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第2章 帝国騒乱 編
25.決戦前夜。堕ちた知将
side スノウ・ハルファス
「ようやく、ここまで来ましたね」
私はマクスウェル辺境伯家の最大の要所、ブリテン要塞を見上げてしみじみとつぶやいた。
ブリテン要塞は正方形の要塞である。西側は険しい山があって大軍を配置することはできないため、攻め込むことができるのは北、東、南の三方向である。
すでに帝国軍による要塞の包囲は終わっている。
帝国軍のうち、東側の壁を第1軍団、北側の壁を第2軍団、南側の壁を近衛騎士団が攻め込むことになっている。集まった義勇兵は各軍団に分けられて組み込まれている。
3つの軍団はそれぞれ指揮系統が異なり、トップも親しい仲であるとはとても言えない。名目上の総大将はラーズ第1皇子がついているが、それを決めるときにもずいぶんと揉めたものである。
最初から協力することは考えずに、それぞれが自分達の持ち場を攻めることだけを考えるべきだろう。
「ここが、兄さんが死んだ場所・・・そして、私にとっての全ての始まりの地」
かつて、私の兄のアイス・ハルファスがブリテン要塞を攻めようとして、野戦でディートリッヒ・マクスウェル率いる軍勢によって討ち取られた。そこから、私の復讐は始まった。
「私は必ずやり遂げて見せます。貴方の仇を討って、マクスウェル家を滅ぼす。必ず、兄さんを超えて見せる・・・!」
第1軍団が誇る「双翼」の左、知将アイス・ハルファスは私にとって誇りであるとともに、目指すべき目標だった。
5年前、兄を失って私は人生の目的を見失ってしまった。
最初のうちは兄の志を継いでラーズ第1皇子を皇帝にしようと思っていた。しかし、暴走して失態を重ねるラーズを見ているうちに、徐々にその考えは変わっていった。
(こんな無能を逃がすために兄は死んだというのですか!? ハルファス家はこんな男のために敗戦の責を背負わされたと!?)
5年前の敗戦は全てアイス・ハルファスの責任であるとみなされていた。目立って処分が与えられたわけではないが、騎士団の中で私は随分と肩身の狭い思いをすることになった。
兄を失った悲しみ。不名誉を背負わされたことへの憎しみ。それは次第にラーズに向くようになり、あの無能な皇子はマクスウェルと同じく兄の仇であると思うようになった。
(まずはブリテン要塞を落として、マクスウェル家を滅ぼす。その後は・・・)
ラーズ・バアルを殺して、グリード第2皇子を皇帝にする。
そして、自分はグリードの側近として全ての不名誉を払拭して、騎士団の頂点に立つのだ。
知将と呼ばれた兄でさえ、第1軍団では英雄ベイオーク・ザガンの上に立つことは出来なかった。兄を越えるためには、騎士団の頂点に立ってザガンを凌ぐ地位に付かなければならない。
(そうして、初めて私は兄を越えることができる・・・!)
私は改めて決意を固めて、要塞を見上げる。
すでに時間は夕刻を過ぎており、空には宵の明星が輝いている。現在は要塞に降伏勧告の使者を送り、その返事を待っている状態だ。
当然、あのマクスウェルが降伏などするわけがない。使者は帰ってこないだろう。
「・・・開戦は夜明けになりますね。そこから私の栄光が始まる!」
帝国軍は総勢三万。相手は五千。いかに難攻不落の要塞とはいえ、負けるわけがない。
兄を喪ったこの場所から、栄光の人生を始めるのだ!
「絶対に勝つ! 私が帝国軍を勝たせてやる!」
私は決意を込めて、夜空に向けて誓いを立てる。
これからたて続けに起こる、予想外の事態に気がつかないまま。
「ようやく、ここまで来ましたね」
私はマクスウェル辺境伯家の最大の要所、ブリテン要塞を見上げてしみじみとつぶやいた。
ブリテン要塞は正方形の要塞である。西側は険しい山があって大軍を配置することはできないため、攻め込むことができるのは北、東、南の三方向である。
すでに帝国軍による要塞の包囲は終わっている。
帝国軍のうち、東側の壁を第1軍団、北側の壁を第2軍団、南側の壁を近衛騎士団が攻め込むことになっている。集まった義勇兵は各軍団に分けられて組み込まれている。
3つの軍団はそれぞれ指揮系統が異なり、トップも親しい仲であるとはとても言えない。名目上の総大将はラーズ第1皇子がついているが、それを決めるときにもずいぶんと揉めたものである。
最初から協力することは考えずに、それぞれが自分達の持ち場を攻めることだけを考えるべきだろう。
「ここが、兄さんが死んだ場所・・・そして、私にとっての全ての始まりの地」
かつて、私の兄のアイス・ハルファスがブリテン要塞を攻めようとして、野戦でディートリッヒ・マクスウェル率いる軍勢によって討ち取られた。そこから、私の復讐は始まった。
「私は必ずやり遂げて見せます。貴方の仇を討って、マクスウェル家を滅ぼす。必ず、兄さんを超えて見せる・・・!」
第1軍団が誇る「双翼」の左、知将アイス・ハルファスは私にとって誇りであるとともに、目指すべき目標だった。
5年前、兄を失って私は人生の目的を見失ってしまった。
最初のうちは兄の志を継いでラーズ第1皇子を皇帝にしようと思っていた。しかし、暴走して失態を重ねるラーズを見ているうちに、徐々にその考えは変わっていった。
(こんな無能を逃がすために兄は死んだというのですか!? ハルファス家はこんな男のために敗戦の責を背負わされたと!?)
5年前の敗戦は全てアイス・ハルファスの責任であるとみなされていた。目立って処分が与えられたわけではないが、騎士団の中で私は随分と肩身の狭い思いをすることになった。
兄を失った悲しみ。不名誉を背負わされたことへの憎しみ。それは次第にラーズに向くようになり、あの無能な皇子はマクスウェルと同じく兄の仇であると思うようになった。
(まずはブリテン要塞を落として、マクスウェル家を滅ぼす。その後は・・・)
ラーズ・バアルを殺して、グリード第2皇子を皇帝にする。
そして、自分はグリードの側近として全ての不名誉を払拭して、騎士団の頂点に立つのだ。
知将と呼ばれた兄でさえ、第1軍団では英雄ベイオーク・ザガンの上に立つことは出来なかった。兄を越えるためには、騎士団の頂点に立ってザガンを凌ぐ地位に付かなければならない。
(そうして、初めて私は兄を越えることができる・・・!)
私は改めて決意を固めて、要塞を見上げる。
すでに時間は夕刻を過ぎており、空には宵の明星が輝いている。現在は要塞に降伏勧告の使者を送り、その返事を待っている状態だ。
当然、あのマクスウェルが降伏などするわけがない。使者は帰ってこないだろう。
「・・・開戦は夜明けになりますね。そこから私の栄光が始まる!」
帝国軍は総勢三万。相手は五千。いかに難攻不落の要塞とはいえ、負けるわけがない。
兄を喪ったこの場所から、栄光の人生を始めるのだ!
「絶対に勝つ! 私が帝国軍を勝たせてやる!」
私は決意を込めて、夜空に向けて誓いを立てる。
これからたて続けに起こる、予想外の事態に気がつかないまま。
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