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第3章 南海冒険編
50.最後の一手
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「はあっ!」
「うおおおっ!?」
鋭く放たれた斬撃であったが、ドレークはすんでのところで気がついて、身体をひねって回避してしまう。
「ちっ・・・勘のいい奴め!」
「くはっ、ははっ、お前こそ運がいい奴だ! こんな切り札まで持っているとはなあ!」
体勢を立て直す前にひたすら連撃を叩きこむが、ドレークは神が乗り移ったように鮮やかな剣技で受けきっている。
「お願い・・・! ご主人様を助けて!」
「ガアアアアアアアアッ!」
スーが命じると、ドレークの手先であったはずのガルムが元・主人へと爪を振った。
先ほどとは逆の形で二対一の構図が出来上がり、形勢が見事に逆転する。
「おいおいっ! それは反則だろお!?」
「てめえが呼び出したんだろ! ペットの不始末の責任ぐらい、自分でとるんだな!」
「ははっ・・・! やばいなあ! やばいぞお! はは、あはははハハハハハッ!」
ガルムの援護のおかげで、今度はドレークを防戦一方に追い込むことに成功した。
不死身の海賊は窮地に追いやられてなお、嬉しそうに笑い声をあげている。
「こんなピンチは久しぶりだなあ! あははは、ハハハハハハハッ! 最高だなあ、最高にハイになるぞおおおおおお!」
「気持ち悪りいんだよ、このマゾ野郎が!」
「ひゃはあはははははっ! そう言ってくれるなよお! 追い詰められたのは不死になってから初めてなんだからなあ! だーけーどー・・・」
「ギャウッ!?」
「がっ・・・!」
ここにきて、ドレークの剣が鋭さを増した。
ブーストがかかったように速度を増す剣撃が、優位に立っていたはずの俺達を押し返す。
斬撃が俺の身体を切りつけ、その勢いのままに回転して放たれた蹴撃がガルムの鼻面を蹴り飛ばした。
「この期に及んでまだ力を隠してやがったか・・・! 底なし沼みてえな奴だな!」
「千年も続く生き地獄と引き換えに得た力・・・こんな程度で尽きちゃあいないんだよ!」
ドレークが狂喜に顔を歪めて、ベロリと自分の唇を舌で舐める。
振るわれた剣と拳が、俺とガルムにそれ以上の攻めを許してくれない。
「ああ、まだまだ足りないなあ! 私に天罰を下すにはもう一歩足りないなあ! ああ、また俺は死に損なうのかあ!? 我が運命よ、愛しい愛しい死神よ! お前も俺を殺してくれないのかあ!?」
「勝手なこと言いやがって・・・!」
俺は牙を剥いて、悔しげに唸る。
不死身の怪物を相手に予想外の優位に立てているのは間違いない。しかし・・・もう一手、攻め手が足りなかった。
「あと一手、あと一歩なんだが・・・!」
「おっけー、俺様ちゃんに任せときな!」
「あ?」
修羅場と化した玉座の間に、底抜けに明るい声が響いた。
ドレークに警戒を残しながらも視線を向けると、開け放たれた大扉の向こうにロウの姿があった。
「ロウ、お前いったい何をしてやがった!」
「おにいさんよ、お説教は後で聞くぜー? いやー、金目の物を探していたら宝物庫じゃなくて武器庫を見つけちゃってなあ?」
ロウがひょいと横に退くと、その背後から奇妙な大筒が現れた。
獅子王船団の海賊船に積まれていた『国滅ぼし』とよく似ているが、その大きさは倍以上も巨大である。
「それは・・・」
「兵器にゃあ詳しくないけど、基本的な使い方は船にあった奴と同じだろお? シャオマオ」
「おう、任せトケ」
大筒の後ろにいたシャオマオが、手に持った松明で導火線に着火する。ジリジリと火花を放って導火線が燃え尽きた。
ズドオオオオオオオオオオオン!
「うおおっ!?」
「キャウン!?」
瞬間、灼熱の塊が俺とガルムの間をすり抜けていく。
轟音と風圧のせいで尻もちをつきそうになるのを、必死に足を踏ん張って堪える。
「ぐうううううううううううっ!?」
人間の頭ほどの大きさがある巨大な鉄の塊が目にも止まらぬ速さで駆け抜け、ドレークの胴体へと叩きこまれた。
「うおおおっ!?」
鋭く放たれた斬撃であったが、ドレークはすんでのところで気がついて、身体をひねって回避してしまう。
「ちっ・・・勘のいい奴め!」
「くはっ、ははっ、お前こそ運がいい奴だ! こんな切り札まで持っているとはなあ!」
体勢を立て直す前にひたすら連撃を叩きこむが、ドレークは神が乗り移ったように鮮やかな剣技で受けきっている。
「お願い・・・! ご主人様を助けて!」
「ガアアアアアアアアッ!」
スーが命じると、ドレークの手先であったはずのガルムが元・主人へと爪を振った。
先ほどとは逆の形で二対一の構図が出来上がり、形勢が見事に逆転する。
「おいおいっ! それは反則だろお!?」
「てめえが呼び出したんだろ! ペットの不始末の責任ぐらい、自分でとるんだな!」
「ははっ・・・! やばいなあ! やばいぞお! はは、あはははハハハハハッ!」
ガルムの援護のおかげで、今度はドレークを防戦一方に追い込むことに成功した。
不死身の海賊は窮地に追いやられてなお、嬉しそうに笑い声をあげている。
「こんなピンチは久しぶりだなあ! あははは、ハハハハハハハッ! 最高だなあ、最高にハイになるぞおおおおおお!」
「気持ち悪りいんだよ、このマゾ野郎が!」
「ひゃはあはははははっ! そう言ってくれるなよお! 追い詰められたのは不死になってから初めてなんだからなあ! だーけーどー・・・」
「ギャウッ!?」
「がっ・・・!」
ここにきて、ドレークの剣が鋭さを増した。
ブーストがかかったように速度を増す剣撃が、優位に立っていたはずの俺達を押し返す。
斬撃が俺の身体を切りつけ、その勢いのままに回転して放たれた蹴撃がガルムの鼻面を蹴り飛ばした。
「この期に及んでまだ力を隠してやがったか・・・! 底なし沼みてえな奴だな!」
「千年も続く生き地獄と引き換えに得た力・・・こんな程度で尽きちゃあいないんだよ!」
ドレークが狂喜に顔を歪めて、ベロリと自分の唇を舌で舐める。
振るわれた剣と拳が、俺とガルムにそれ以上の攻めを許してくれない。
「ああ、まだまだ足りないなあ! 私に天罰を下すにはもう一歩足りないなあ! ああ、また俺は死に損なうのかあ!? 我が運命よ、愛しい愛しい死神よ! お前も俺を殺してくれないのかあ!?」
「勝手なこと言いやがって・・・!」
俺は牙を剥いて、悔しげに唸る。
不死身の怪物を相手に予想外の優位に立てているのは間違いない。しかし・・・もう一手、攻め手が足りなかった。
「あと一手、あと一歩なんだが・・・!」
「おっけー、俺様ちゃんに任せときな!」
「あ?」
修羅場と化した玉座の間に、底抜けに明るい声が響いた。
ドレークに警戒を残しながらも視線を向けると、開け放たれた大扉の向こうにロウの姿があった。
「ロウ、お前いったい何をしてやがった!」
「おにいさんよ、お説教は後で聞くぜー? いやー、金目の物を探していたら宝物庫じゃなくて武器庫を見つけちゃってなあ?」
ロウがひょいと横に退くと、その背後から奇妙な大筒が現れた。
獅子王船団の海賊船に積まれていた『国滅ぼし』とよく似ているが、その大きさは倍以上も巨大である。
「それは・・・」
「兵器にゃあ詳しくないけど、基本的な使い方は船にあった奴と同じだろお? シャオマオ」
「おう、任せトケ」
大筒の後ろにいたシャオマオが、手に持った松明で導火線に着火する。ジリジリと火花を放って導火線が燃え尽きた。
ズドオオオオオオオオオオオン!
「うおおっ!?」
「キャウン!?」
瞬間、灼熱の塊が俺とガルムの間をすり抜けていく。
轟音と風圧のせいで尻もちをつきそうになるのを、必死に足を踏ん張って堪える。
「ぐうううううううううううっ!?」
人間の頭ほどの大きさがある巨大な鉄の塊が目にも止まらぬ速さで駆け抜け、ドレークの胴体へと叩きこまれた。
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