俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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第3章 南海冒険編

7.船にも魔物が棲んでいる

「・・・・・・知らない天井だな。ついでに、知らない女」

 目を覚ました俺は寝ぼけ眼で状況把握に努める。
 見上げる先にあるのは薄汚れた木の天井。地面はゆらゆらと揺れていて、遠くで潮騒と海鳥の鳴き声が聞こえる。
 隣には青みがかった黒髪の少女がスヤスヤと寝息を立てている。知らない女ではなく、昨日から俺の奴隷となった少女である。

「船の中だな。あー・・・あのまま寝ちまったか」

 そこは先ほど潰した海賊船の中。船長室にあるベッドの上である。
 故郷に連れていく報酬として女奴隷を抱いた俺は、そのまま寝落ちしてしまったらしい。

 母親であるグレイスに拉致されてから1週間になるが、その間に一度も女を抱いていない。過去最長となる禁欲生活のおかげで、昨夜はずいぶんとハッスルしてしまった。

「すう・・・」

「何回やっちまったかな・・・それにして、もとんでもない女だな」

 俺は裸の少女の寝姿を見つつ、戦慄とともにつぶやいた。
 奴隷少女はまごうことなき処女であった。女の技、ベッドの上でのテクニックなんてものは一つとして習得してはいない。
 しかし、そんな生娘である彼女が俺の1週間分の欲望全てを受け切ってみせた。行為が終わるまで気絶することなく一晩の相手を務めたのだ。

 俺の相手をたった独りで務めることができる女など、愛人の中でも何人もいない。
 辛うじてメイドのエリザが対抗できるくらいか。
 タフさでいうなら、サクヤやシャナでさえ凌いでいるだろう。

「ひょっとしたら、俺はとんでもない素質を持った怪物と遭遇してしまったのかもしれないな。はは、出会った男が俺でよかったよな」

「んっ・・・んあ・・・」

 俺は眠っている少女の身体に不躾に手を這わせて、ぬくもりと柔らかさを堪能する。

 この少女は間違いなく性豪。それも淫魔と呼んでもいい程のレベルである。
 並の男であれば彼女の底なしの淫力に飲み込まれて、天国を見たまま命を吸い尽くされてしまうだろう。

 この少女は男にとって淫魔であり、天使であり、そして死神だ。

「ここで俺と彼女が会ったのは、世の男性にとっては幸運だったかもしれないな。この娘があのまま娼館へ売り飛ばされていたら、どれほどの男が犠牲になったことか・・・」

「・・・あ、ふう・・・やあん・・・」

 俺は両手をムニムニさせながら、しみじみと頷いた。
 これもまた天のめぐり合わせ。あるいは海の神の導きか。

「・・・あ、おはようございます」

 さんざんイタズラされたせいか、少女がパチリと目を開く。焦げた金色の瞳に俺の顔が映し出される。

「ああ、おはよう・・・身体の調子はどうだい?」

「身体ですか? うまく説明できませんけど・・・そうですね。なんとなく、スッキリした気持ちです」

 なぜでしょう、とコクリと首を傾げる少女に俺は表情をひきつらせた。
 昨日まで処女だった娘があれだけされておいて、翌朝、平然としているなんてありえない。

 俺の目に狂いはない。
 目の前の女はやはり淫魔に違いない。

「そうか、体に不調がないならよかったよ」

「はあ、よかったです・・・ところで、世の中の奴隷というのは皆さん、あんなお仕事をしているのですか?」

 男を知ってなお、少女の瞳からは無垢な色が抜けていない。
 演技であるならば相当なあざとさだが、おそらく本気で言っているのだろう。

「まあ、そういう奴隷も多いな」

「そうですか・・・大変なお仕事なんですね。私も頑張りますっ」

 少女は胸の前で握りこぶしを作り、むんっ、と気合を入れてみせる。
 俺は必死に笑顔を取り繕いながら、ねぎらうように裸の背中を叩いた。

「・・・うん、あまり無理をするなよ。命の危機というものがあるからな?」

「命がけのお仕事なんですね」

「ああ、主に俺のほうがな」

「はい?」

 目の前の少女を奴隷にしたのは俺で間違いないのだが、果たして彼女を故郷に送り届けるまで俺は生きていられるだろうか?
 ベッドの上で吸い尽くされて死ぬというのはある意味、理想的な最期だ。しかし、できればもうちょっとだけ長生きしたいものである。

 俺はベッドのシーツを力任せにはがして少女の頭にかぶせて、自分も床に散らばった服を拾って着替える。
 彼女が着ていた服は奴隷用のものだし、俺の女にはふさわしくない。
    海賊船に女物の衣類があるとは思わないが、せめて清潔な服を探してこよう。

「ちゃんとした服と食う物を持ってくる。もうちょっとだけ休んでろ」

「あ、でしたら私が・・・」

「そんな姿で出歩くな・・・・・・被害者は俺だけで十分だ」

「ひがいしゃ?」

 こくん、と首を可愛らしく傾げた少女をベッドに残して、俺は船のドアをくぐる。
    その直前でピタリと足を止めた。

「・・・あ、悪い。名前、なんて言ったっけか?」

 ねやの睦み言で聞いたような気がするが、色々と衝撃的で頭から抜けてしまった。

「あ、はい。スーと申します」

 少女、スーは頭からシーツをかぶったままベッドの上で正座になり、三つ指を付いて深々と頭を下げた。

「どうぞ、よろしくお願いいたします・・・私の旦那様」

「あー・・・よろしくな」

 自分を奴隷にした男に対して不思議なほど悪感情の見えないスーに毒気を抜かれつつ、俺は頭を掻いて応じるのであった。

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