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幕間 王都武術大会
8.剣聖
side セイバールーン侯爵
「・・・それで? 無様に逃げ帰り、生き恥をさらしたということか?」
「も、申し訳ありません・・・」
我が屋敷であるセイバールーン侯爵邸にて。
私は椅子から立ち上がることなく、無様な失敗をしでかした部下を睨みつけた。
怒りの視線をぶつけられた部下は顔を上げることなく身体を縮こまらせて、肩を小刻みに震わせている。
私の名前はザイフォン・セイバールーン。
セイバールーン侯爵家の現・当主であり、第七代目『剣聖』を継ぐ者である。
セイバールーン侯爵家は初代国王の頃からランペルージ王家に仕えており、武をもって王家の敵を打ち払ってきた。
王宮では『剣術指南役』として王族の家庭教師も務めており、歴史と名誉を背負う一族であった。
しかし、そんなセイバールーン家の栄光に陰りがさしたのは先代の頃。忌々しいロサイス公爵家が宮廷の権力を掌握してきた時分からである。
セイバールーン家は武に強い家であるが、その反面で政治力には乏しい。そんな弱点をついて、ロサイス公爵家は宮廷の役職のほとんどを傘下の貴族で埋めて宮廷での発言力を伸ばし、とうとう近衛騎士団や国軍の人事にまで口出しをするようになった。
先代当主がロサイス家を敵とみなした時にはすでに時は遅かった。
セイバールーン家は騎士団や国軍の要職から排除されてしまい、武のなんたるかも知らぬ弱腰貴族どもがその穴を埋めていた。
『剣術指南役』という役職だけは残されたものの、セイバールーン家は国の剣としての活躍の場を奪われてしまい、道場で剣を振り続ける日々となってしまった。
(このおぞましき現状を打破するためにも、今回の計画は何としても成し遂げなければならない! だというのにこの部下は・・・!)
私はギリギリと奥歯を噛みしめて、椅子から立ち上がった。
「ひっ・・・!」
失敗をして逃げかえってきた部下が、殺気を放つ私の様子に怯えて尻もちをつく。
そのセイバールーン家の剣士にあるまじき軟弱な態度が、さらに私の怒りの火に油を注ぐ。
「・・・バロン・スフィンクスに差し向けた刺客5人のうち3人が討たれた。ディンギル・マクスウェルのもとに送った者達は一人も返ってこない。この無様な有様、敗戦の責任はいったい誰がとるのだ?」
「それ、は・・・」
「誰かが責任をとらねばならぬ。さもなければ、斃れた者達が報われぬ。討ち死にした者達の親に、子に、祖先に面目が立たない。それは理解できているのだろう?」
私はあえて声を押さえて、静かな口調で恫喝する。
みるみるうちに部下は顔を青ざめさせて、床に尻をついたまま壁際スレスレまで後ずさる。
「も、もう一度チャンスを・・・! 次こそは必ず・・・!」
「信賞必罰を怠れば国は腐るばかりである。セイバールーン家の剣士であれば、死ぬるときには潔く逝くがよい!」
「ひいっ!」
私は壁にかけた剣を手にして、無能な部下の脳天へと振り下ろした。
ランプの明かりに照らされて、抜き放たれた白刃がキラリと煌めいた。
しかし、脳天へと振り下ろされた斬撃は紙一重のところで受け止められていた。
「む・・・!」
「それはちょっとやり過ぎではありませんか、父上」
「・・・無用な邪魔を、ベナミス!」
無能な部下の頭蓋骨を真っ二つにするはずだった斬撃を横から剣で受け止めたのは、我が息子であるベナミス・セイバールーンであった。
「・・・それで? 無様に逃げ帰り、生き恥をさらしたということか?」
「も、申し訳ありません・・・」
我が屋敷であるセイバールーン侯爵邸にて。
私は椅子から立ち上がることなく、無様な失敗をしでかした部下を睨みつけた。
怒りの視線をぶつけられた部下は顔を上げることなく身体を縮こまらせて、肩を小刻みに震わせている。
私の名前はザイフォン・セイバールーン。
セイバールーン侯爵家の現・当主であり、第七代目『剣聖』を継ぐ者である。
セイバールーン侯爵家は初代国王の頃からランペルージ王家に仕えており、武をもって王家の敵を打ち払ってきた。
王宮では『剣術指南役』として王族の家庭教師も務めており、歴史と名誉を背負う一族であった。
しかし、そんなセイバールーン家の栄光に陰りがさしたのは先代の頃。忌々しいロサイス公爵家が宮廷の権力を掌握してきた時分からである。
セイバールーン家は武に強い家であるが、その反面で政治力には乏しい。そんな弱点をついて、ロサイス公爵家は宮廷の役職のほとんどを傘下の貴族で埋めて宮廷での発言力を伸ばし、とうとう近衛騎士団や国軍の人事にまで口出しをするようになった。
先代当主がロサイス家を敵とみなした時にはすでに時は遅かった。
セイバールーン家は騎士団や国軍の要職から排除されてしまい、武のなんたるかも知らぬ弱腰貴族どもがその穴を埋めていた。
『剣術指南役』という役職だけは残されたものの、セイバールーン家は国の剣としての活躍の場を奪われてしまい、道場で剣を振り続ける日々となってしまった。
(このおぞましき現状を打破するためにも、今回の計画は何としても成し遂げなければならない! だというのにこの部下は・・・!)
私はギリギリと奥歯を噛みしめて、椅子から立ち上がった。
「ひっ・・・!」
失敗をして逃げかえってきた部下が、殺気を放つ私の様子に怯えて尻もちをつく。
そのセイバールーン家の剣士にあるまじき軟弱な態度が、さらに私の怒りの火に油を注ぐ。
「・・・バロン・スフィンクスに差し向けた刺客5人のうち3人が討たれた。ディンギル・マクスウェルのもとに送った者達は一人も返ってこない。この無様な有様、敗戦の責任はいったい誰がとるのだ?」
「それ、は・・・」
「誰かが責任をとらねばならぬ。さもなければ、斃れた者達が報われぬ。討ち死にした者達の親に、子に、祖先に面目が立たない。それは理解できているのだろう?」
私はあえて声を押さえて、静かな口調で恫喝する。
みるみるうちに部下は顔を青ざめさせて、床に尻をついたまま壁際スレスレまで後ずさる。
「も、もう一度チャンスを・・・! 次こそは必ず・・・!」
「信賞必罰を怠れば国は腐るばかりである。セイバールーン家の剣士であれば、死ぬるときには潔く逝くがよい!」
「ひいっ!」
私は壁にかけた剣を手にして、無能な部下の脳天へと振り下ろした。
ランプの明かりに照らされて、抜き放たれた白刃がキラリと煌めいた。
しかし、脳天へと振り下ろされた斬撃は紙一重のところで受け止められていた。
「む・・・!」
「それはちょっとやり過ぎではありませんか、父上」
「・・・無用な邪魔を、ベナミス!」
無能な部下の頭蓋骨を真っ二つにするはずだった斬撃を横から剣で受け止めたのは、我が息子であるベナミス・セイバールーンであった。
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