリットを考慮して考えると、……案外いい感じなのでは?
なんなら最悪婚約破棄してしまえるのだし、お互いがお互いをーーこの場合は立場だがーー利用し合うようなもの。それならば最後まで好きなようにその立場を使って立ち回ればいい話ではないだろうか。
「ええと、私は大丈夫です」
そんな下心を隠しながら言えば、本当に大丈夫なのか? 無理してはいないのか? なんてクリスが心配そうに聞いてくるのが本当申し訳ない……。
なにせ吹っ切れてしまった俺の心境は、まぁ学院を卒業するまでに何かあったとしても、すぐに破棄して逃げちゃえばいいよね。なんて心配する必要は一欠片もないものなのだから。
そうしてまたしても俺の楽観的な何とかなるだろう精神によって、あれよあれよと言う間に俺と第一王子の婚約が決まったのであった。
ちなみに、卒業後に婚約破棄する事前提の話である。
20
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女性が少ない世界に転移しちゃったぁ!?
4036(シクミロ)
恋愛
男女比40:1の世界に転移した主人公
人のようで人ではなかった主人公が様々な人と触れ合い交流し、人になる話
温かい目で読んでいただけたら嬉しいですm(__)m
※わかりにくい話かもです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる