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第2章 帝国騒乱 編
66.終わる戦争と新たな災厄
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楽しい時間は速く過ぎるという話があるが、その1週間はまさしく流れ星が駆け抜けるような速さで過ぎ去っていった。
5人の美女達と代わる代わる身体を重ね、まるで天に昇ったかのような幸福を堪能させてもらった。
言い訳をさせてもらうのなら、決して1週間ずっと淫行にふけっていたわけではない。
湯殿にみんなで入り身体を清めたりもしたし、ときには庭園を散歩しながら帝国と王国の未来について語り合ったりもした。花を摘んで冠を作るなんて子供じみた遊びをしたのも良い思い出である。
そんな1週間も過ぎ去って、ルクセリアと別れの時がやってきた。
「ありがとうございました。貴方のことは忘れません」
「ああ、またな」
「ええ、また」
ルクセリアと最後に交わした言葉は、そんなありふれたものだった。
これが今生の別れになるなどとは思っていない。必ず、また再開する日が来るだろう。そんなふうに思いながら、あえてそっけなく別れをする。
帰りは陸路ではなく海路を使うことにした。帝国西部を通る陸路だと、俺の顔を知っている連中と遭遇して要らぬトラブルを招くからだ。
「よろしかったのですか? ディンギル様」
「何がだよ」
帝国南部にある港町についたところで、サクヤがふと訊ねてきた。
ここにいるのは俺とサクヤの二人だけである。シャナは帝国が落ち着くまではルクセリアの傍にいるとのことで帝都に置いてきている。
「帝国と、それにルクセリア様のことです。その気になれば二つとも手にいれることができたのではないでしょうか?」
「ははっ、サクヤは欲張りだな。そんなことを考えてやがったのか」
確かに戦争に勝利して帝国を救って、それで得る物がわずかな賠償金では割に合わない。いっそのこと混乱に乗じて帝国を侵略したほうが旨味があるように思える。俺だってそんな野心を考えなかったわけではないのだ。
「残念だけどな、帝国全土をマクスウェルの手中に収めるには人手が足りない。無理に領地を増やしても、守り切れるだけの兵がいなければすぐに盗られちまうからな」
帝国の領土はマクスウェル辺境伯領の10倍以上。それだけの領地を管理し、守り切るだけの役人と兵士をマクスウェル家は保有していなかった。
強引に帝国を併合したとしても、管理しきれず反乱を起こされるか、他国に攻め込まれてしまうだろう。
「王国の中央政府だってマクスウェル家が力を付けるのは黙っていないだろうし、分け前をたかってくるだろうからな。内憂外患を抱え込むくらいなら、良き隣人として穏便に接していたほうがいい」
「なるほど・・・惜しいですね」
「そうでもないさ。後ろを気にせず王国の中央とやりあえるようになっただけでも十分な成果だ。それに、思わぬ収穫もあった」
「ルクセリア様のことですか? 一人の女性のために随分と苦労をしましたね」
天使のごとき美貌を思い浮かべると、思わず口元がニヤけてしまう。
あれほどの女を抱くことができたのはまさに僥倖。命を懸けたことと十分に釣り合いがとれる黄金のような1週間だった。
「いいじゃないか、もしもルクセリアが俺の子を孕んだら帝国の血筋にマクスウェルの血が入ることになるんだぞ。
気分がいいよな。大陸最高の名家であるバアル皇家の血統を俺の血で塗りつぶしてやったんだから」
「むう、ルクセリア様が子を孕むとは限りませんが・・・」
「孕まなかったなら、何度だって宮廷に忍び込んで夜這いをかけてやる。俺の子を孕むまで、何度だってな」
俺がニヤニヤと笑うと、サクヤは無表情な顔にわずかに憐憫を混ぜる。
「タチの悪い男に目を付けられましたね。お可哀そうに」
「クズに惚れたのが運の尽きだ。そこらへんは諦めてもらうさ」
俺は港から見える海へと目を向けた。
晴れ渡った空から降り注ぐ日差しが、飛び散った波の破片に反射して宝石のように輝いている。
戦争をしているうちに、いつの間にか夏がやってきたようだ。
「海には嫌な思い出ばかりしかないが、夏の日差しと波の音だけは嫌いになれないな」
「海がお嫌いだったのですか? 初めて聞きましたが・・・」
「マクスウェル領には海がないから話す機会がなかったな。海に来るとだいたい、嫌な奴に会うからな・・・」
――などと思い出話を語ろうとしたとき、前触れもなく背後から声をかけられた。
「嫌な奴とは、私のことかあ?」
ぞわり、と背筋に激しい悪寒が走った。
まるで背骨に冷水を注ぎ込まれたような圧倒的な不快感が津波のように押し寄せてくる。
慌てて振り向いた俺の目に映ったのは、今まさに降りぬかれた拳であった。
「ぐうっ!」
俺の顔面へと叩き込まれた拳によって大きく吹き飛ばされ、海へと落ちる。頭蓋骨が砕けるかと思うほど重い打撃だった。
「ディンギル様!」
サクヤが必死な様子で俺の名を呼び、殴り飛ばした襲撃者を睨みつける。
そこに立っていたのは、意外なことに小柄な少女であった。
背丈はサクヤと同じくらい。つまりは俺よりも頭1個分以上は小さい。波打つような白髪を肩のあたりで乱雑に切り揃えている。
場違いなことに、身に着けている衣服は白いレースのリボンがあしらわれた真っ黒なドレスである。いわゆるゴシックロリータと呼ばれる服装は港町の背景には恐ろしく似合っていない。
「いつにも増して遅いよなあ! 女と乳繰り合って寝不足かあ?」
海に落ちた俺を見て、少女が尊大な口調で言葉を発する。幼さが残る可愛らしい顔を歪めて、獣が牙を剥くような表情を作っている。
そんな少女の背後に音もなく回り込んで、サクヤが毒針を手に襲いかかる。
「はっ!」
「ほう、悪くないなあ。だが・・・」
「っ!?」
首筋に向けて突き出された毒針を少女は己の歯で受け止めた。
針から手を放して新しい武器を取り出そうとするサクヤであったが、その両手を少女が掴んでひねり上げる。
「弱いなあ。遅いなあ。そんなんじゃあ、当たらないなあ!」
「くっ、離してください!」
「ふりほどいてみろ、暗殺者!」
「このっ!」
抵抗するサクヤを嘲笑うように少女が笑う。そんな彼女の顔面に向けて、サクヤが含み針を飛ばす。
「おおっ!?」
口から放たれた予想外の攻撃への対処が遅れ、少女の頬に血の線が走る。
「それは高濃度のマヒ毒です。かすっただけでもすぐに動けなくなって、じきに心筋まで痺れて・・・」
「良いぞ! それは予想外だあ!」
「かはっ!?」
毒を受けたはずの少女が意気揚々と笑いながら、サクヤを地面に投げ飛ばす。硬い石造りの港に叩きつけられてサクヤの呼吸がつまる。
「結構、実に結構! 強い女は強い子を産むからな! 合格点をやろうじゃないかあ!」
「な・・・んで、動け・・・」
「私でなかったら決まってたぞ! 可愛い顔をして殺せる奴め!」
唇を限界まで釣り上げて怪物のように笑いながら、少女が右足を振り上げた。
「ご褒美だあ! 受け取れ!」
「くっ・・・!」
サクヤの顔面へと少女の踵が振り下ろされる。岩をも砕けそうなほどの勢いの攻撃に、サクヤは思わず目を閉じる。
「させねえよ!」
「む?」
当然ながら、いつまでも静観はしていない。俺は海から飛び出して女の首へと剣を振り抜いた。
少女は俺の斬撃を手で受け止めた。海水のせいで勢いがそがれてしまったとはいえ、その気になれば鉄を切れる斬撃を素手で防いでみせる。
「悪くはないが、面白味がないなあ。退屈だぞ?」
「だったらこれはどうだよ!」
「おおおおっ!?」
俺の右手にはすでに【豪腕英傑】が嵌められている。
潜在能力の限界までブーストされた蹴りが少女の腹部に叩き込まれて、小柄な体を大きく吹き飛ばす。
しかし、少女は空中でクルクルと回転して、何事もなかったかのように地面に両足で着地してみせる。
「結構、それなら合格! まるで寿命を削っているかのようないい蹴りだなあ!」
「初見で見抜いてんじゃねえよ!」
いったいどんな勘をしているのか、【豪腕英傑】の特性を一瞬で見破られてしまった。
「しかし、ちくしょうめ。夫からもらったドレスに泥がついたじゃないか。どうしてくれるんだあ!?」
「似合ってねーんだよ。クソババアがっ! 自分の年齢を考えろ!」
「で、ディンギル様・・・あの女はいったい・・・」
油断なく剣を構える俺の背後へと、起き上がったサクヤが近寄ってくる。
必殺の毒針をあっさり無力化されたことでサクヤの表情には怯えの色が浮かんでいる。
「あの女は・・・ドラコ・オマリ。海賊だよ」
「ドラコ・オマリ!?」
サクヤは思わずといったふうに叫んで、疑うような目を少女に向ける。
当然だろう。
南海の海賊王ドラコ・オマリ。
多くの海賊達がはびこる激戦の海を制覇して、帝国の軍船50隻を沈めた史上最悪の大海賊。
それがこんな、ゴスロリ衣装の少女だなんて誰が思う。
「ドラコ・オマリ? 一体いつからそんなふうに呼び捨てできるほど偉くなったあ? もっと敬意を払った呼び方をしないと、ぶち殺して皮を剥ぐぞお!」
「ちっ、このクソ・・・・・・・・・・・・オフクロ、これでいいかよ!」
「はあっ!?」
俺の口から出た呼称に、サクヤが愕然と目を見開く。
「そうだ、それでいいぞ! このバカ息子めえ!」
そう言って、俺の母親グレイス・D・O・マクスウェルは血の海に立つような凄惨な笑顔を浮かべたのであった。
第2章 帝国騒乱編 完
第3章 南海冒険編 に続く
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでご愛読ありがとうございます。長くなりましたが、ようやく第2章が完結いたしました。
次回より幕間を挟んで第3章に突入します。
今後とも応援のほど、よろしくお願いします。
5人の美女達と代わる代わる身体を重ね、まるで天に昇ったかのような幸福を堪能させてもらった。
言い訳をさせてもらうのなら、決して1週間ずっと淫行にふけっていたわけではない。
湯殿にみんなで入り身体を清めたりもしたし、ときには庭園を散歩しながら帝国と王国の未来について語り合ったりもした。花を摘んで冠を作るなんて子供じみた遊びをしたのも良い思い出である。
そんな1週間も過ぎ去って、ルクセリアと別れの時がやってきた。
「ありがとうございました。貴方のことは忘れません」
「ああ、またな」
「ええ、また」
ルクセリアと最後に交わした言葉は、そんなありふれたものだった。
これが今生の別れになるなどとは思っていない。必ず、また再開する日が来るだろう。そんなふうに思いながら、あえてそっけなく別れをする。
帰りは陸路ではなく海路を使うことにした。帝国西部を通る陸路だと、俺の顔を知っている連中と遭遇して要らぬトラブルを招くからだ。
「よろしかったのですか? ディンギル様」
「何がだよ」
帝国南部にある港町についたところで、サクヤがふと訊ねてきた。
ここにいるのは俺とサクヤの二人だけである。シャナは帝国が落ち着くまではルクセリアの傍にいるとのことで帝都に置いてきている。
「帝国と、それにルクセリア様のことです。その気になれば二つとも手にいれることができたのではないでしょうか?」
「ははっ、サクヤは欲張りだな。そんなことを考えてやがったのか」
確かに戦争に勝利して帝国を救って、それで得る物がわずかな賠償金では割に合わない。いっそのこと混乱に乗じて帝国を侵略したほうが旨味があるように思える。俺だってそんな野心を考えなかったわけではないのだ。
「残念だけどな、帝国全土をマクスウェルの手中に収めるには人手が足りない。無理に領地を増やしても、守り切れるだけの兵がいなければすぐに盗られちまうからな」
帝国の領土はマクスウェル辺境伯領の10倍以上。それだけの領地を管理し、守り切るだけの役人と兵士をマクスウェル家は保有していなかった。
強引に帝国を併合したとしても、管理しきれず反乱を起こされるか、他国に攻め込まれてしまうだろう。
「王国の中央政府だってマクスウェル家が力を付けるのは黙っていないだろうし、分け前をたかってくるだろうからな。内憂外患を抱え込むくらいなら、良き隣人として穏便に接していたほうがいい」
「なるほど・・・惜しいですね」
「そうでもないさ。後ろを気にせず王国の中央とやりあえるようになっただけでも十分な成果だ。それに、思わぬ収穫もあった」
「ルクセリア様のことですか? 一人の女性のために随分と苦労をしましたね」
天使のごとき美貌を思い浮かべると、思わず口元がニヤけてしまう。
あれほどの女を抱くことができたのはまさに僥倖。命を懸けたことと十分に釣り合いがとれる黄金のような1週間だった。
「いいじゃないか、もしもルクセリアが俺の子を孕んだら帝国の血筋にマクスウェルの血が入ることになるんだぞ。
気分がいいよな。大陸最高の名家であるバアル皇家の血統を俺の血で塗りつぶしてやったんだから」
「むう、ルクセリア様が子を孕むとは限りませんが・・・」
「孕まなかったなら、何度だって宮廷に忍び込んで夜這いをかけてやる。俺の子を孕むまで、何度だってな」
俺がニヤニヤと笑うと、サクヤは無表情な顔にわずかに憐憫を混ぜる。
「タチの悪い男に目を付けられましたね。お可哀そうに」
「クズに惚れたのが運の尽きだ。そこらへんは諦めてもらうさ」
俺は港から見える海へと目を向けた。
晴れ渡った空から降り注ぐ日差しが、飛び散った波の破片に反射して宝石のように輝いている。
戦争をしているうちに、いつの間にか夏がやってきたようだ。
「海には嫌な思い出ばかりしかないが、夏の日差しと波の音だけは嫌いになれないな」
「海がお嫌いだったのですか? 初めて聞きましたが・・・」
「マクスウェル領には海がないから話す機会がなかったな。海に来るとだいたい、嫌な奴に会うからな・・・」
――などと思い出話を語ろうとしたとき、前触れもなく背後から声をかけられた。
「嫌な奴とは、私のことかあ?」
ぞわり、と背筋に激しい悪寒が走った。
まるで背骨に冷水を注ぎ込まれたような圧倒的な不快感が津波のように押し寄せてくる。
慌てて振り向いた俺の目に映ったのは、今まさに降りぬかれた拳であった。
「ぐうっ!」
俺の顔面へと叩き込まれた拳によって大きく吹き飛ばされ、海へと落ちる。頭蓋骨が砕けるかと思うほど重い打撃だった。
「ディンギル様!」
サクヤが必死な様子で俺の名を呼び、殴り飛ばした襲撃者を睨みつける。
そこに立っていたのは、意外なことに小柄な少女であった。
背丈はサクヤと同じくらい。つまりは俺よりも頭1個分以上は小さい。波打つような白髪を肩のあたりで乱雑に切り揃えている。
場違いなことに、身に着けている衣服は白いレースのリボンがあしらわれた真っ黒なドレスである。いわゆるゴシックロリータと呼ばれる服装は港町の背景には恐ろしく似合っていない。
「いつにも増して遅いよなあ! 女と乳繰り合って寝不足かあ?」
海に落ちた俺を見て、少女が尊大な口調で言葉を発する。幼さが残る可愛らしい顔を歪めて、獣が牙を剥くような表情を作っている。
そんな少女の背後に音もなく回り込んで、サクヤが毒針を手に襲いかかる。
「はっ!」
「ほう、悪くないなあ。だが・・・」
「っ!?」
首筋に向けて突き出された毒針を少女は己の歯で受け止めた。
針から手を放して新しい武器を取り出そうとするサクヤであったが、その両手を少女が掴んでひねり上げる。
「弱いなあ。遅いなあ。そんなんじゃあ、当たらないなあ!」
「くっ、離してください!」
「ふりほどいてみろ、暗殺者!」
「このっ!」
抵抗するサクヤを嘲笑うように少女が笑う。そんな彼女の顔面に向けて、サクヤが含み針を飛ばす。
「おおっ!?」
口から放たれた予想外の攻撃への対処が遅れ、少女の頬に血の線が走る。
「それは高濃度のマヒ毒です。かすっただけでもすぐに動けなくなって、じきに心筋まで痺れて・・・」
「良いぞ! それは予想外だあ!」
「かはっ!?」
毒を受けたはずの少女が意気揚々と笑いながら、サクヤを地面に投げ飛ばす。硬い石造りの港に叩きつけられてサクヤの呼吸がつまる。
「結構、実に結構! 強い女は強い子を産むからな! 合格点をやろうじゃないかあ!」
「な・・・んで、動け・・・」
「私でなかったら決まってたぞ! 可愛い顔をして殺せる奴め!」
唇を限界まで釣り上げて怪物のように笑いながら、少女が右足を振り上げた。
「ご褒美だあ! 受け取れ!」
「くっ・・・!」
サクヤの顔面へと少女の踵が振り下ろされる。岩をも砕けそうなほどの勢いの攻撃に、サクヤは思わず目を閉じる。
「させねえよ!」
「む?」
当然ながら、いつまでも静観はしていない。俺は海から飛び出して女の首へと剣を振り抜いた。
少女は俺の斬撃を手で受け止めた。海水のせいで勢いがそがれてしまったとはいえ、その気になれば鉄を切れる斬撃を素手で防いでみせる。
「悪くはないが、面白味がないなあ。退屈だぞ?」
「だったらこれはどうだよ!」
「おおおおっ!?」
俺の右手にはすでに【豪腕英傑】が嵌められている。
潜在能力の限界までブーストされた蹴りが少女の腹部に叩き込まれて、小柄な体を大きく吹き飛ばす。
しかし、少女は空中でクルクルと回転して、何事もなかったかのように地面に両足で着地してみせる。
「結構、それなら合格! まるで寿命を削っているかのようないい蹴りだなあ!」
「初見で見抜いてんじゃねえよ!」
いったいどんな勘をしているのか、【豪腕英傑】の特性を一瞬で見破られてしまった。
「しかし、ちくしょうめ。夫からもらったドレスに泥がついたじゃないか。どうしてくれるんだあ!?」
「似合ってねーんだよ。クソババアがっ! 自分の年齢を考えろ!」
「で、ディンギル様・・・あの女はいったい・・・」
油断なく剣を構える俺の背後へと、起き上がったサクヤが近寄ってくる。
必殺の毒針をあっさり無力化されたことでサクヤの表情には怯えの色が浮かんでいる。
「あの女は・・・ドラコ・オマリ。海賊だよ」
「ドラコ・オマリ!?」
サクヤは思わずといったふうに叫んで、疑うような目を少女に向ける。
当然だろう。
南海の海賊王ドラコ・オマリ。
多くの海賊達がはびこる激戦の海を制覇して、帝国の軍船50隻を沈めた史上最悪の大海賊。
それがこんな、ゴスロリ衣装の少女だなんて誰が思う。
「ドラコ・オマリ? 一体いつからそんなふうに呼び捨てできるほど偉くなったあ? もっと敬意を払った呼び方をしないと、ぶち殺して皮を剥ぐぞお!」
「ちっ、このクソ・・・・・・・・・・・・オフクロ、これでいいかよ!」
「はあっ!?」
俺の口から出た呼称に、サクヤが愕然と目を見開く。
「そうだ、それでいいぞ! このバカ息子めえ!」
そう言って、俺の母親グレイス・D・O・マクスウェルは血の海に立つような凄惨な笑顔を浮かべたのであった。
第2章 帝国騒乱編 完
第3章 南海冒険編 に続く
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ここまでご愛読ありがとうございます。長くなりましたが、ようやく第2章が完結いたしました。
次回より幕間を挟んで第3章に突入します。
今後とも応援のほど、よろしくお願いします。
応援ありがとうございます!
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