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第3章 南海冒険編
18.砲弾の撃墜者
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side 警備隊隊長ランディ
未知の攻撃によって港の倉庫が破壊され、倒れた柱が私の頭めがけて倒れてくる。
「隊長! 危ない!」
部下が鋭い叫びをあげる。
私は身をよじって避けようとするが、ずきりと足首に痛みが走る。
どこかで捻ったのかと思ったのも一瞬。気づいた時には避けることができない距離まで柱が迫っていた。
「ぐうっ・・・」
衝撃に備えて首をすくめるが、予想していた痛みは永遠に訪れなかった。
「不愉快、極まるよなあ!」
「なっ・・・」
するりと滑り込むような足取りで、20歳くらいの若い青年が柱の前に割って入ってきた。
青年が右手に握った剣を振ると、巨大な柱が冗談のように切り裂かれて地面に崩れた。
呆然と見上げる私の目に映ったのは、さきほど港で海賊に間違えてしまった青年である。
今は連れていた少女の姿はない。安全な場所に置いてきたのか、青年は一人きりのようだった。
「君は・・・どうして・・・?」
「不愉快だよな。俺の目の届くところで、俺の知らない連中が勝手に花火を打ち上げてドンパチやらかしてるとか、ケンカを売られてるとしか思えねえよ。俺達の船も壊されてるし、はらわたが煮えちまうじゃねえか!」
青年は私の言葉を無視して、刺すような鋭い視線を海に向ける。
沖合に停泊する海賊船を睨みつけながら、地面に転がっている槍を拾う。
「あ、それは私の・・・」
愛用の槍を取られて、私は思わず声を発した。
しかし、次の瞬間、海賊船から身の毛のよだつような爆発音が轟いた。
ドオオオオオオオオオオン!
「ふ、伏せろ!」
私は叫んで、姿勢を低くして頭を抱える。
他の警備隊員も同じように守りの姿勢をとるが、青年だけは槍を持ったまま直立している。
「き、君っ! 伏せるんだ!」
「ふっ!」
青年は私の言葉を無視して、手にした槍を大きく振りかぶる。姿勢を低くして重心を沈め、振りかぶった槍を投げ飛ばした。
天を貫くような勢いで放たれた槍は、海賊船から放たれた黒い鉄球と空中でぶつかって粉々に四散する。
賞与をはたいて購入した槍の犠牲により、港を破壊するはずだった鉄球は勢いを失くして海に落ちて水柱を上げる。
「はあっ!? そんな馬鹿な!」
目にも止まらない速さで飛んでくる鉄球を見切って、槍を正確に命中させる。
それがどれだけの技術と動体視力を要することなのか、想像もつかない。
少なくとも、私は百本投げたって当てられる自信はない。
「ただの勘だ。騒ぐほどのことじゃあない」
青年は言い捨てて、今度は倒壊した建物のレンガを拾って投げる。
放物線を描いたレンガは狙いを外すことなく鉄球を打ち落とし、再び海面に水柱が上がった。
「ガキの頃に母親に悪さをされそうになって、小舟を盗んで家出したことがあるんだよ。あのクソババア、逃げる俺に鉄球をバカスカ投げてきやがって死にかけた。それ以来、この手の飛び道具がどこに飛んでくるのか、なんとなくわかるんだ」
そう言って、青年はまたレンガを投げる。
撃墜される鉄球を呆然と見ながら、「レンガでいいなら、私の槍はどうなるんだ?」という言葉が喉まで上がってきたが、相手は命の恩人である。私は無言で言葉を飲み込んだ。
「ん、どうやら砲弾が止んだようだな」
「む・・・?」
青年の言葉に顔を上げると、いつの間にか海賊船からの攻撃は止まっていた。
先程までの喧騒が嘘のように海は静けさを取り戻したが、港のあちこちからは悲鳴やうめき声が聞こえてくる。
様子をうかがっていると、海賊船の一隻から小舟が降りてきた。
船には2人の男の姿があり、オールで海を漕いで港に向かって近づいてくる。
「使者のようだな。さて、これだけ好き勝手暴れておいてどんな用事だろうな?」
「ロクな用事でないことは確かだろう。しかし・・・」
私は破壊された港を眺める。
崩れた建物や船が無残に散らかる港は、数十分前とはまるで違う光景へと姿を変えている。
建物の下敷きになった人々を助けるため、警備隊だけではなくギルドに所属する傭兵まで慌ただしく走り回っていた。
(こんなことをしでかした連中を許すわけにはいかない・・・だが、はたして勝てるだろうか?)
剣を一度も交えることなくこれだけの被害をもたらすことができる者達を、自分達の力で成敗することができるのだろうか?
私は胸に湧いた不安を打ち消すように顔を手の平で叩いて、港に到着した小舟へと足を向けた。
未知の攻撃によって港の倉庫が破壊され、倒れた柱が私の頭めがけて倒れてくる。
「隊長! 危ない!」
部下が鋭い叫びをあげる。
私は身をよじって避けようとするが、ずきりと足首に痛みが走る。
どこかで捻ったのかと思ったのも一瞬。気づいた時には避けることができない距離まで柱が迫っていた。
「ぐうっ・・・」
衝撃に備えて首をすくめるが、予想していた痛みは永遠に訪れなかった。
「不愉快、極まるよなあ!」
「なっ・・・」
するりと滑り込むような足取りで、20歳くらいの若い青年が柱の前に割って入ってきた。
青年が右手に握った剣を振ると、巨大な柱が冗談のように切り裂かれて地面に崩れた。
呆然と見上げる私の目に映ったのは、さきほど港で海賊に間違えてしまった青年である。
今は連れていた少女の姿はない。安全な場所に置いてきたのか、青年は一人きりのようだった。
「君は・・・どうして・・・?」
「不愉快だよな。俺の目の届くところで、俺の知らない連中が勝手に花火を打ち上げてドンパチやらかしてるとか、ケンカを売られてるとしか思えねえよ。俺達の船も壊されてるし、はらわたが煮えちまうじゃねえか!」
青年は私の言葉を無視して、刺すような鋭い視線を海に向ける。
沖合に停泊する海賊船を睨みつけながら、地面に転がっている槍を拾う。
「あ、それは私の・・・」
愛用の槍を取られて、私は思わず声を発した。
しかし、次の瞬間、海賊船から身の毛のよだつような爆発音が轟いた。
ドオオオオオオオオオオン!
「ふ、伏せろ!」
私は叫んで、姿勢を低くして頭を抱える。
他の警備隊員も同じように守りの姿勢をとるが、青年だけは槍を持ったまま直立している。
「き、君っ! 伏せるんだ!」
「ふっ!」
青年は私の言葉を無視して、手にした槍を大きく振りかぶる。姿勢を低くして重心を沈め、振りかぶった槍を投げ飛ばした。
天を貫くような勢いで放たれた槍は、海賊船から放たれた黒い鉄球と空中でぶつかって粉々に四散する。
賞与をはたいて購入した槍の犠牲により、港を破壊するはずだった鉄球は勢いを失くして海に落ちて水柱を上げる。
「はあっ!? そんな馬鹿な!」
目にも止まらない速さで飛んでくる鉄球を見切って、槍を正確に命中させる。
それがどれだけの技術と動体視力を要することなのか、想像もつかない。
少なくとも、私は百本投げたって当てられる自信はない。
「ただの勘だ。騒ぐほどのことじゃあない」
青年は言い捨てて、今度は倒壊した建物のレンガを拾って投げる。
放物線を描いたレンガは狙いを外すことなく鉄球を打ち落とし、再び海面に水柱が上がった。
「ガキの頃に母親に悪さをされそうになって、小舟を盗んで家出したことがあるんだよ。あのクソババア、逃げる俺に鉄球をバカスカ投げてきやがって死にかけた。それ以来、この手の飛び道具がどこに飛んでくるのか、なんとなくわかるんだ」
そう言って、青年はまたレンガを投げる。
撃墜される鉄球を呆然と見ながら、「レンガでいいなら、私の槍はどうなるんだ?」という言葉が喉まで上がってきたが、相手は命の恩人である。私は無言で言葉を飲み込んだ。
「ん、どうやら砲弾が止んだようだな」
「む・・・?」
青年の言葉に顔を上げると、いつの間にか海賊船からの攻撃は止まっていた。
先程までの喧騒が嘘のように海は静けさを取り戻したが、港のあちこちからは悲鳴やうめき声が聞こえてくる。
様子をうかがっていると、海賊船の一隻から小舟が降りてきた。
船には2人の男の姿があり、オールで海を漕いで港に向かって近づいてくる。
「使者のようだな。さて、これだけ好き勝手暴れておいてどんな用事だろうな?」
「ロクな用事でないことは確かだろう。しかし・・・」
私は破壊された港を眺める。
崩れた建物や船が無残に散らかる港は、数十分前とはまるで違う光景へと姿を変えている。
建物の下敷きになった人々を助けるため、警備隊だけではなくギルドに所属する傭兵まで慌ただしく走り回っていた。
(こんなことをしでかした連中を許すわけにはいかない・・・だが、はたして勝てるだろうか?)
剣を一度も交えることなくこれだけの被害をもたらすことができる者達を、自分達の力で成敗することができるのだろうか?
私は胸に湧いた不安を打ち消すように顔を手の平で叩いて、港に到着した小舟へと足を向けた。
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