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第3章 南海冒険編
49.予想外の切り札
「ちっ・・・!」
俺は舌打ちをしながら後方へと飛び退く。
目の前に現れた黒犬のことは知識として知っていた。古代遺跡に出没する魔物の一つ、『ガルム』と呼ばれる怪物だ。
強さとしてはヒュドラやドラゴンには及ばない。しかし、鎧を噛み砕く強靭な牙と、刃を通さない体毛を持つこの怪物は、冒険者にとって天敵と呼べる存在である。
「ディンギル様!」
「サクヤ、来るな!」
俺は駆け寄ってこようとするメイド服の少女に一喝して、剣でガルムを迎撃する。
「ガアアアアアアアアッ!」
「硬いな・・・! ああ、もう、鬱陶しい!」
【無敵鉄鋼】で首のあたりを切りつけるが、わずかに毛皮を裂いたのみ。ほとんどダメージにはなっていない。
噛みついてきた顎を頭を下げて避けて、今度は右手の腕輪に力を込めて剣を振る。
「【豪腕英傑】!」
「グギャアアアアアアアアッ!?」
今度は確かな手ごたえがあった。
銀色の光をまとった一閃はガルムの首から胴体を横一文字に切り裂いて、黒い体毛を赤く染め上げる。
「くははっ、やはりこれくらいじゃあ死神を仕留めることはできないか! そうでなくてはなあ!」
「ぐっ・・・!?」
ガルムへと追撃を加えようとしたところで、ドレークがこちらに斬りかかってきた。
鋭い剣先が俺の喉元へと迫ってくる。俺は慌てて回避行動をとり、転がるようにして死の刃を逃れる。
「ディンギル様! このっ・・・!」
「ははっ、邪魔だぞおっ! 女っ!」
「かはっ!」
俺を援護しようとサクヤが飛び込んでくるが、ドレークの回し蹴りによって吹き飛ばされる。壁に叩きつけられた小さな体がずるずると滑りながら床に落ちる。
「サクヤッ!」
「おっと、これで二対一になってしまったなあ! さてさて、この窮地を我が運命はどう凌ぐんだ!?」
「ぐっ・・・てめっ!」
「ガアアアアアアアアッ!」
手負いになったガルムが怒りの咆哮を上げて飛びかかってくる。
右からドレークの剣が。左からガルムの牙と爪が襲ってくる。俺は必死に剣を振るが、すぐに防戦一方に追い込まれてしまった。
防ぎきれなかった攻撃が俺の肌を切り裂いていく。
【豪腕英傑】のおかげで傷はすぐに治癒しているが、この腕輪は使用者の寿命や生命力を消耗する。いつまで保つかはわかったものではない。
(このままじゃ、サリヴァンの野郎と同じ末路だ・・・! 何か流れを変えるきっかけがあれば・・・!)
俺は必死に頭を巡らせて反撃のチャンスを探す。
サクヤは壁際に倒れており、おそらく気絶している。
ロウとシャオマオの二人はいつの間にか、姿を消している。
殺し屋チームの連中は全員、すでに返り討ちに遭ってており、死人に援護など頼めない。
(残る手駒は・・・)
「ご主人様!」
「っ・・・!? こ、コラ! 出てくるなっ!」
追い込まれている俺を見ていられなくなったのだろう。柱の後ろに隠れていたスーが飛び出してきた。
青みがかった黒髪を揺らして走ってくる少女は剣も握ったことはなく、戦闘能力は皆無である。目の前の怪物2体を相手にできることなどなかった。
そんなことを思って慌てる俺であったが、事態は予想外の方向へと転がり出した。
「やめてっ! ご主人様をいじめないで!」
「ガウッ!」
「はっ・・・?」
スーが悲痛な叫びを上げた途端、俺に爪を振り下ろそうとしたガルムの動きが停止する。
俺を踏みつぶせるほどの巨体の怪物は、まるで人懐っこい飼い犬のようにお座りをして、尻尾まで振っていた。
「あの髪・・・それに金の瞳だとっ!?」
驚いたのは俺だけではなく、ドレークも一緒であった。
ドレークは攻撃の手を止めて、なぜかスーのことを驚愕の眼差しで見つめている。
「まさか、魔族に生き残りがいたのか!? それとも先祖返りが・・・!」
「好機・・・!」
言っていることの意味はわからないが、これが千載一遇のチャンスであることは疑いようもなかった。
俺はドレークの懐へと踏み込み、ガラ空きになった胴体へと白刃を振るった。
俺は舌打ちをしながら後方へと飛び退く。
目の前に現れた黒犬のことは知識として知っていた。古代遺跡に出没する魔物の一つ、『ガルム』と呼ばれる怪物だ。
強さとしてはヒュドラやドラゴンには及ばない。しかし、鎧を噛み砕く強靭な牙と、刃を通さない体毛を持つこの怪物は、冒険者にとって天敵と呼べる存在である。
「ディンギル様!」
「サクヤ、来るな!」
俺は駆け寄ってこようとするメイド服の少女に一喝して、剣でガルムを迎撃する。
「ガアアアアアアアアッ!」
「硬いな・・・! ああ、もう、鬱陶しい!」
【無敵鉄鋼】で首のあたりを切りつけるが、わずかに毛皮を裂いたのみ。ほとんどダメージにはなっていない。
噛みついてきた顎を頭を下げて避けて、今度は右手の腕輪に力を込めて剣を振る。
「【豪腕英傑】!」
「グギャアアアアアアアアッ!?」
今度は確かな手ごたえがあった。
銀色の光をまとった一閃はガルムの首から胴体を横一文字に切り裂いて、黒い体毛を赤く染め上げる。
「くははっ、やはりこれくらいじゃあ死神を仕留めることはできないか! そうでなくてはなあ!」
「ぐっ・・・!?」
ガルムへと追撃を加えようとしたところで、ドレークがこちらに斬りかかってきた。
鋭い剣先が俺の喉元へと迫ってくる。俺は慌てて回避行動をとり、転がるようにして死の刃を逃れる。
「ディンギル様! このっ・・・!」
「ははっ、邪魔だぞおっ! 女っ!」
「かはっ!」
俺を援護しようとサクヤが飛び込んでくるが、ドレークの回し蹴りによって吹き飛ばされる。壁に叩きつけられた小さな体がずるずると滑りながら床に落ちる。
「サクヤッ!」
「おっと、これで二対一になってしまったなあ! さてさて、この窮地を我が運命はどう凌ぐんだ!?」
「ぐっ・・・てめっ!」
「ガアアアアアアアアッ!」
手負いになったガルムが怒りの咆哮を上げて飛びかかってくる。
右からドレークの剣が。左からガルムの牙と爪が襲ってくる。俺は必死に剣を振るが、すぐに防戦一方に追い込まれてしまった。
防ぎきれなかった攻撃が俺の肌を切り裂いていく。
【豪腕英傑】のおかげで傷はすぐに治癒しているが、この腕輪は使用者の寿命や生命力を消耗する。いつまで保つかはわかったものではない。
(このままじゃ、サリヴァンの野郎と同じ末路だ・・・! 何か流れを変えるきっかけがあれば・・・!)
俺は必死に頭を巡らせて反撃のチャンスを探す。
サクヤは壁際に倒れており、おそらく気絶している。
ロウとシャオマオの二人はいつの間にか、姿を消している。
殺し屋チームの連中は全員、すでに返り討ちに遭ってており、死人に援護など頼めない。
(残る手駒は・・・)
「ご主人様!」
「っ・・・!? こ、コラ! 出てくるなっ!」
追い込まれている俺を見ていられなくなったのだろう。柱の後ろに隠れていたスーが飛び出してきた。
青みがかった黒髪を揺らして走ってくる少女は剣も握ったことはなく、戦闘能力は皆無である。目の前の怪物2体を相手にできることなどなかった。
そんなことを思って慌てる俺であったが、事態は予想外の方向へと転がり出した。
「やめてっ! ご主人様をいじめないで!」
「ガウッ!」
「はっ・・・?」
スーが悲痛な叫びを上げた途端、俺に爪を振り下ろそうとしたガルムの動きが停止する。
俺を踏みつぶせるほどの巨体の怪物は、まるで人懐っこい飼い犬のようにお座りをして、尻尾まで振っていた。
「あの髪・・・それに金の瞳だとっ!?」
驚いたのは俺だけではなく、ドレークも一緒であった。
ドレークは攻撃の手を止めて、なぜかスーのことを驚愕の眼差しで見つめている。
「まさか、魔族に生き残りがいたのか!? それとも先祖返りが・・・!」
「好機・・・!」
言っていることの意味はわからないが、これが千載一遇のチャンスであることは疑いようもなかった。
俺はドレークの懐へと踏み込み、ガラ空きになった胴体へと白刃を振るった。
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