105 / 108
連載
160.女神エアをしばくよ
『風』の女神エアが塵となって消えた。それはもう呆気ないほどあっさりと。
「え……まさか、終わりですか?」
『ウ、ウータさんらしいやり方ですね。問答無用ですか……』
衝撃の光景を目の当たりにしたステラと和葉が、呆れたような感心したような声を漏らす。
二人が神殺しを目的するのは初めてのこと。
ウータが強いこと、特別であることは知っていたが、こうも簡単に決まってしまうと出来の悪いコメディを見たような気分になってしまう。
「まったく……聞いていた以上にお話ができないわねえ。もうちょっとトークを楽しもうとか思わないわけ?」
だが……まだ終わってはいなかった。
塵となったはずのエアの身体が再生していく。散り散りとなった肉体が再構成され、再び人型を形成する。
「あれ? まだ生きてたんだ」
「生きてたわよ。ごめんあそばせー……だって、私は風だもん」
エアが背中の羽を振るわせ、嗤笑するように口角を吊り上げて笑う。
「風、つまりは気体よ? 空気を塵になんてできるわけないじゃなーい?」
「ああ、なるほど。それはそうかもしれないねー」
「そうそう。自分の必殺技を無効化された気分は……」
「それじゃあ、こんな感じで」
「ひぎゃ……」
エアの身体を真っ赤な炎が包み込んだ。
ウータが放った『神の火』がクリーンヒットしたのである。
「ちょっと、だから話を……」
「『神の水』」
「うぴゃ」
火に焼かれてなお口を利くことができたエアであったが、今度は大量の水に押し潰される。
『水』の女神マリンから奪い取った権能が炸裂した。
「ちょ……だからいい加減に話を……」
「あ、しまった。これじゃあ消火しちゃっただけか。こっちはどうかな?」
「ふびゃっ!」
「『神の土』」
最後に放ったのは『土』の女神アースから奪ったばかりの力である。
虚空から流れ出した大量の土砂がアースを飲み込み、ガッチリと固めて球体となった。
「流石に効いたかな? それとも、まだ復活する?」
『たぶん、これは無効化できないと思いますよ』
横で見ていた和葉が引きつった声で言ってくる。
『これは賢者になった美湖さんから聞いた話ですけど、『火』と『水』、『風』と『土』、そして『光』と『闇』はそれぞれ相克します。それらの属性の魔法をぶつけ合えば、お互いを打ち消して消滅するんです』
「女神エアは『風』の属性……つまり、『土』は弱点であるということですね」
ステラも会話に加わってくる。
二人の話によると、エアは『土』の属性が苦手であるということ。
ならば……『神の土』は十分に効果があるはずだ。
「それじゃあ、これで終わりってことで。えーと、竜也達はどこに……?」
「ここにいるわよーん」
「うん?」
そこで現れた四つの人影。それらはウータにとってとても親しんだものだった。
「竜哉、千花、美湖……それに和葉?」
それは幼馴染である四人だった。
南雲竜哉、北川千花、東山美湖。そして後ろで幽霊のように浮かんでいる西宮和葉までいる。
「みんな……じゃないよね。この展開は」
「よーやく話を聞く気になったのねえ。待ちくたびれて首が落ちそうよ」
小馬鹿にしたような女言葉は竜哉の口から放たれた。
竜哉がウータの知らないうちに目覚めたのでなければ、話しているのは別人である。
「もしかして……みんなの身体を操っているのかな?」
「そのとーりよー。ぷぷっ、どんな気分かしら? 自分の大切な幼馴染の身体を弄ばれるのは」
「…………」
「悔しい? ねえ、悔しい? 私のことを殺したらこの子達も死んじゃうわよー?」
「……そもそも、どうして生きているのかな。『神の土』、効かなかったの?」
ウータが珍しく不機嫌そうに唇を尖らせて訊ねた。
すると、竜也の身体に乗り移ったエアがニンマリと意地悪そうに嘲笑する。
「私はねー、身体がいくつもあるのよ。自分の身体をいくつも切り分けて、色々な人間の身体に憑依して遊んでいるの。この四人の身体を操っているのはあくまでもその一部に過ぎないわ。仮にこの四人ごと私を殺したとしても、別にいる私を殺しつくすことはできないわ」
竜哉が……千花と美湖、和葉の肉体が大きく両手を広げる。
「「「「私は不死身の女神エア。六大女神の中でもっとも永遠に近い女。何物も私を殺めることはできない。私を滅することはできない。父である『闇』の女神も、母である『闇』の女神も。そして……それは異界より来る神であっても例外ではない!」」」」
「…………」
堂々たる宣言を受けたウータは無言。黙り込んだまま突っ立っている。
後ろでステラと和葉も言葉を失って立ちすくんでいた。
「さあ、どうするのかしらー? ダメもとで私を殺す?」
「大切な幼馴染も死んでしまうわね。カワイソー」
「覚悟を決めてこの子達を殺したとしても、私は死なない」
「無駄なことよねー。そ・れ・と・も……私達に殺されちゃう?」
四つの口が次々と耳障りな笑声を垂れ流し、無力な三人を嘲弄する。
彼らはこれからウータのことを殺そうとするだろう。反撃すれば、大切な幼馴染を傷つけることになってしまう。
「どうするの? どうするのー?」
「戦うの? 戦わないの?」
「殺すのー? それとも殺されるのー?」
「早く決めてくれる? 決められるかなー?」
「決められないのなら、私が決めて……」
「塵になーれ」
「あげ…………ぴょっ」
鬱陶しい言葉が消えた。強制的に停止させられた。
先ほどまであった場所にウータの姿がなくなっている。
「ちょっとウルサイかな。静かにしてよ」
ウータの姿は少し離れた場所……女神エアに憑依された四人がいた場所にあった。
さっきまでそこにいたはずの彼らの姿はない。
代わりに、抱えるほどの塵の山が四つほどできている。
「ウータさん……」
『…………』
その光景が意味するものを察して、ステラと和葉が唇を震わせた。
殺した。塵にした。
ウータが四人の幼馴染を塵にして殺してしまった。
「え……まさか、終わりですか?」
『ウ、ウータさんらしいやり方ですね。問答無用ですか……』
衝撃の光景を目の当たりにしたステラと和葉が、呆れたような感心したような声を漏らす。
二人が神殺しを目的するのは初めてのこと。
ウータが強いこと、特別であることは知っていたが、こうも簡単に決まってしまうと出来の悪いコメディを見たような気分になってしまう。
「まったく……聞いていた以上にお話ができないわねえ。もうちょっとトークを楽しもうとか思わないわけ?」
だが……まだ終わってはいなかった。
塵となったはずのエアの身体が再生していく。散り散りとなった肉体が再構成され、再び人型を形成する。
「あれ? まだ生きてたんだ」
「生きてたわよ。ごめんあそばせー……だって、私は風だもん」
エアが背中の羽を振るわせ、嗤笑するように口角を吊り上げて笑う。
「風、つまりは気体よ? 空気を塵になんてできるわけないじゃなーい?」
「ああ、なるほど。それはそうかもしれないねー」
「そうそう。自分の必殺技を無効化された気分は……」
「それじゃあ、こんな感じで」
「ひぎゃ……」
エアの身体を真っ赤な炎が包み込んだ。
ウータが放った『神の火』がクリーンヒットしたのである。
「ちょっと、だから話を……」
「『神の水』」
「うぴゃ」
火に焼かれてなお口を利くことができたエアであったが、今度は大量の水に押し潰される。
『水』の女神マリンから奪い取った権能が炸裂した。
「ちょ……だからいい加減に話を……」
「あ、しまった。これじゃあ消火しちゃっただけか。こっちはどうかな?」
「ふびゃっ!」
「『神の土』」
最後に放ったのは『土』の女神アースから奪ったばかりの力である。
虚空から流れ出した大量の土砂がアースを飲み込み、ガッチリと固めて球体となった。
「流石に効いたかな? それとも、まだ復活する?」
『たぶん、これは無効化できないと思いますよ』
横で見ていた和葉が引きつった声で言ってくる。
『これは賢者になった美湖さんから聞いた話ですけど、『火』と『水』、『風』と『土』、そして『光』と『闇』はそれぞれ相克します。それらの属性の魔法をぶつけ合えば、お互いを打ち消して消滅するんです』
「女神エアは『風』の属性……つまり、『土』は弱点であるということですね」
ステラも会話に加わってくる。
二人の話によると、エアは『土』の属性が苦手であるということ。
ならば……『神の土』は十分に効果があるはずだ。
「それじゃあ、これで終わりってことで。えーと、竜也達はどこに……?」
「ここにいるわよーん」
「うん?」
そこで現れた四つの人影。それらはウータにとってとても親しんだものだった。
「竜哉、千花、美湖……それに和葉?」
それは幼馴染である四人だった。
南雲竜哉、北川千花、東山美湖。そして後ろで幽霊のように浮かんでいる西宮和葉までいる。
「みんな……じゃないよね。この展開は」
「よーやく話を聞く気になったのねえ。待ちくたびれて首が落ちそうよ」
小馬鹿にしたような女言葉は竜哉の口から放たれた。
竜哉がウータの知らないうちに目覚めたのでなければ、話しているのは別人である。
「もしかして……みんなの身体を操っているのかな?」
「そのとーりよー。ぷぷっ、どんな気分かしら? 自分の大切な幼馴染の身体を弄ばれるのは」
「…………」
「悔しい? ねえ、悔しい? 私のことを殺したらこの子達も死んじゃうわよー?」
「……そもそも、どうして生きているのかな。『神の土』、効かなかったの?」
ウータが珍しく不機嫌そうに唇を尖らせて訊ねた。
すると、竜也の身体に乗り移ったエアがニンマリと意地悪そうに嘲笑する。
「私はねー、身体がいくつもあるのよ。自分の身体をいくつも切り分けて、色々な人間の身体に憑依して遊んでいるの。この四人の身体を操っているのはあくまでもその一部に過ぎないわ。仮にこの四人ごと私を殺したとしても、別にいる私を殺しつくすことはできないわ」
竜哉が……千花と美湖、和葉の肉体が大きく両手を広げる。
「「「「私は不死身の女神エア。六大女神の中でもっとも永遠に近い女。何物も私を殺めることはできない。私を滅することはできない。父である『闇』の女神も、母である『闇』の女神も。そして……それは異界より来る神であっても例外ではない!」」」」
「…………」
堂々たる宣言を受けたウータは無言。黙り込んだまま突っ立っている。
後ろでステラと和葉も言葉を失って立ちすくんでいた。
「さあ、どうするのかしらー? ダメもとで私を殺す?」
「大切な幼馴染も死んでしまうわね。カワイソー」
「覚悟を決めてこの子達を殺したとしても、私は死なない」
「無駄なことよねー。そ・れ・と・も……私達に殺されちゃう?」
四つの口が次々と耳障りな笑声を垂れ流し、無力な三人を嘲弄する。
彼らはこれからウータのことを殺そうとするだろう。反撃すれば、大切な幼馴染を傷つけることになってしまう。
「どうするの? どうするのー?」
「戦うの? 戦わないの?」
「殺すのー? それとも殺されるのー?」
「早く決めてくれる? 決められるかなー?」
「決められないのなら、私が決めて……」
「塵になーれ」
「あげ…………ぴょっ」
鬱陶しい言葉が消えた。強制的に停止させられた。
先ほどまであった場所にウータの姿がなくなっている。
「ちょっとウルサイかな。静かにしてよ」
ウータの姿は少し離れた場所……女神エアに憑依された四人がいた場所にあった。
さっきまでそこにいたはずの彼らの姿はない。
代わりに、抱えるほどの塵の山が四つほどできている。
「ウータさん……」
『…………』
その光景が意味するものを察して、ステラと和葉が唇を震わせた。
殺した。塵にした。
ウータが四人の幼馴染を塵にして殺してしまった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。