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第3章 南海冒険編
3.牢屋に咲く花
船の階下へと降りて行った俺は、船室に作られた牢屋を発見した。
人攫いと人身売買を生業とする蛇骨海賊団の船には、余裕で20人は入るであろう牢屋が設置されていた。
しかし――
「・・・子供ばっかりじゃないか」
牢屋に身を寄せ合うようにしてうずくまっているのは、いずれも10歳前後の子供ばかりであった。
子供達はいずれも日焼けした肌をしており、南洋諸島のいずれかの国から連れてこられたことが見てわかった。
「はあ・・・さすがにこの年齢はなあ・・・」
子供達の中にはそれなりに整った容姿の少女もいる。
しかし、生憎なことに俺は子供をもてあそぶ紳士の趣味は持っていない。
「ひっ・・・!」
「きゃあっ!」
鉄格子の前へと歩いてきた俺の姿を見て、子供達は怯えて縮こまった。明らかに怖がられているようである。
俺は頭痛を堪えながら首を左右に振った。
「あー、なんだ・・・お前らを攫ってきた海賊共は俺が皆殺しにした」
俺の言葉に子供達の間にどよめきが起こった。戸惑ったように顔を見合わせて、上目遣いに俺の顔色を窺ってくる。
「君らがどこから攫われてきたかは知らないが、近くの港町までは送って行ってやる。そこからは好きにするといい」
「ま、待ってください!」
「ん・・・?」
子供達の間から制止の声が上がった。
子供達が左右に避けて、声の主の姿が明らかになった。
「おおっ・・・!」
口から思わず感嘆の声を出てしまった。
そこにいたのは17、18ほどの妙齢の少女であった。
青みがかった黒髪の少女の顔立ちは、厳しめに評価してもかなり良かった。まぎれもなく美少女に分類されるだろう。
焦げた金色の瞳と艶のある唇が、エキゾチックな黄色肌の美貌を引き立てている。肌の色は東国出身のサクヤと近いのだが、目の前の少女のほうが日焼けの色が濃くてより異国情緒を纏った雰囲気をしている。
「子供に囲まれてて見えなかったな・・・こりゃあ、なかなかの拾い物だ。あの海賊共もいい仕事をしてやがる」
「あの・・?」
「ああ、すまない。どうかしたのか?」
「は、はい・・・あなたは海賊なのですか?」
少女の質問に俺は皮肉気に唇を釣り上げた。
「今は・・・そうだな。海賊と言えなくもないな。まあ、君らを売り飛ばすつもりはないから、そこだけは安心してくれ」
『そこだけ』の部分を強調して伝える。そこ以外の部分については安全を保障できないのだが。
「私達は・・・この子達は、ガーネット王国から攫われてきました。どうか私達を国に返してくれませんか?」
「ガーネット王国・・・」
記憶によると、ガーネット王国は南洋諸島最大の貿易国であるサファイア王国の東方にある小国の名前だ。
ここから船で20日ほどの距離にあり、寄り道で行くような距離ではない。
「悪いけど、俺達はボランティアでやっているわけじゃあないんだよ。港まで送ってあげるだけ、マシだと思ってほしいんだけどな」
「そんな・・・!」
少女が悲痛に表情を歪める。
涙を目にためた少女の顔をちらりと盗み見して、俺は酷薄に笑った。
「君達を故郷に連れて行って俺達に何の得があるんだ? 運賃でも払ってくれるのかよ?」
「お金は・・・ないですけど」
少女は困ったように口ごもる。それでも諦めたわけではないらしく、金色の瞳を上目遣いに懇願してくる。
「お金は働いて返します。どれだけ時間がかかっても必ず払いますから、どうかこの子達を・・・」
「へえ、払うつもりはあるんだな。そうかそうか。結構、実に結構!」
俺は壁にかかっていた牢屋のカギを手に取り、鉄格子を開く。
牢屋に足を踏み入れると、子供達が悲鳴を上げて左右に道を開ける。
「っ・・・!」
少女のすぐ目の前まで歩み寄ると、少女は息をのんで目を見開いた。
「働いて返す、それは覚悟があって言ってるんだよな? 奴隷に仕事なんて選べないんだぜ?」
「もちろんです。ですから、どうかこの子達を・・・」
「そうか、それはよかった」
「きゃあ!?」
俺は少女の手を引いて、グイッ、と立ち上がらせる。
何日も入浴をしていないのだろう。汗の臭いが鼻につくが、気にせず細い腰を抱き寄せる。
「力づくってのは気が進まなかったんだよな。同意してくれるのなら、ありがたいな」
「あ、あの?」
「ここでするのも流石にな。場所を変えようか」
グイグイと強引に少女を牢屋から連れ出した。少女は心配そうに子供達のほうも見やっている。
「あとで水と食い物を差し入れさせるから心配するな。海賊を信用しろとは言わないが、今は海賊しか助けてくれないんだから、言うことを聞いとけよ」
「それはわかりましたけど・・・あのう、場所を変えて何をするんですか?」
「ん?」
きょとんと困惑した顔の少女。
まさか、何をされるかわかっていないのだろうか?
「何って・・・俺は男だぞ?」
「はあ、それは見ればわかりますけど・・・?」
「・・・・・・」
やはりわかっていないようだ。
周囲の子供達を見ると、10歳前後の子供でさえ彼女がこれから何をされるか察しているらしく、顔を赤くしたり青ざめさせたりしている。
いったい、どんな環境で育ったら男女のアレコレを知らずにこの年齢まで生きてこれるのだろうか?
「・・・・・・まあ、いいか」
俺はしばし考えて、特に問題はないかと疑問を放棄した。
彼女は何も知らなくていい。俺が知っていればそれで足りる。
「ベッドの中で教えてやる。まあ、女の仕事と思ってくれればいい」
「そうなんですか? お約束ですし、お仕事だったら頑張ります」
「ああ、頑張れ」
俺は心配げな顔をした子供達を放っておいて、少女を連れて船室から出た。
白鬼海賊団の船員に子供達に食事を運ぶように頼んで、この船の船長室へと少女を連れ込む。
はたして少女がどんな仕事をさせられたのか。
それは一晩中、鳴りやむことがなかった悩ましいあえぎ声から察するところである。
人攫いと人身売買を生業とする蛇骨海賊団の船には、余裕で20人は入るであろう牢屋が設置されていた。
しかし――
「・・・子供ばっかりじゃないか」
牢屋に身を寄せ合うようにしてうずくまっているのは、いずれも10歳前後の子供ばかりであった。
子供達はいずれも日焼けした肌をしており、南洋諸島のいずれかの国から連れてこられたことが見てわかった。
「はあ・・・さすがにこの年齢はなあ・・・」
子供達の中にはそれなりに整った容姿の少女もいる。
しかし、生憎なことに俺は子供をもてあそぶ紳士の趣味は持っていない。
「ひっ・・・!」
「きゃあっ!」
鉄格子の前へと歩いてきた俺の姿を見て、子供達は怯えて縮こまった。明らかに怖がられているようである。
俺は頭痛を堪えながら首を左右に振った。
「あー、なんだ・・・お前らを攫ってきた海賊共は俺が皆殺しにした」
俺の言葉に子供達の間にどよめきが起こった。戸惑ったように顔を見合わせて、上目遣いに俺の顔色を窺ってくる。
「君らがどこから攫われてきたかは知らないが、近くの港町までは送って行ってやる。そこからは好きにするといい」
「ま、待ってください!」
「ん・・・?」
子供達の間から制止の声が上がった。
子供達が左右に避けて、声の主の姿が明らかになった。
「おおっ・・・!」
口から思わず感嘆の声を出てしまった。
そこにいたのは17、18ほどの妙齢の少女であった。
青みがかった黒髪の少女の顔立ちは、厳しめに評価してもかなり良かった。まぎれもなく美少女に分類されるだろう。
焦げた金色の瞳と艶のある唇が、エキゾチックな黄色肌の美貌を引き立てている。肌の色は東国出身のサクヤと近いのだが、目の前の少女のほうが日焼けの色が濃くてより異国情緒を纏った雰囲気をしている。
「子供に囲まれてて見えなかったな・・・こりゃあ、なかなかの拾い物だ。あの海賊共もいい仕事をしてやがる」
「あの・・?」
「ああ、すまない。どうかしたのか?」
「は、はい・・・あなたは海賊なのですか?」
少女の質問に俺は皮肉気に唇を釣り上げた。
「今は・・・そうだな。海賊と言えなくもないな。まあ、君らを売り飛ばすつもりはないから、そこだけは安心してくれ」
『そこだけ』の部分を強調して伝える。そこ以外の部分については安全を保障できないのだが。
「私達は・・・この子達は、ガーネット王国から攫われてきました。どうか私達を国に返してくれませんか?」
「ガーネット王国・・・」
記憶によると、ガーネット王国は南洋諸島最大の貿易国であるサファイア王国の東方にある小国の名前だ。
ここから船で20日ほどの距離にあり、寄り道で行くような距離ではない。
「悪いけど、俺達はボランティアでやっているわけじゃあないんだよ。港まで送ってあげるだけ、マシだと思ってほしいんだけどな」
「そんな・・・!」
少女が悲痛に表情を歪める。
涙を目にためた少女の顔をちらりと盗み見して、俺は酷薄に笑った。
「君達を故郷に連れて行って俺達に何の得があるんだ? 運賃でも払ってくれるのかよ?」
「お金は・・・ないですけど」
少女は困ったように口ごもる。それでも諦めたわけではないらしく、金色の瞳を上目遣いに懇願してくる。
「お金は働いて返します。どれだけ時間がかかっても必ず払いますから、どうかこの子達を・・・」
「へえ、払うつもりはあるんだな。そうかそうか。結構、実に結構!」
俺は壁にかかっていた牢屋のカギを手に取り、鉄格子を開く。
牢屋に足を踏み入れると、子供達が悲鳴を上げて左右に道を開ける。
「っ・・・!」
少女のすぐ目の前まで歩み寄ると、少女は息をのんで目を見開いた。
「働いて返す、それは覚悟があって言ってるんだよな? 奴隷に仕事なんて選べないんだぜ?」
「もちろんです。ですから、どうかこの子達を・・・」
「そうか、それはよかった」
「きゃあ!?」
俺は少女の手を引いて、グイッ、と立ち上がらせる。
何日も入浴をしていないのだろう。汗の臭いが鼻につくが、気にせず細い腰を抱き寄せる。
「力づくってのは気が進まなかったんだよな。同意してくれるのなら、ありがたいな」
「あ、あの?」
「ここでするのも流石にな。場所を変えようか」
グイグイと強引に少女を牢屋から連れ出した。少女は心配そうに子供達のほうも見やっている。
「あとで水と食い物を差し入れさせるから心配するな。海賊を信用しろとは言わないが、今は海賊しか助けてくれないんだから、言うことを聞いとけよ」
「それはわかりましたけど・・・あのう、場所を変えて何をするんですか?」
「ん?」
きょとんと困惑した顔の少女。
まさか、何をされるかわかっていないのだろうか?
「何って・・・俺は男だぞ?」
「はあ、それは見ればわかりますけど・・・?」
「・・・・・・」
やはりわかっていないようだ。
周囲の子供達を見ると、10歳前後の子供でさえ彼女がこれから何をされるか察しているらしく、顔を赤くしたり青ざめさせたりしている。
いったい、どんな環境で育ったら男女のアレコレを知らずにこの年齢まで生きてこれるのだろうか?
「・・・・・・まあ、いいか」
俺はしばし考えて、特に問題はないかと疑問を放棄した。
彼女は何も知らなくていい。俺が知っていればそれで足りる。
「ベッドの中で教えてやる。まあ、女の仕事と思ってくれればいい」
「そうなんですか? お約束ですし、お仕事だったら頑張ります」
「ああ、頑張れ」
俺は心配げな顔をした子供達を放っておいて、少女を連れて船室から出た。
白鬼海賊団の船員に子供達に食事を運ぶように頼んで、この船の船長室へと少女を連れ込む。
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それは一晩中、鳴りやむことがなかった悩ましいあえぎ声から察するところである。
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