俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

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幕間 王都武術大会

5.曲者がいる店

 闘技場を出てからもエキドナは俺にしつこく付きまとい、結局、俺は彼女と大通りにあるレストランでディナーをとることになった。
 それなりに高級な料理を食べ、ワインを何杯か飲みながらお互いの近況について話をする。
 そして、閉店近い時間になったら店を出て、事前に呼んでおいた馬車へとエキドナをエスコートした。

「ディンは寮生だったっけ? よかったら、今日はうちに泊まっていかない?」

 俺は学園の男子寮で寝泊まりしているが、エキドナは王都内に屋敷を借りてそこから学園に通っていた。
 煽情的な服を着た幼馴染は酒を飲んだせいで肌を朱に染めている。
    大胆にのぞいた大きな乳房は汗でしっとりと湿っており、エキドナが身じろぎするたびに誘うようにふわりと揺れている。

「魅力的な提案だけど、またの機会にしよう。今日は満月だから、少し夜空を眺めて歩きたい」

「そう? 意外とロマンチックな趣味があるのね」

 エキドナは首を傾げ、馬車の中へと消えていく。
 サンダーバード家の執事もこちらにペコリと頭を下げて、その後へと続いていく。

 エキドナを乗せた馬車が大通りを駆け抜けていき、俺の視界から消えていく。
 走り去っていく馬車を見送り、俺は出てきたばかりのレストランの扉をくぐる。

「あれ? 忘れ物ですか?」

「そんなところだ。気にするな」

 戻ってきた俺に気がついた若い店員が、首を傾げて尋ねてくる。俺はヒラヒラと手を振り、店の奥へと進んで行く。

「あ、ちょっと、そこはお客様は・・・」

「いいんだよ、あの人は」

 店のスタッフルームに入ろうとする俺を店員が呼び止めようとするが、年配の店員が肩に手を置いて止める。

「え、だってあそこは関係者しか・・・」

「お前、新人だな? いいんだよ」

 二人の店員の話し声を背中で聞きながら、俺は店の経営者がいる部屋に足を踏み入れる。

「よう、お仕事ご苦労さん」

「これはこれは。お待ちしておりました」

 ノックもせずに部屋に入ってきた俺を黒いスーツを着たオールバックの男が出迎えた。椅子から立ち上がり、腰を折って丁寧に頭を下げてくる。

 その男の名前はキサラギ。
 俺に仕えている『鋼牙』という暗殺集団のメンバーで、幹部の一人であった。
 キサラギは表向きこのレストランの経営者として店の運営を行っているが、その本来の仕事は王都の情勢を探ることである。
 レストランの店員はほとんどが『鋼牙』に所属する密偵や暗殺者であり、裏で王宮や中央貴族の動向を探っていた。

「俺達をつけていた奴はどうした? ちゃんと捕まえたな?」

 俺は部屋のソファにどっかりと座り、単刀直入に用件を切り出した。
 昼間、エキドナと腕を組んで歩いていた時に気がついたのだが、闘技場を出たあたりから複数の人間が俺達を尾行していた。
 人通りの多い道を通るようにしたので手を出してはこなかったが、明らかに不穏な気配をまとっていた。

「もちろんでございます。それにしても流石でございます、若殿。よくぞ彼らの尾行に気がつきましたね」

「エキドナは気づいていなかったみたいだけどな。まあ、俺みたいに暗殺者に狙われ慣れていないだろうから当然か」

「それでこそ我らが主でございます」

 尾行する敵の存在に気づいた俺は『鋼牙』が経営する店へと入り、秘かに指示を出して捕縛と尋問を命じた。
 わざわざ閉店近い時間まで飲み食いをしていたのも、『鋼牙』の尋問が終わるのを待っていたからである。

「彼らの素性ですが、どうやらセイバールーン侯爵家にゆかりのある剣士のようです」

「セイバールーン・・・聞いた名前だな」

 覚え違いでなければ、武術大会で戦った男がそんな名前を出していた気がする。
 俺はしばし記憶を探り、ポンと手を叩いた。

「どこかで聞き覚えがあると思っていたが・・・そうか、『剣聖』のセイバールーン家か」

 セイバールーン家は初代国王の時代から戦場であまたの敵を切り伏せ、『剣聖』の称号を代々襲名している家系である。
 現在でも王族に剣術を指導する『王家剣術指南役』という役職を与えられており、セイバールーン流といえばランペルージ王国内における剣の頂点として知られていた。

「東方辺境ではマイナーな流派だから忘れていたな・・・それで、そのセイバールーンがどうして俺を尾行してたんだよ」

「それがですね・・・」

 キサラギは対面のソファに腰かけ、重々しい表情で口を開いた。
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