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第3章 南海冒険編
43.植民地の闇
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「し、仕方がないじゃないか! ドレーク様に逆らった連中がどうなったか知っているのか!? 拘束されて宮殿に連れていかれ、無残な拷問を受けているのだぞ!? 私達だって、自分の身を守らなければいけないのだ!」
男が自分を正当化して、言い訳の言葉を吐いている。
俺は必死になっている男を冷めた目で見ながら、皮肉げに唇を尖らせた。
「そうかよ、シスター達だって自分の命を守りたかったと思うけどな」
「そ、それは・・・」
「ま、俺には関係のない話だけどな」
俺は首を横に振って、剣を地面に向けて下ろした。
剣を下げた俺を見て、男はほっとしたように笑いがなら俺に指を突きつけた。
「は、はははっ! そうだ、それでいいんだ! 余所者はさっさと出ていくんだな! この国で勝手なことをして生きていられると・・・」
「ふっ!」
「へ・・・?」
俺は下ろした剣を目にも止まらぬ速さで振り上げた。
指を突きつけていた男の手首から先が切断され、ぼとりと地面に落ちる。
「ひっ、あっ、あああっ・・・おれの、俺の手がああああああっ!」
「そう、お前らの事情は俺には関係ないんだよな。だが・・・俺に抱かれていたかもしれない女を殺した罪は重いぜ?」
「ぎゃあああああああああっ!」
男が切断された手を抱えるようにして逃げていった。他の住民達も、男に続いて民家の中へと逃げ去っていく。
「不愉快極まる連中だな・・・クズを相手に時間を無駄にしたぜ」
俺は吐き捨てて、今度こそ修道女達の遺体を降ろした。
ボロボロになった修道服をまとった女達の遺体を、黒い地面の上に並べていく。
「あとで人をやって埋めてやるから。それまではこのままで勘弁してくれよ」
「ご、ご主人様・・・ありがとうございます」
スーが抱き着いていたサクヤから離れて、おずおずと俺の元へと歩み寄ってきた。
「もう大丈夫なのか、スー?」
「はい・・・取り乱してしまって、すいません」
スーは軽く頭を下げて、修道女の遺体のそばへと跪いた。
「マザーメアリ・・・シスターレイナ。それにこっちは、ミカ・・・ああ、ナイアさんまで。天におわします大いなる光よ・・・」
スーは修道女の顔を一人一人確認して、両手を組んで祈りをささげた。
俺のいい加減な祈りとは違って、彼女達の宗派における正当な祈りの言葉を口にしている。
スーの痛ましげな背中を見つめていた俺は、居たたまれなくなってサクヤの背中を抱き寄せる。
「ディンギル様・・・」
「ああ、しばらくそっとしておいてやろう。それよりも・・・」
「はい、敵でしょうか?」
先ほどの騒ぎのせいで、民家の窓からは隠れた住民からの視線が無数に向けられている。そんな中で、少し空気の違う気配を俺達は感じ取っていた。
俺達に気づかれていることを察したのか、路地の物陰から一人の老人が現れた。
「ほっほっほっ、気づかれていましたか」
「じいさん、何者だ?」
その老人が纏っている空気は、決して素人の物ではなかった。
歴戦の兵士か傭兵か。さもなければ、殺し屋が持っている殺伐とした気配。
俺達が纏っているのと、同じ空気だ。
「今しがたの剣技、お見事でございました。貴方様をその道の達人と見込んで、ぜひ仕事を依頼したいのですが」
「誰かも知らん奴の依頼を受けるかよ」
美女ならまだしも。心の中でそう付け足して、俺は軽く手を振った。
俺のすげない態度に老人は鷹揚に頷き、シワの目立つ顔に笑顔を浮かべる。
「ごもっともでございますな。私はガーネット王国の宰相であるラウロス様に仕えている者です」
「宰相だと・・・?」
「はい」
老人は声のトーンを下げて、内緒話をするようにこちらに顔を寄せて囁いてきた。
「貴方様には、この国を支配する総督であるキャプテン・ドレークという男の暗殺を依頼したいのです」
男が自分を正当化して、言い訳の言葉を吐いている。
俺は必死になっている男を冷めた目で見ながら、皮肉げに唇を尖らせた。
「そうかよ、シスター達だって自分の命を守りたかったと思うけどな」
「そ、それは・・・」
「ま、俺には関係のない話だけどな」
俺は首を横に振って、剣を地面に向けて下ろした。
剣を下げた俺を見て、男はほっとしたように笑いがなら俺に指を突きつけた。
「は、はははっ! そうだ、それでいいんだ! 余所者はさっさと出ていくんだな! この国で勝手なことをして生きていられると・・・」
「ふっ!」
「へ・・・?」
俺は下ろした剣を目にも止まらぬ速さで振り上げた。
指を突きつけていた男の手首から先が切断され、ぼとりと地面に落ちる。
「ひっ、あっ、あああっ・・・おれの、俺の手がああああああっ!」
「そう、お前らの事情は俺には関係ないんだよな。だが・・・俺に抱かれていたかもしれない女を殺した罪は重いぜ?」
「ぎゃあああああああああっ!」
男が切断された手を抱えるようにして逃げていった。他の住民達も、男に続いて民家の中へと逃げ去っていく。
「不愉快極まる連中だな・・・クズを相手に時間を無駄にしたぜ」
俺は吐き捨てて、今度こそ修道女達の遺体を降ろした。
ボロボロになった修道服をまとった女達の遺体を、黒い地面の上に並べていく。
「あとで人をやって埋めてやるから。それまではこのままで勘弁してくれよ」
「ご、ご主人様・・・ありがとうございます」
スーが抱き着いていたサクヤから離れて、おずおずと俺の元へと歩み寄ってきた。
「もう大丈夫なのか、スー?」
「はい・・・取り乱してしまって、すいません」
スーは軽く頭を下げて、修道女の遺体のそばへと跪いた。
「マザーメアリ・・・シスターレイナ。それにこっちは、ミカ・・・ああ、ナイアさんまで。天におわします大いなる光よ・・・」
スーは修道女の顔を一人一人確認して、両手を組んで祈りをささげた。
俺のいい加減な祈りとは違って、彼女達の宗派における正当な祈りの言葉を口にしている。
スーの痛ましげな背中を見つめていた俺は、居たたまれなくなってサクヤの背中を抱き寄せる。
「ディンギル様・・・」
「ああ、しばらくそっとしておいてやろう。それよりも・・・」
「はい、敵でしょうか?」
先ほどの騒ぎのせいで、民家の窓からは隠れた住民からの視線が無数に向けられている。そんな中で、少し空気の違う気配を俺達は感じ取っていた。
俺達に気づかれていることを察したのか、路地の物陰から一人の老人が現れた。
「ほっほっほっ、気づかれていましたか」
「じいさん、何者だ?」
その老人が纏っている空気は、決して素人の物ではなかった。
歴戦の兵士か傭兵か。さもなければ、殺し屋が持っている殺伐とした気配。
俺達が纏っているのと、同じ空気だ。
「今しがたの剣技、お見事でございました。貴方様をその道の達人と見込んで、ぜひ仕事を依頼したいのですが」
「誰かも知らん奴の依頼を受けるかよ」
美女ならまだしも。心の中でそう付け足して、俺は軽く手を振った。
俺のすげない態度に老人は鷹揚に頷き、シワの目立つ顔に笑顔を浮かべる。
「ごもっともでございますな。私はガーネット王国の宰相であるラウロス様に仕えている者です」
「宰相だと・・・?」
「はい」
老人は声のトーンを下げて、内緒話をするようにこちらに顔を寄せて囁いてきた。
「貴方様には、この国を支配する総督であるキャプテン・ドレークという男の暗殺を依頼したいのです」
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