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第2章 帝国騒乱 編
58.最後の守護者
「な、どうして貴様が・・・へぶっ!」
「邪魔だ、どけっ!」
窓から最上階へと侵入した俺は、全力疾走でルクセリアへと駆け寄った。
進行方向上にいたグリードを踏みつけて足場にして、そのままの勢いでルクセリアの傍にいるメイド型ゴーレムへと飛び蹴りを喰らわす。
「敵性存在ヲ確認。脅威度、最大値。最優先ニテ排除ヲ・・・」
「うるせえよ、木偶人形が!」
「攻撃ヲ、確認・・・ガガッ」
【豪腕英傑】によってブーストされた飛び蹴りを受けて、ゴーレムが壁際まで転がっていく。離れ際にきっちりと背中に刺さった剣を引き抜いておく。
「大丈夫か、ルクセリア!」
「ああ・・・来て、くださったのですね・・・ディンギル様・・・ディンギル様・・・!」
細腕でひしっと抱きついてくるルクセリアの身体を抱きしめ返して、俺は彼女の状態を確認する。
首を絞められていたようだが、命に別状はなさそうである。もちろん、貞操も無事だ。
「当然だ。くそっ、酷いことしやがる・・・!」
しかし、ルクセリアの首元には絞められた痕がくっきりとついていた。真珠のような白い肌に刻まれた暴虐の痕跡を見て、俺の額に青筋が浮かんだ。
息も絶え絶えに肩を上下させるルクセリアの背中を優しく撫でつつ、俺はグリード・バアルを睨みつけた。
「俺の女に随分な事をしてくれるじゃないか。死ぬ覚悟はできてるんだろうな?」
「俺の、女だと・・・」
グリードが目を見開いた。限界まで開かれた目がみるみる憎悪に血走っていく。
「お前か! お前がルクセリアを誑かしたのか! 俺の女神をお前のような田舎貴族が汚したのか!」
「汚すのはこれからなんだが・・・いや、これから死ぬ奴には関係ないな」
「黙れ黙れ黙れ! こいつを殺せ! 【守護石兵】!」
「承知シマシタ」
蹴り飛ばされたメイド型ゴーレムが起き上がり、勢いよく飛びかかってくる。
いつの間にか、ゴーレムの両腕から30 cmほどの刃物が生えている。どうやら仕込み武器のようだ。
「ちっ!」
「排除シマス」
俺はルクセリアを背後に庇って、メイド型ゴーレムと対峙した。
メイド型ゴーレムの戦い方は、塔の入り口で戦った大型のゴーレムとは大きく異なっている。大型ゴーレムの戦い方が「剛」の戦い方だとすれば、メイド型ゴーレムの戦い方は「柔」の戦い方だ。
ゴーレムの振るう剣にはまるで熟練の剣士のような技があった。石でできた人形にこれほどの技を教え込むなんて、改めて古代文明の技術には驚かされる。
「だが・・・!」
「ガッ・・・」
俺は左右から迫る刃を【無敵鉄鋼】で弾いた。
「速いけれど、シャナほどじゃない。巧いけれど、エスティアほどじゃない。お前ごとき俺の敵じゃねえよ!」
「ガガガッ・・・損傷、確認」
メイド型ゴーレムの左腕に剣を叩きつけ、肘から先の部分を粉々に砕いた。
二流以下の剣士であればいざ知らず、俺はそれなりの敵と戦いを繰り広げてきた実戦経験がある。
この程度の剣士であれば、【豪腕英傑】によるブーストがなかったとしても楽勝だ。
「ガッ・・・損傷率、27パーセント。引キ続キ、戦イヲ、続行」
「そうかよ! 俺は女に甘い男だけど・・・木偶人形にまで優しくしてやらねえぞ!」
ゴーレムが振るった剣を受け流して、今度は胴体に蹴りを叩きこむ。ゴーレムの石の身体がくの字に折り曲がり後方へとよろける。
そのまま追撃の剣を振るって、今度は右肩を切り飛ばした。
メイド型ゴーレムはすでに両腕を失っており、魔法の力を打ち消す【無敵鉄鋼】の力によって動きも鈍くなっている。
「弱点は胸元の核だったな。容赦はしない。このまま土塊にしてやる!」
「ガガガッ・・・損傷率、拡大・・・47パーセント、戦闘続行、困難・・・」
心なしか弱々しく声を上げるメイド型ゴーレムへと、俺はとどめの一撃を振りかぶった。
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