俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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第3章 南海冒険編

22.化け物と赤い夕日

 その頃、サファイア王国から少し離れた場所にある小島には、ブルートスの町を襲撃した獅子王船団の船が停泊していた。

 バルトロ・ブラッドペイン・・・もといクリスティーナが獅子王国から連れてきた海賊船は大型船が10隻。しかし、小島にはそれを遥かに超える数の船が集まりつつあった。

「なかなかの壮観ねえ・・・見てるだけで濡れてきちゃうわあ」

「・・・・・・そうですか」

 島に次々と集まってくる船を眺めながら、クリスティーナが感嘆の声を上げる。
 隣で聞いていた部下は世にもおぞましいものを見るような目でクリスティーナを見つつ、辛うじて言葉を絞り出した。

 クリスティーナが拠点としている島には、本国から送られてきた援軍の船に加えて、傘下の海賊達が続々と集まっていた。
 その戦力は大小の船を合わせて100隻以上。人数は最終的に二千人にとどくだろう。

「この調子なら、ブルートスが降伏を拒んだとしても数の力で押しつぶせるわね。うふふ、私の栄光の門出にふさわしい光景だわあ」

「・・・さようでございますか。ぶふっ」

「何よ、ぶふって・・・」

「失礼・・・ハエが鼻に入りました」

 化粧を塗りたくった顔で部下を睨みつけて、クリスティーナは物憂げに溜息をついた。

「まったく、アンタ達がもっと有能だったらサファイア王国にこんなに手こずらなかったんだからね。明日はヘマしないでよね」

「もちろんです。敵が降伏をするようであれば受け入れて、代官を始めとした有力者を拘束して町を支配下に置く。拒むようだったら港を守っている兵士どもに鉄球をぶち込み、無理矢理に占領する。それで問題ありませんよね?」

「そうよお、うまくできたらキスしてあげるわあ」

「ヒイッ! それだけはお許しを!」

「どういう意味よ!」

 まったく、とクリスティーナは忌々し気に表情を歪める。

「私くらい美しくなると、逆に人を遠ざけてしまうから困るわあ。本当の美は凡人には受け入れられないのね」

「まったくもってその通りでございます。殺意すら抱くほどの正論です」

「何で殺意を抱くのよ! 意味わかんない!」

 怒鳴り散らすクリスティーナの追及をかわしながら、部下はふと疑問を口にする。

「そういえば、もしも港に敵兵がいなかった場合はどうするんですか?」

「あら? それはどういう状況なのよ」

「ほら、俺達に恐れをなして逃げてしまったとか」

「ふんっ! そのときは町の総督府を制圧してしまえばいいでしょ! そんな当たり前のこともわからないの!」

 クリスティーナはぷりぷりと怒りながら、他の部下へと指示を飛ばす。

「あなた達! 新しく来た海賊達にも石火矢と焙烙玉を配っておきなさい! 『国滅ぼし』は数が足りないんだからね!」

 クリスティーナが本国から持ってこれた『国滅ぼし』は10個ほどである。
 これらの兵器はまだ開発されたばかりで数がなく、一つを作るだけでも恐ろしい時間と予算が必要となる。

「できれば無抵抗で明け渡してもらいたいわね。あまり港を壊すと、制圧した後に利用できなくなるから」

「敵が賢い判断ができることを祈るとしましょうか」

 部下が顔を上げると、西の空に夕陽が沈んでいくところだった。
 今日の夕陽は不思議なほどに赤く見える。まるでこれから流れるであろう血を暗喩しているような気がして、少しだけ背筋が寒くなってしまう。
 そんな感傷を胸に抱く部下であったが、主の方はうっとりとした目で夕陽を見つめている。

「きれいな夕焼けね。まるで私の勝利を予言しているみたいじゃない」

「クリスティーナ様の美しさを讃えているのですよ・・・・・・ぷぷっ!」

「アンタ、いつかぶっ殺すから覚えてなさいよね・・・」

 そして・・・それぞれの一日が終わり、決戦の日がやってくる。
 ブルートスの町を巡る戦いを制するのは、若き英雄かそれとも異形の化け物か。

「・・・なんかすごい侮辱された気がするんだけど」

「気のせいです・・・・・・ぶふっ!」
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