俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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第2章 帝国騒乱 編

4.王国側も歴史は動く

 ランペルージ王国、王宮にて。
 その日、王宮ではとある式典が開かれていた。

 王宮の中央にある「玉座の間」には、国中から貴族が集まってきていた。
    貴族達は絨毯が敷かれた中央の道を挟んで左右に跪き、前方の玉座に向けて頭を下げている。
    その様子を、俺は椅子に座ったまま眺めていた。

「これだけの貴族が集まると、なかなか壮観だな。戦場の光景とはまた違う絶景だ」

 ここにいる人間は全員、領地と領民を与えられた国の有力者である。それらがそろって一堂に会しているのを目にするのは、なかなか貴重な体験である。

 玉座の四方には、玉座を囲むようにして四つの椅子が置かれている。そのうちの一つ、「東」の椅子へと俺は腰掛けていた。

 ランペルージ王国はもともと、ランペルージ同盟という中央と東西南北の4つの貴族による対等な同盟関係を前身としている。
 その名残は同盟が併合して王国と名前を変えた今でも引き継がれている。
    こうした式典の際には、「四方四家」の四つの辺境伯家だけは他の貴族のように跪くことはなく、王の周りに着座することを許されていた。

 玉座は空席となっているが、四つの椅子にはそれぞれ東西南北の辺境伯家の代表者が座っている。
 ちなみに、それら「四方四家」の代表者は四つとも現当主ではなく、次期当主が参加している。

「ん?」

「~~~♪」

「南」の椅子に座っている女が、俺の方を振り向いてヒラヒラと手を振っている。
 胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスを着た女性の名前は、エキドナ・サンダーバード。南方辺境伯家サンダーバード家の次期当主であり、俺と同い年の18歳である。
 顔に隙間なく化粧をして、爪まで赤く塗った出で立ちは、10代とは思えないほどに艶があった。

「ちっ・・・」

 エキドナとは学園に入る前からのつき合いなのだが・・・正直、あまり彼女との思い出を語りたくはない。

(セットで嫌な奴まで思い出しちまうからな・・・あー、鬱陶しい)

 ぞんざいに手を振り返してエキドナから視線を逸らし、他の椅子へと視線を向ける。

「・・・・・・」

「北」の椅子に座っているのは、男物の黒い軍服をまとい、鞘に納めた剣を杖のように床に立てた女である。
 彼女の名前はシャロン・ウトガルド。北方辺境伯ウトガルド家の次期当主である。国境警備の山岳部隊「山犬」の隊長もしており、女だてらに前線で剣を振り回す女傑であった。
 顔立ちは美しく整っているものの、滲み出る迫力が勝っているため、男に邪念を抱かせないタイプの女性である。
 今も眼光鋭く貴族達を睨みつけて、式典が始まるのをじっと待ち続けている。

 最後の一つ「西」の椅子に座っているのは、白い礼服を着た色黒の青年である。西方辺境伯スフィンクス家の次期当主、バロン・スフィンクス。学園に通っていた頃の一つ上の先輩である。
 俺の視線に気づいてこちらを見たバロンは、俺と目が合うやいなや、

「う~~~~~っ!」

 縄張りを荒らされた狼のように牙を剥いて、こちらを激しく睨みつけてくる。

(ん? 俺、あの人に何かしたっけか?)

 同じ学園に通ってはいたものの、俺とバロンは挨拶以上の会話をしたことはない。特に恨まれる覚えはないのだが・・・。

(そういえば、王宮の武術大会で何度か戦ったな? あの後、あいつの妹さんとも少し話して、誕生日が近いって言ってたからプレゼントを贈ってあげて・・・うん、本当に恨まれる心当たりがないな)

プオオオオオオ~~~~~

 そんなことを考えて内心で首を傾げていると、玉座の間にラッパの音が響きわたった。

「王太子殿下の御成である!」

 中央貴族筆頭であるロサイス公爵が、玉座の横へと進み出て宣言する。正面の扉が左右へと開かれた。
 中央の道を挟むようにして跪いた貴族達が、改めて顔を伏せる。俺と、他の3人の辺境伯家の代表者も、椅子から立ち上がる。

 開かれた扉から、12歳になったばかりの少年が入ってきた。左右に侍従を引き連れて、貴族達の間を闊歩してくる。

 茶色の髪を短くそろえた容姿は、国王である父とも、兄であるサリヴァンとも似てはいない。サリヴァンは切れ長の貴公子のような顔立ちであったが、目の前の少年は穏やかで優しげな顔立ちをしている。

(母親似なのかね。国王の実子じゃないなんて噂があるけど・・・どうかな)

 彼こそが、今回の式典の主役である王国第二王子にして現・王太子であるスレイ・ランペルージだった。

「それでは、これよりスレイ・ランペルージ王太子殿下の戴冠式を執り行う!」

 王国の歴史が、新たな1ページを刻もうとしている。
 それを肌で感じながら、俺は再び椅子へと腰を下ろした。
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