俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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第3章 南海冒険編

9.故郷の風景

 アレキサンドライト島の集落は一見して漁村のようであった。
 集落の海側にはこじんまりとした港があり、日焼けした漁師を乗せた漁船が行き来している。

 二隻の海賊船が港に停泊した。
 グレイスを先頭にして白鬼海賊団の面々が船から降りて、集落へと入っていく。

「お帰りなさい、船長」

「お疲れ様です、姐さん」

「おう、帰ったぞお! 留守番ご苦労だあ!」

 グレイスがぶんぶんと手を振り回しながら集落を進む。

 漁村の村人達も笑顔で海賊達を迎え入れている。
 和気藹々とした村人の姿は、住んでいる村を海賊に踏み込まれた哀れな被害者にはとても見えない。
 それもそうだろう。彼らは全員、漁村の村人に偽装した海賊なのだから。

「ああ! 坊ちゃんだ!」

 スーを伴った俺が村に足を踏み入れると、村人の間から驚きの声が上がる。

「おお! 本当だ!」

「ああ・・・ディンくんや、お帰り」

「坊ちゃんが女を連れてるぞ! がはははっ、こりゃ後継ぎが期待できるぜ!」

「おーおー、みんな年食ったなあ。久しぶりだな!」

 バンバンと肩を叩いてくる年配の漁師や、手を握って歓迎してくれる老婆。いずれも懐かしい顔ばかりである。

「ふあ~。ご主人様は人気者なんですねえ」

「まあ、一応は故郷だからな。ここじゃあ皆、家族みたいなもんだ」

 感心したように頷いているスーに適当に応えて、俺はずんずんと村を進んでいった。
 俺達はそのまま、村の奥にはひときわ古びた家へとたどり着いた。

「ここは・・・?」

「白鬼海賊団の本拠地だよ」

「この家がですか? とてもそうは見えませんけど・・・?」

 細い首をきょとんと傾げるスーの手を引いて、俺は今にも崩れそうな家へと足を踏み入れた。
 家の中には家具も何もない。代わりに、地下へと降る石造りの階段があった。
 石造りの階段には凝ったデザインの彫刻施されていて、かなり古い時代のものであることがわかる。

「ふあ? 何で?」

 家の外観からは思いもよらない光景を目の当たりにして、スーがパチクリと金色の瞳で瞬きを繰り返す。

「秘密基地ってやつだよ。イカしてるだろ?」

「はあ、イカしてますね?」

 首を傾げながら同意してくるスーの反応に苦笑をしつつ、俺達は階段を下りていく。
 すでにグレイスと他の海賊は地下へと消えていた。
 壁に掛けられた松明の明かりを頼りにして、長い螺旋階段を一段一段と降っていく。

 階段を最下層まで降りきると巨大な地下遺跡が姿を現した。遺跡には巨大な四角い建物が墓標のように乱立している。
 そびえ立つ建物一つ一つが青白い光を放っており、太陽の光が届かぬ地下だというのに昼間のように明るかった。

「わあっ・・・何ですかコレ!」

「変わらないなあ。ここも」

 この場所以外では絶対に見ることができない幻想的な光景に、スーが感嘆の声を上げた。
 俺もまた変わらない生まれ故郷の姿に目を細めてため息をついた。

「外の世界にはこんな場所があるんですね! すごい、すごいです! 感動しました、ご主人様!」

「・・・外の世界、ねえ」

 はたしてこの少女はどんな場所で生まれ育ち、どのような経緯で海賊に捕まって奴隷になったのであろうか?
 興味をそそられないわけではなかったが、俺は目を閉じてゆっくりと首を振った。

「謎は深まるばかり・・・いや、詮索はやめておこうか」

 おそらく、尋ねてみたらあっさり答えてくれるだろう。しかし、女の過去を気にする男なんて女々しいだけである。

「一つや二つ、謎があったほうが女は面白いんだよな。彼女の過去を暴くのは、ガーネット王国に乗り込むまでの楽しみにとっておくとしよう」

「ご主人様! こっち、こっちも見ていいですか!?」

「こらこら、一人で行くと迷子になるぞー」

「わあっ! こっちもキレイですねっ!」

 子供のようにはしゃいで走り回るスーに苦笑をしつつ、俺は肩をすくめて彼女の背中を追いかけるのであった。
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