俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

文字の大きさ
128 / 317
第3章 南海冒険編

27.逆転の一手

side グレン・ボイル

 空に鳴り響くラッパの音を合図に、空き家と見せかけていた民家から傭兵達が飛び出した。
 民家の床下や天井裏、物置の陰などに潜伏していた傭兵が総督府を攻め込む獅子王船団を背後から奇襲する。
 傭兵ギルドのギルドマスターである俺、グレン・ボイルも傭兵の先頭に立って海賊と戦った。

「な、何だこいつら!」

「どっから出てきやがった!」

 あと少しで総督府を攻め落とすことができる・・・一歩先に見える勝利に浮足立った海賊は、予想外の方向からの反撃に動揺して次々と討ち取られていく。

「・・・ったく、恐ろしいことを考えやがる」

 目の前に立ちふさがる海賊を3人ほど戦斧でまとめて切り払いながら、俺は唇を歪めてつぶやいた。
 頭に浮かぶのは、この作戦を立案した異国の青年の姿である。
 自分の3分の1しか生きていない青年が立てた策略は見事にはまり、戦況を大きく動かしていた。

 今回の作戦は、総督府と警備隊を囮にして海賊達を陸地へと引き込み、民家に潜伏した傭兵が背後から奇襲を仕掛けるというものである。
 圧倒的に有利な戦況から一変して、挟撃を受けた海賊は見事に総崩れになっていて、数の優位を失っていた。

「オラオラオラ! 死にたくねえ奴はどきやがれ!」

「ぎゃあっ!」

「ひ、ひいいいいっ!」

「や、やめろ! 押すんじゃねえ! ぎゃああああああっ!」

 戦斧を振り下ろして海賊の身体を真っ二つに切り裂く。
 無残な最期を遂げた仲間の姿に、周りの海賊達はこぞって逃げ出していく。
 しかし、逃げた先にある総督府はバリケードで道をふさがれており、槍と弓を構えた警備隊が待ち構えている。

「海賊達を逃がすなあああああっ!」

「一人残らず討ち取れーーーーー!」

 あと少しで敗北するところまで追いつめられていた警備隊であったが、味方の援軍の登場に息を吹き返したのか、燃え上がるように声を上げて海賊を攻め立てている。
 矢と槍に身体を貫かれて、海賊達は面白いように数を減らしていった。

「えらく性格の悪い指揮官だぜ! 無能よりはマシだけどな!」

 港の防備を捨てることで、敵に兵器を使わせないこと。
 民家の玄関をわざと開け放つことで、無人に見せかけること。
 わずかな兵で総督府を守らせて、戦いやすい町中に敵を引きずり込むこと。

 それらの策略は見事に嵌まり、圧倒的に不利だった戦況をこちらに呼び戻していた。
 傭兵として長年、戦場で戦い続けていた俺の目から見ても、ディンギルと名乗った青年の采配は見事なものである。
 無能な指揮官が原因で犬死する傭兵は多いが、今回は当たりのようである。

「それにしても・・・ディンギル、ね。まさか本名ではないのだろうが、いったい何者だ?」

 ディンギル。ディンギル・マクスウェルというのは傭兵の間でもよく話題に上がる人物だ。
 バアル帝国の侵略から要塞を守り抜き、自軍の数倍の敵を打ち破った若き英雄。そのホットな噂は若い傭兵の語り草になっている。
 あえてその名前を偽名として使うというのは、よほどの自信の顕われだろうか。

「ま、腕がたしかなら素性なんてどうでもいいけどな! 戦場で余計なことを考えるもんじゃねえ!」

「ボイルさん! 総督府北側の敵は敗走しています! 追撃しますか!?」

「当然だ! 一人たりとも海賊を逃がすなよ!」

 俺は部下の傭兵に指示を飛ばし、手に持った戦斧を握り締めた。

 町の内部での戦いはこのまま勝ちに持っていけるだろう。
 しかし、それで戦いが終わったわけではない。

(敗北を悟った海賊は、なりふり構わずに嫌がらせをしてくるだろうな。はたして、それを凌げるかどうか・・・)

 自分達がここまで有利に戦えたのは、ここまでの戦いで海賊が火薬をほとんど使っていないからだ。
 侵略後に町を再利用することを前提に戦っていた海賊の甘さに付け込んだ、そういう見方もできるだろう。

 あえて自分達の力を低く見積もらせ、「火薬がなくても勝てる」と思わせた手腕は見事。
 しかし、上陸部隊を撃破してしまった以上、海賊は侵略を諦めて港を容赦なく攻撃してくるだろう。

 石火矢に焙烙玉。そして、港を半壊に追い込んだ謎の兵器。
 それらの攻撃を、ディンギルと名乗った青年はどのように対処するつもりなのだろうか?

「まだまだ、戦いは終わっちゃあいない。あの若造が今度は何を見せてくれるのか、楽しみだぜ!」

 俺は次なる戦いに思いを馳せて、大きく戦斧を振りかぶった。
感想 1,043

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!