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第3章 南海冒険編
25.その頃、俺は・・・
総督府から少し離れた場所。俺はとある建物の中に潜伏していた。
明かりを落とした部屋の中には俺とスー、白鬼海賊団の数人と奴隷の子供達がいる。
俺達は息を潜めて、その時が来るのをじっと待ち構えていた。
「・・・・・・早いな」
かすかに響いてきたラッパの音を耳にして、俺はわずかに目を細めた。
事前の話し合いでは、総督府での戦いが始まってから1時間ほどで作戦を実行するよう取り決められていた。
予定の時刻には、まだ時があるはずだった。
「スー。時間は?」
「えっと・・・ちょうど50分ほどです。ご主人様」
隣にいるスーがゼンマイ時計を見ながら答える。やはり10分も予定を前倒しにしているようである。
俺はやれやれと手で目元を覆って天井を仰ぎ、ゆっくりと長い息を吐きだした。
「たったの1時間も保たせられなかったのかよ。しょせんは町の警備兵。初陣の兵士にはこのあたりが限界だな」
「でも、ランディさんも頑張っていたのではないですか?」
スーが擁護するように言って、俺に干し肉と果実酒を差し出してきた。
干し肉を一切れつまんで口に放り込みながら、俺はスーの額を指先で小突く。
「戦争ってのは結果責任だ。どれだけ卑怯なことをしようとダラダラ怠けながら戦おうと、最後に勝ちさえすれば過程の全てが肯定される。逆にどれだけ頑張ろうと、負けちまえばその瞬間に指揮官は名誉の全てを失う」
クチャクチャと固い干し肉を噛みほぐして、果実酒とともに喉に流し込む。
部屋の隅では、俺が不機嫌そうにしているのを見た子供達が怯えた様子で固まっている。
この1週間でだいぶ打ち解けることはできたが、いまだ心に壁があるようだ。
「まあ、意地になって手遅れになるよりゃ、よっぽどマシだけどな。100点満点はくれてやれないが、及第点くらいは出してやるか」
「若様、傭兵達が動き出しました」
窓際で外をうかがっていた白鬼海賊団の下っぱが伝えてくれる。
どうやら、作戦が動き出したようだ。
「結構、予定よりもタイミングは早いが、海賊共は十分に引き込めただろう。さて・・・ここからが反撃だ」
俺は壁に立てかけた剣を取り、部屋のドアノブを握る。
「指示通りに任せたぞ。特に、スー。この戦いはお前にかかっているといっても過言じゃあない。よろしく頼んだぜ」
「わかりました! ご主人様の指示通りにがんばります」
スーは両手を胸の前で握り、むんっ、と気合を入れる。
頼りになるのかならないのかわからない姿に、俺は心の中で溜息をついた。
(俺達の命運、この町の存亡がこんな女の子にかかっているとはな・・・。準備不足ってのは嫌になるぜ)
もしもここが慣れ親しんだマクスウェル領だったら。あるいは、マクスウェル家に仕える屈強な兵士が手元にいたら。
きっと、こんな綱渡りのような方法ではなく鮮やかに勝利してみせるものを。
(泣き言をいっても仕方がない、か。足りない戦力でみっともなく勝って見せるとしよう)
「ご主人様もどうかお気をつけて」
「ああ」
短く返事をして扉をくぐり、俺は姿勢をかがめながら建物の外へと飛び出した。
外に出ると、総督府の方角から激しい剣戟と怒号の音が聞こえてくる。
先ほどよりも高々と響いてくる戦いの音に、俺は自分が考案した作戦が実行されたことを悟った。
「上手くやってくれよな。こっちも上手いこと殺っておくからよ」
牙を剥いて笑って、俺は上着を脱いで地面に投げ捨てた。
明かりを落とした部屋の中には俺とスー、白鬼海賊団の数人と奴隷の子供達がいる。
俺達は息を潜めて、その時が来るのをじっと待ち構えていた。
「・・・・・・早いな」
かすかに響いてきたラッパの音を耳にして、俺はわずかに目を細めた。
事前の話し合いでは、総督府での戦いが始まってから1時間ほどで作戦を実行するよう取り決められていた。
予定の時刻には、まだ時があるはずだった。
「スー。時間は?」
「えっと・・・ちょうど50分ほどです。ご主人様」
隣にいるスーがゼンマイ時計を見ながら答える。やはり10分も予定を前倒しにしているようである。
俺はやれやれと手で目元を覆って天井を仰ぎ、ゆっくりと長い息を吐きだした。
「たったの1時間も保たせられなかったのかよ。しょせんは町の警備兵。初陣の兵士にはこのあたりが限界だな」
「でも、ランディさんも頑張っていたのではないですか?」
スーが擁護するように言って、俺に干し肉と果実酒を差し出してきた。
干し肉を一切れつまんで口に放り込みながら、俺はスーの額を指先で小突く。
「戦争ってのは結果責任だ。どれだけ卑怯なことをしようとダラダラ怠けながら戦おうと、最後に勝ちさえすれば過程の全てが肯定される。逆にどれだけ頑張ろうと、負けちまえばその瞬間に指揮官は名誉の全てを失う」
クチャクチャと固い干し肉を噛みほぐして、果実酒とともに喉に流し込む。
部屋の隅では、俺が不機嫌そうにしているのを見た子供達が怯えた様子で固まっている。
この1週間でだいぶ打ち解けることはできたが、いまだ心に壁があるようだ。
「まあ、意地になって手遅れになるよりゃ、よっぽどマシだけどな。100点満点はくれてやれないが、及第点くらいは出してやるか」
「若様、傭兵達が動き出しました」
窓際で外をうかがっていた白鬼海賊団の下っぱが伝えてくれる。
どうやら、作戦が動き出したようだ。
「結構、予定よりもタイミングは早いが、海賊共は十分に引き込めただろう。さて・・・ここからが反撃だ」
俺は壁に立てかけた剣を取り、部屋のドアノブを握る。
「指示通りに任せたぞ。特に、スー。この戦いはお前にかかっているといっても過言じゃあない。よろしく頼んだぜ」
「わかりました! ご主人様の指示通りにがんばります」
スーは両手を胸の前で握り、むんっ、と気合を入れる。
頼りになるのかならないのかわからない姿に、俺は心の中で溜息をついた。
(俺達の命運、この町の存亡がこんな女の子にかかっているとはな・・・。準備不足ってのは嫌になるぜ)
もしもここが慣れ親しんだマクスウェル領だったら。あるいは、マクスウェル家に仕える屈強な兵士が手元にいたら。
きっと、こんな綱渡りのような方法ではなく鮮やかに勝利してみせるものを。
(泣き言をいっても仕方がない、か。足りない戦力でみっともなく勝って見せるとしよう)
「ご主人様もどうかお気をつけて」
「ああ」
短く返事をして扉をくぐり、俺は姿勢をかがめながら建物の外へと飛び出した。
外に出ると、総督府の方角から激しい剣戟と怒号の音が聞こえてくる。
先ほどよりも高々と響いてくる戦いの音に、俺は自分が考案した作戦が実行されたことを悟った。
「上手くやってくれよな。こっちも上手いこと殺っておくからよ」
牙を剥いて笑って、俺は上着を脱いで地面に投げ捨てた。
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