20 / 317
第2章 帝国騒乱 編
4.王国側も歴史は動く
ランペルージ王国、王宮にて。
その日、王宮ではとある式典が開かれていた。
王宮の中央にある「玉座の間」には、国中から貴族が集まってきていた。
貴族達は絨毯が敷かれた中央の道を挟んで左右に跪き、前方の玉座に向けて頭を下げている。
その様子を、俺は椅子に座ったまま眺めていた。
「これだけの貴族が集まると、なかなか壮観だな。戦場の光景とはまた違う絶景だ」
ここにいる人間は全員、領地と領民を与えられた国の有力者である。それらがそろって一堂に会しているのを目にするのは、なかなか貴重な体験である。
玉座の四方には、玉座を囲むようにして四つの椅子が置かれている。そのうちの一つ、「東」の椅子へと俺は腰掛けていた。
ランペルージ王国はもともと、ランペルージ同盟という中央と東西南北の4つの貴族による対等な同盟関係を前身としている。
その名残は同盟が併合して王国と名前を変えた今でも引き継がれている。
こうした式典の際には、「四方四家」の四つの辺境伯家だけは他の貴族のように跪くことはなく、王の周りに着座することを許されていた。
玉座は空席となっているが、四つの椅子にはそれぞれ東西南北の辺境伯家の代表者が座っている。
ちなみに、それら「四方四家」の代表者は四つとも現当主ではなく、次期当主が参加している。
「ん?」
「~~~♪」
「南」の椅子に座っている女が、俺の方を振り向いてヒラヒラと手を振っている。
胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスを着た女性の名前は、エキドナ・サンダーバード。南方辺境伯家サンダーバード家の次期当主であり、俺と同い年の18歳である。
顔に隙間なく化粧をして、爪まで赤く塗った出で立ちは、10代とは思えないほどに艶があった。
「ちっ・・・」
エキドナとは学園に入る前からのつき合いなのだが・・・正直、あまり彼女との思い出を語りたくはない。
(セットで嫌な奴まで思い出しちまうからな・・・あー、鬱陶しい)
ぞんざいに手を振り返してエキドナから視線を逸らし、他の椅子へと視線を向ける。
「・・・・・・」
「北」の椅子に座っているのは、男物の黒い軍服をまとい、鞘に納めた剣を杖のように床に立てた女である。
彼女の名前はシャロン・ウトガルド。北方辺境伯ウトガルド家の次期当主である。国境警備の山岳部隊「山犬」の隊長もしており、女だてらに前線で剣を振り回す女傑であった。
顔立ちは美しく整っているものの、滲み出る迫力が勝っているため、男に邪念を抱かせないタイプの女性である。
今も眼光鋭く貴族達を睨みつけて、式典が始まるのをじっと待ち続けている。
最後の一つ「西」の椅子に座っているのは、白い礼服を着た色黒の青年である。西方辺境伯スフィンクス家の次期当主、バロン・スフィンクス。学園に通っていた頃の一つ上の先輩である。
俺の視線に気づいてこちらを見たバロンは、俺と目が合うやいなや、
「う~~~~~っ!」
縄張りを荒らされた狼のように牙を剥いて、こちらを激しく睨みつけてくる。
(ん? 俺、あの人に何かしたっけか?)
同じ学園に通ってはいたものの、俺とバロンは挨拶以上の会話をしたことはない。特に恨まれる覚えはないのだが・・・。
(そういえば、王宮の武術大会で何度か戦ったな? あの後、あいつの妹さんとも少し話して、誕生日が近いって言ってたからプレゼントを贈ってあげて・・・うん、本当に恨まれる心当たりがないな)
プオオオオオオ~~~~~
そんなことを考えて内心で首を傾げていると、玉座の間にラッパの音が響きわたった。
「王太子殿下の御成である!」
中央貴族筆頭であるロサイス公爵が、玉座の横へと進み出て宣言する。正面の扉が左右へと開かれた。
中央の道を挟むようにして跪いた貴族達が、改めて顔を伏せる。俺と、他の3人の辺境伯家の代表者も、椅子から立ち上がる。
開かれた扉から、12歳になったばかりの少年が入ってきた。左右に侍従を引き連れて、貴族達の間を闊歩してくる。
茶色の髪を短くそろえた容姿は、国王である父とも、兄であるサリヴァンとも似てはいない。サリヴァンは切れ長の貴公子のような顔立ちであったが、目の前の少年は穏やかで優しげな顔立ちをしている。
(母親似なのかね。国王の実子じゃないなんて噂があるけど・・・どうかな)
彼こそが、今回の式典の主役である王国第二王子にして現・王太子であるスレイ・ランペルージだった。
「それでは、これよりスレイ・ランペルージ王太子殿下の戴冠式を執り行う!」
王国の歴史が、新たな1ページを刻もうとしている。
それを肌で感じながら、俺は再び椅子へと腰を下ろした。
その日、王宮ではとある式典が開かれていた。
王宮の中央にある「玉座の間」には、国中から貴族が集まってきていた。
貴族達は絨毯が敷かれた中央の道を挟んで左右に跪き、前方の玉座に向けて頭を下げている。
その様子を、俺は椅子に座ったまま眺めていた。
「これだけの貴族が集まると、なかなか壮観だな。戦場の光景とはまた違う絶景だ」
ここにいる人間は全員、領地と領民を与えられた国の有力者である。それらがそろって一堂に会しているのを目にするのは、なかなか貴重な体験である。
玉座の四方には、玉座を囲むようにして四つの椅子が置かれている。そのうちの一つ、「東」の椅子へと俺は腰掛けていた。
ランペルージ王国はもともと、ランペルージ同盟という中央と東西南北の4つの貴族による対等な同盟関係を前身としている。
その名残は同盟が併合して王国と名前を変えた今でも引き継がれている。
こうした式典の際には、「四方四家」の四つの辺境伯家だけは他の貴族のように跪くことはなく、王の周りに着座することを許されていた。
玉座は空席となっているが、四つの椅子にはそれぞれ東西南北の辺境伯家の代表者が座っている。
ちなみに、それら「四方四家」の代表者は四つとも現当主ではなく、次期当主が参加している。
「ん?」
「~~~♪」
「南」の椅子に座っている女が、俺の方を振り向いてヒラヒラと手を振っている。
胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスを着た女性の名前は、エキドナ・サンダーバード。南方辺境伯家サンダーバード家の次期当主であり、俺と同い年の18歳である。
顔に隙間なく化粧をして、爪まで赤く塗った出で立ちは、10代とは思えないほどに艶があった。
「ちっ・・・」
エキドナとは学園に入る前からのつき合いなのだが・・・正直、あまり彼女との思い出を語りたくはない。
(セットで嫌な奴まで思い出しちまうからな・・・あー、鬱陶しい)
ぞんざいに手を振り返してエキドナから視線を逸らし、他の椅子へと視線を向ける。
「・・・・・・」
「北」の椅子に座っているのは、男物の黒い軍服をまとい、鞘に納めた剣を杖のように床に立てた女である。
彼女の名前はシャロン・ウトガルド。北方辺境伯ウトガルド家の次期当主である。国境警備の山岳部隊「山犬」の隊長もしており、女だてらに前線で剣を振り回す女傑であった。
顔立ちは美しく整っているものの、滲み出る迫力が勝っているため、男に邪念を抱かせないタイプの女性である。
今も眼光鋭く貴族達を睨みつけて、式典が始まるのをじっと待ち続けている。
最後の一つ「西」の椅子に座っているのは、白い礼服を着た色黒の青年である。西方辺境伯スフィンクス家の次期当主、バロン・スフィンクス。学園に通っていた頃の一つ上の先輩である。
俺の視線に気づいてこちらを見たバロンは、俺と目が合うやいなや、
「う~~~~~っ!」
縄張りを荒らされた狼のように牙を剥いて、こちらを激しく睨みつけてくる。
(ん? 俺、あの人に何かしたっけか?)
同じ学園に通ってはいたものの、俺とバロンは挨拶以上の会話をしたことはない。特に恨まれる覚えはないのだが・・・。
(そういえば、王宮の武術大会で何度か戦ったな? あの後、あいつの妹さんとも少し話して、誕生日が近いって言ってたからプレゼントを贈ってあげて・・・うん、本当に恨まれる心当たりがないな)
プオオオオオオ~~~~~
そんなことを考えて内心で首を傾げていると、玉座の間にラッパの音が響きわたった。
「王太子殿下の御成である!」
中央貴族筆頭であるロサイス公爵が、玉座の横へと進み出て宣言する。正面の扉が左右へと開かれた。
中央の道を挟むようにして跪いた貴族達が、改めて顔を伏せる。俺と、他の3人の辺境伯家の代表者も、椅子から立ち上がる。
開かれた扉から、12歳になったばかりの少年が入ってきた。左右に侍従を引き連れて、貴族達の間を闊歩してくる。
茶色の髪を短くそろえた容姿は、国王である父とも、兄であるサリヴァンとも似てはいない。サリヴァンは切れ長の貴公子のような顔立ちであったが、目の前の少年は穏やかで優しげな顔立ちをしている。
(母親似なのかね。国王の実子じゃないなんて噂があるけど・・・どうかな)
彼こそが、今回の式典の主役である王国第二王子にして現・王太子であるスレイ・ランペルージだった。
「それでは、これよりスレイ・ランペルージ王太子殿下の戴冠式を執り行う!」
王国の歴史が、新たな1ページを刻もうとしている。
それを肌で感じながら、俺は再び椅子へと腰を下ろした。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!