俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

文字の大きさ
93 / 317
幕間 ディートリッヒ・マクスウェルの冒険

11.人類初、有人飛行


 二つの海賊団の抗争は白熱を極めた。

 獅子王船団が誇る20の海賊船からは絶え間なく棒火矢が撃ち込まれてきた。
 火花を散らして飛んで来る矢を俺は剣で斬り捨てて、その隙にグレイスが砲丸を投げて反撃をする。

 両者、一歩も譲ることのない海戦は一時間ほど続いた。

「負けてはいないけど決定打に欠けてるよな! このままだと、数の力で押し切られるぞ!?」

 俺は吐き捨てるように言って、また剣を振る。
 真っ二つになった棒火矢が海に落ちるのを見届けて、背後にいるゴードを肩越しに見る。

「くっ・・・火は消せますけど、穴をふさぐのに人手がかかってやす! もって10分ってとこでさあ!」

「ちっ・・・もう少し船を近づけられねえのかよ!?」

 俺は苛立たしげに遠くの敵船を睨みつける。
 ここから敵船までは100m程の距離がある。【白銀閃剣】で伸ばせる限界は50m。確実に敵を切り捨てるとなると30mくらいまでは近づきたい。

「うかつに近づいたら棒火矢の餌食ですよ! こっちが攻撃できるってことは、相手も攻撃しやすいってことでさあ!」

「そりゃあそうだが・・・」

 剣の届かない相手というのは、まどろっこしくていけない。イライラして頭の血管がブチ切れそうになってくる。

「そうだなあ! いい加減に飽きてきたなあ!」

 砲弾をまた一つ放り投げて、グレイスが吠えた。
 どうやら俺と同意見らしい。獣のように牙を剥いた顔は不機嫌そうに歪んでいる。

「じきに砲丸も切れるしなあ! そろそろ次の手を打つとするかあ!」

「なんだよ、まだ切り札があったのか?」

「手に入れたばかりのとっておきがある!」

 言って、グレイスはこちらに向かって走り寄ってきた。そのまま俺のすぐ傍でしゃがみ込んで、足首を掴んでくる。

「よいしょ、っとお!」

「うおおっ!?」

 足首を持ち上げられて、天地がひっくり返る。船のデッキに顔面をぶつけそうになるのを慌てて手で防ぐ。

「おまっ・・・何を・・・!」

「もう少し近づけば船ごと斬れるんだよなあ!? 海賊船を両断した剣士さんはあ!」

「なっ・・・お前、それをどこで!?」

「港で噂になってたぞお? 海賊船に襲われた商船に恐ろしく強い護衛がいる。敵の船を剣で真っ二つにしたってなあ!」

 がっしりと俺の足首を持ったまま、グレイスがその場で勢いよく回転する。

 足首を掴まれたまま振り回されて、俺はとんでもない嫌な予感に顔を青ざめさせた。

「お前っ、まさか・・・!」

「まーた、斬ってこいよお! 任せたぞお!」

 回転によって存分に遠心力を付けて、グレイスは俺の身体を天へと放り投げた。

「だあああああああああああああああっ!」

 大きな放物線を描いて俺は空へと舞い上がる。
 おそらくではあるが、人類が初めて空を飛んだ瞬間であった。

「てめえええええええええええっ! マジでぶっ殺すからなあああああああぁっ! 覚えてやがれよおおおおおおおおおおっ!」

 叫びながらも懸命に姿勢を直して、俺は剣を振った。
 さすがの腕力のグレイスであったが人間をぶん投げることには慣れていないらしい。狙いは大きく外れて、このままだと海に叩き込まれる。

「【白銀閃剣】! 伸びろ!」

 俺は剣を大きく伸ばして敵船に向けて突き出した。限界まで伸ばされた魔剣はちょうどよく船のマストへと突き刺さる。

「だりゃああああああああああっ!」

「え、えええええっ!?」

 俺は剣を縮め、身体をひねって方向転換させつつ敵船へと降り立った。
 空を飛んで現れた俺の姿を見て、敵の海賊は目を剥いて驚きの声を上げる。

「な、お前・・・どうやって!?」

「正直に言おう。もうお前らのこととか、どうでもいい」

 俺は海賊の言葉を無視して、独り言のように語りだす。

「お前らなんかよりも斬り殺したい奴がいる。だから、まあ、そいつを殺す前の準備体操だ。恨みはないが、とりあえず死ねや!」

「なあっ!?」

 俺は二度、剣を振った。
 一度目の斬撃で船のマストが根元から切り倒される。
 二度目の斬撃で、船が真っ二つに両断される。

 二つに切られた船が音を立てて崩落して、水しぶきを上げて海に沈んでいく。

「ぎゃああああああああああああっ!」

「た、たすけ・・・!」

 船の崩落に巻き込まれて海賊達が海へと沈んでいく。
 それを最後まで見ることなく、俺は沈みかけの船のデッキを蹴った。

「まずは一隻・・・次は」

 先程切り落としたマストの上を渡って、近くの船へと飛び移る。

「へ?」

「二隻目だ!」

 沈んでいく味方の船に目を奪われて呆然としている海賊達を無視して、俺はさらに剣を振った。

 必殺の斬撃を受けて、二隻目の船が轟音とともに沈んでいく。
 二つの船が沈む衝撃によって、海に小さな渦が巻き起こった。
感想 1,043

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!