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幕間 ディートリッヒ・マクスウェルの冒険
11.人類初、有人飛行
二つの海賊団の抗争は白熱を極めた。
獅子王船団が誇る20の海賊船からは絶え間なく棒火矢が撃ち込まれてきた。
火花を散らして飛んで来る矢を俺は剣で斬り捨てて、その隙にグレイスが砲丸を投げて反撃をする。
両者、一歩も譲ることのない海戦は一時間ほど続いた。
「負けてはいないけど決定打に欠けてるよな! このままだと、数の力で押し切られるぞ!?」
俺は吐き捨てるように言って、また剣を振る。
真っ二つになった棒火矢が海に落ちるのを見届けて、背後にいるゴードを肩越しに見る。
「くっ・・・火は消せますけど、穴をふさぐのに人手がかかってやす! もって10分ってとこでさあ!」
「ちっ・・・もう少し船を近づけられねえのかよ!?」
俺は苛立たしげに遠くの敵船を睨みつける。
ここから敵船までは100m程の距離がある。【白銀閃剣】で伸ばせる限界は50m。確実に敵を切り捨てるとなると30mくらいまでは近づきたい。
「うかつに近づいたら棒火矢の餌食ですよ! こっちが攻撃できるってことは、相手も攻撃しやすいってことでさあ!」
「そりゃあそうだが・・・」
剣の届かない相手というのは、まどろっこしくていけない。イライラして頭の血管がブチ切れそうになってくる。
「そうだなあ! いい加減に飽きてきたなあ!」
砲弾をまた一つ放り投げて、グレイスが吠えた。
どうやら俺と同意見らしい。獣のように牙を剥いた顔は不機嫌そうに歪んでいる。
「じきに砲丸も切れるしなあ! そろそろ次の手を打つとするかあ!」
「なんだよ、まだ切り札があったのか?」
「手に入れたばかりのとっておきがある!」
言って、グレイスはこちらに向かって走り寄ってきた。そのまま俺のすぐ傍でしゃがみ込んで、足首を掴んでくる。
「よいしょ、っとお!」
「うおおっ!?」
足首を持ち上げられて、天地がひっくり返る。船のデッキに顔面をぶつけそうになるのを慌てて手で防ぐ。
「おまっ・・・何を・・・!」
「もう少し近づけば船ごと斬れるんだよなあ!? 海賊船を両断した剣士さんはあ!」
「なっ・・・お前、それをどこで!?」
「港で噂になってたぞお? 海賊船に襲われた商船に恐ろしく強い護衛がいる。敵の船を剣で真っ二つにしたってなあ!」
がっしりと俺の足首を持ったまま、グレイスがその場で勢いよく回転する。
足首を掴まれたまま振り回されて、俺はとんでもない嫌な予感に顔を青ざめさせた。
「お前っ、まさか・・・!」
「まーた、斬ってこいよお! 任せたぞお!」
回転によって存分に遠心力を付けて、グレイスは俺の身体を天へと放り投げた。
「だあああああああああああああああっ!」
大きな放物線を描いて俺は空へと舞い上がる。
おそらくではあるが、人類が初めて空を飛んだ瞬間であった。
「てめえええええええええええっ! マジでぶっ殺すからなあああああああぁっ! 覚えてやがれよおおおおおおおおおおっ!」
叫びながらも懸命に姿勢を直して、俺は剣を振った。
さすがの腕力のグレイスであったが人間をぶん投げることには慣れていないらしい。狙いは大きく外れて、このままだと海に叩き込まれる。
「【白銀閃剣】! 伸びろ!」
俺は剣を大きく伸ばして敵船に向けて突き出した。限界まで伸ばされた魔剣はちょうどよく船のマストへと突き刺さる。
「だりゃああああああああああっ!」
「え、えええええっ!?」
俺は剣を縮め、身体をひねって方向転換させつつ敵船へと降り立った。
空を飛んで現れた俺の姿を見て、敵の海賊は目を剥いて驚きの声を上げる。
「な、お前・・・どうやって!?」
「正直に言おう。もうお前らのこととか、どうでもいい」
俺は海賊の言葉を無視して、独り言のように語りだす。
「お前らなんかよりも斬り殺したい奴がいる。だから、まあ、そいつを殺す前の準備体操だ。恨みはないが、とりあえず死ねや!」
「なあっ!?」
俺は二度、剣を振った。
一度目の斬撃で船のマストが根元から切り倒される。
二度目の斬撃で、船が真っ二つに両断される。
二つに切られた船が音を立てて崩落して、水しぶきを上げて海に沈んでいく。
「ぎゃああああああああああああっ!」
「た、たすけ・・・!」
船の崩落に巻き込まれて海賊達が海へと沈んでいく。
それを最後まで見ることなく、俺は沈みかけの船のデッキを蹴った。
「まずは一隻・・・次は」
先程切り落としたマストの上を渡って、近くの船へと飛び移る。
「へ?」
「二隻目だ!」
沈んでいく味方の船に目を奪われて呆然としている海賊達を無視して、俺はさらに剣を振った。
必殺の斬撃を受けて、二隻目の船が轟音とともに沈んでいく。
二つの船が沈む衝撃によって、海に小さな渦が巻き起こった。
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