俺もクズだが悪いのはお前らだ!

レオナール D

文字の大きさ
188 / 317
幕間 王都武術大会

23.大会の覇者

「優勝は・・・ディンギル・マクスウェル!」

『おおおおおおおおおおおおッ!』

 闘技場が歓声に包まれる。俺は壇上に立って称賛の豪雨を浴びて、ゆっくりと右手に持った剣を掲げた。

 セイバールーン流に拉致された美女を救出して数日。あれから俺は準決勝、決勝へと勝ち進み、とうとう優勝を手にすることに成功した。

 セイバールーン流によって引き起こされた誘拐事件であったが、どうやら明るみにはならなかったようである。
 部下に命じてバロン先輩の婚約者を屋敷まで届けさせた後、俺は一度『鋼牙』が拠点としている店へと足を向けた。
『鋼牙』の幹部であるキサラギとセイバールーン流に対する対策と報復について話していたところ、セイバールーン侯爵邸を見張っていた部下がベナミス・セイバールーンからの『手土産』を持って帰ってきた。
 手土産の正体は、今回の事件に対する謝罪文といくらかの賠償金、そして、セイバールーン家の当主であるザイフォン・セイバールーンの首であった。

 俺としては中央貴族武断派の筆頭であるセイバールーン家と表立って揉めるのは避けたかったし、当主の暗殺でカタをつけようとしていたため、これ以上は彼らと戦う理由がなくなってしまった。

 スフィンクス家ではそもそも、誘拐事件について認知をしていないようである。
 どうやら俺が監禁場所に向かう道中で叩きのめした男がスフィンクス家に誘拐を伝える使者だったらしく、なぜか被害者である褐色美女が口をつぐんだのか不思議なほどに騒ぎにならなかった。

 結果、バロン先輩は準決勝でベナミス・セイバールーンに勝利をおさめ、決勝で俺と戦うことになった。
 俺とバロン先輩の戦いは熾烈を極め、武術大会はここ数年で一番の盛り上がりを見せた。最終的には俺が勝利したものの、敗北した先輩に対する称賛も留まることはなかった。もっとも、バロン先輩は俺に敗北したことを憤死するほど悔しがっており、他者から向けられる称賛の言葉など耳に入っていないようであった。

「・・・優勝、おめでとう。ディンギル・マクスウェル」

「・・・ありがとうございます。バロン先輩」

 授賞式を終えて控え室に戻ってきた俺は、バロン先輩から血を吐くような口調で祝いの言葉をかけられていた。
 線の細い貴公子のような顔つきのバロン先輩であったが、どれほど悔しかったのか、その表情は熱しすぎた鉄鍋のように真っ赤になっている。

「今回は負けを認めよう・・・だが、次回の大会では私が勝たせてもらう! 今日の屈辱は決して忘れない! 覚えているがいい!

「そうさせてもらいますよ。ところで・・・そちらの女性を紹介していただけますか?」

 バロン先輩の隣には一人の女性の姿があった。肩で切りそろえた金色の髪に、褐色の肌。西方の少数民族特有の容姿をした女性である。
    快活そうな表情の顔はなかなかの美人であり、思わず目を引く健康的な美しさがあった。

「ああ、彼女は私の婚約者だ。応援のために西方から王都まで来てくれたんだ」

「はじめまして、ミスト・カイロと申します」

「は?」

 婚約者という思わぬ言葉に、俺は思わず聞き返した。
 バロン・スフィンクスの婚約者は例の誘拐された娘。踊り子のような美貌の色気でありながら子供じみた無垢さを持つ、あの女ではなかったのか?

「ディンギル・マクスウェル様のお噂はかねがね聞いておりますわ。この度は優勝、おめでとうございます」

「あ、ああ・・・ありがとう、ございます?」

 激しく動揺しながら、俺は顔をひきつらせてなんとか挨拶を返す。
 ひょっとしたら、自分はとんでもない勘違いをしていたのかもしれない。
 あの褐色肌の美女がバロン先輩の婚約者でなかったというのであれば、別に口説いても問題なかったのではないだろうか。
 救出した流れのままで適当な宿に連れていき、思う存分にお礼をしてもらっても許されたのではないだろうか?

(もったいなかった! もったいなかった、もったいなかった~~~~~~! 俺はなんて惜しいことを! というか、婚約者じゃないのならあの女は何者だったんだよ!? スフィンクス家の関係者なんだよな!?)

 かつてない後悔に苛まれながら、俺は必死に笑顔を取り繕う。
 抑えきれなかった激情から口元が引きつってしまい、先輩とその婚約者がやや不審そうな目で見てくる。

「っ~~~、あ? そっちの子は・・・?」

 表情を取り繕うのに限界がきてしまい、俺は二人から顔を下げた。すると、ミスト・カイロ嬢の背中に隠れている小柄な人影に気がついた。

「ああ、こっちも紹介しておこうか。この子は私の妹、ナーム・スフィンクスだ。今年で10歳になる」
感想 1,043

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!