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第3章 南海冒険編
55.海底都市
俺達を乗せた船は沖合に待機していた白鬼海賊団の船と合流して、グレイスの指示で西の方角へと向かって行った。
いくつかの島を迂回して西に3日ほど進んで行くと、やがてグレイスはおもむろに口を開いた。
「ここだなあ、ここでいいぞお」
「ここって・・・何もない海の真ん中なんだが」
グレイスが指示した場所には島も何もない場所であった。
波もない穏やかな海原を指さすグレイスに、俺は怪訝な声をかける。
まさか加齢の影響が頭に来てしまったのかと戦慄していると、ブーツの踵で蹴り飛ばされた。
「いでっ!」
「失礼なことを考えているなあ! 馬鹿息子めえ!」
グレイスは眉の端を釣り上げて叫び、倒れた俺の上に馬乗りになってくる。
「母親への敬意が足りないぞお! 悪い息子にはお仕置きだなあ!」
「やめろ、コラ! 何をしやがる!」
グレイスは鎖で俺の身体をグルグル巻きにする。
俺は必死に抵抗するが、グレイスの馬鹿力にはかなわなかった。
「こんな海の真ん中に町があるとか言われたら、誰だって正気を疑うだろうが!」
「仕方がないだろお!? コンパスはここを指しているんだからなあ!」
「コンパス?」
グレイスの手には手のひら大のコンパスが握られている。
ぐいっと前に突き出されたそれを見ると、先端が赤と青に塗られたコンパスの針がグルグルと回転している。
「明らかに壊れているんだが? このコンパスも、ついでにババアの頭も」
「違うって言ってるだろお! このコンパスは北を指さないんだぞお!」
「むぐっ・・・!」
グレイスはコンパスを俺の口に押し込み、顔を寄せて恫喝する。
「アトランティスは海の底を移動する町だからなあ! このコンパスは北ではなく、アトランティスがどこを移動しているかを示すものだあ! だからこの場所でいいんだぞお!」
「わかった、わかった! わかったから鎖を解きやがれ!」
「んー? それはダメだなあ!」
グレイスは拘束された俺の身体を担いで、船の外へと放り投げる。
ドボンと大きく音を立てて、俺の身体が海面に着水する。
「うおっ! 何しやがるクソババア!」
「言っただろお? アトランティスは海の底にあるんだぞお?」
「てめ、まさか・・・!」
これから起こる未来が頭によぎって俺は顔をひきつらせた。
グレイスは鎖の端を船のマストへと結びつけ、重りの鉄球を抱えて海に飛び込んできた。
「さあ、一緒に海底探索に行こうじゃないかあ! なあに、苦しいのは最初だけだあ! 5分もすれば窒息して何も感じなくなるからなあ!」
「死んでるだろ、それは! コラ、身体にしがみつくな! しず・・・」
重りを抱えたグレイスにがっちりと抱擁されて、俺の身体が海水へと引きずり込まれる。
「ディンギル様!」
「ご、ご主人様~!」
サクヤとスーが叫ぶ声を最後に、俺の意識は暗い水底へと沈んでいった。
「んー、んー・・・!」
「声を出すと窒息が早まるぞお? 少しは落ち着いたらどうだあ?」
「んー、んー、んー!」
どうして当たり前のように水中でしゃべっているのだ、この母は。
そんなことを叫びたかったのだが、当然ながら水中で話すわけにはいかなかった。
深い深い海の底へと沈んでいく俺達の身体は、徐々に太陽の光が届かない深海へと踏み込んでいった。
締め上げるような水圧によって空気が絞りだされそうになるのを必死に堪えていると、やがて暗い海の底に明かりが見えた。
「んぐっ・・・?」
「見えてきたぞお、ああ。懐かしいなあ」
「っ・・・!」
視線の先に、山のように巨大な何かが海の底を移動している。
目についた明かりは、その巨大な『それ』の頭上に輝いていた。
(こいつは・・・ヤドカリ、か?)
わずかな光に照らされて、『それ』の正体が明らかになる。
それは視界の全てを覆い尽くすほど巨大なヤドカリであった。
先端のハサミで泥をかき分け、8本の足で海底を這うように進んでいる。
その頭上にはチョウチンアンコウのような光の玉がついて、淡い光で深海を照らしていた。
そして、何よりも特筆するべきなのはその背中である。
(あの背中の物は、まさか町なのか・・・?)
巨大ヤドカリの背中には、本来あるべき貝の代わりに一つの町が背負われていた。
大きさとしてはブリテン要塞と同じくらいだろうか。数千人は優に生活できるような町である。
「よく来たなあ、馬鹿息子。我が故郷アトランティスへ」
「んぐっ・・・!」
グレイスは重りを投げ捨て、俺の身体を抱えたままヤドカリの背中に向かって泳いでいく。
「ここが決戦の場所だぞお? 神に呪われた憐れな不死者に、終わりってやつを教えてやってくれよお」
そう言って、グレイスは海底を進む町へと飛び込んでいった。
いくつかの島を迂回して西に3日ほど進んで行くと、やがてグレイスはおもむろに口を開いた。
「ここだなあ、ここでいいぞお」
「ここって・・・何もない海の真ん中なんだが」
グレイスが指示した場所には島も何もない場所であった。
波もない穏やかな海原を指さすグレイスに、俺は怪訝な声をかける。
まさか加齢の影響が頭に来てしまったのかと戦慄していると、ブーツの踵で蹴り飛ばされた。
「いでっ!」
「失礼なことを考えているなあ! 馬鹿息子めえ!」
グレイスは眉の端を釣り上げて叫び、倒れた俺の上に馬乗りになってくる。
「母親への敬意が足りないぞお! 悪い息子にはお仕置きだなあ!」
「やめろ、コラ! 何をしやがる!」
グレイスは鎖で俺の身体をグルグル巻きにする。
俺は必死に抵抗するが、グレイスの馬鹿力にはかなわなかった。
「こんな海の真ん中に町があるとか言われたら、誰だって正気を疑うだろうが!」
「仕方がないだろお!? コンパスはここを指しているんだからなあ!」
「コンパス?」
グレイスの手には手のひら大のコンパスが握られている。
ぐいっと前に突き出されたそれを見ると、先端が赤と青に塗られたコンパスの針がグルグルと回転している。
「明らかに壊れているんだが? このコンパスも、ついでにババアの頭も」
「違うって言ってるだろお! このコンパスは北を指さないんだぞお!」
「むぐっ・・・!」
グレイスはコンパスを俺の口に押し込み、顔を寄せて恫喝する。
「アトランティスは海の底を移動する町だからなあ! このコンパスは北ではなく、アトランティスがどこを移動しているかを示すものだあ! だからこの場所でいいんだぞお!」
「わかった、わかった! わかったから鎖を解きやがれ!」
「んー? それはダメだなあ!」
グレイスは拘束された俺の身体を担いで、船の外へと放り投げる。
ドボンと大きく音を立てて、俺の身体が海面に着水する。
「うおっ! 何しやがるクソババア!」
「言っただろお? アトランティスは海の底にあるんだぞお?」
「てめ、まさか・・・!」
これから起こる未来が頭によぎって俺は顔をひきつらせた。
グレイスは鎖の端を船のマストへと結びつけ、重りの鉄球を抱えて海に飛び込んできた。
「さあ、一緒に海底探索に行こうじゃないかあ! なあに、苦しいのは最初だけだあ! 5分もすれば窒息して何も感じなくなるからなあ!」
「死んでるだろ、それは! コラ、身体にしがみつくな! しず・・・」
重りを抱えたグレイスにがっちりと抱擁されて、俺の身体が海水へと引きずり込まれる。
「ディンギル様!」
「ご、ご主人様~!」
サクヤとスーが叫ぶ声を最後に、俺の意識は暗い水底へと沈んでいった。
「んー、んー・・・!」
「声を出すと窒息が早まるぞお? 少しは落ち着いたらどうだあ?」
「んー、んー、んー!」
どうして当たり前のように水中でしゃべっているのだ、この母は。
そんなことを叫びたかったのだが、当然ながら水中で話すわけにはいかなかった。
深い深い海の底へと沈んでいく俺達の身体は、徐々に太陽の光が届かない深海へと踏み込んでいった。
締め上げるような水圧によって空気が絞りだされそうになるのを必死に堪えていると、やがて暗い海の底に明かりが見えた。
「んぐっ・・・?」
「見えてきたぞお、ああ。懐かしいなあ」
「っ・・・!」
視線の先に、山のように巨大な何かが海の底を移動している。
目についた明かりは、その巨大な『それ』の頭上に輝いていた。
(こいつは・・・ヤドカリ、か?)
わずかな光に照らされて、『それ』の正体が明らかになる。
それは視界の全てを覆い尽くすほど巨大なヤドカリであった。
先端のハサミで泥をかき分け、8本の足で海底を這うように進んでいる。
その頭上にはチョウチンアンコウのような光の玉がついて、淡い光で深海を照らしていた。
そして、何よりも特筆するべきなのはその背中である。
(あの背中の物は、まさか町なのか・・・?)
巨大ヤドカリの背中には、本来あるべき貝の代わりに一つの町が背負われていた。
大きさとしてはブリテン要塞と同じくらいだろうか。数千人は優に生活できるような町である。
「よく来たなあ、馬鹿息子。我が故郷アトランティスへ」
「んぐっ・・・!」
グレイスは重りを投げ捨て、俺の身体を抱えたままヤドカリの背中に向かって泳いでいく。
「ここが決戦の場所だぞお? 神に呪われた憐れな不死者に、終わりってやつを教えてやってくれよお」
そう言って、グレイスは海底を進む町へと飛び込んでいった。
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