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第4章 砂漠陰謀編
19.見知らぬ老人、見知った口癖
次の日はまた強行軍だった。
腕輪の力を使って馬の脚力と体力をブーストさせ、休みなく西方へと進んでいく。
王都の近くでは人の目も多いため、どうしても街道から外れた細い道を通る必要があり、予定よりもやや到着が遅れてしまった。
それでもその日の夕暮れ時には、王国中央部と西方辺境を分ける境界線上の関所へと到着することができた。
「やれやれ・・・少しだけ遅かったみたいだな」
腕輪の力を解除して歩みを緩め、馬上から関所の門を見上げた。
夕暮れと同時に関所の門は閉められており、ここから先は通行することができなくなっていた。
周囲の平原には俺と同じように門を通り損ねた旅人らしき者達がテントを張っており、煮炊きの焚き火があちこちで煙を上げている。
「俺も今日は野宿だな・・・ああ、クソ。テントは持ってきてねえってのに」
予定では夕暮れの前に関所を抜けており、近くの町で宿をとっているはずだった。
しかし、昨晩のベナミス・セイバールーンとの会話の内容が気になってなかなか寝つけなくなってしまい、起床の時刻も遅くなってしまった。
俺は舌打ちをして、どこか空いているスペースはないかと平原を見渡した。
「ああ、そちらの旅の方。お一人かな?」
「ん?」
声をかけてきたのは、近くでキャンプを張っていた白髭の老人である。
老人は焚き火に鉄製のフライパンをかけており、中ではジュージューとぶ厚い肉が香ばしい匂いを放っている。
「この時期に西方へお越しとは珍しい。ひょっとして、傭兵さんかね?」
「そんなところだな」
俺は肩をすくめて応えた。雇われたわけではなかったが、戦いに行くというのは間違いではない。
「ここで待っている者達はみんなそうじゃよ。スフィンクス家の当主殿がかなり高額で募集をかけたようじゃからな。仕事にあぶれたものや冒険者崩れの者まで集まっているようじゃ」
「へえ・・・ひょっとして爺さんもそうかい?」
「まさか! ワシは西方にいる娘夫婦が心配で尋ねてきただけじゃよ。無事でいてくれるといいんだが・・・」
「そうだな・・・」
俺は老人の話に耳を傾けながら、フライパンを握っている手をじっと見つめる。
老人の腕は顔つきから予想される年齢よりも随分とがっしりとしている。
手の平にはタコができており、見間違えようもなく剣などの武器を振り続けていてできる痕である。
「見た目よりも若そうだな、爺さん。アンタ、いったい何者だ?」
「ほほっ、これはまたご慧眼!」
声のトーンを下げて問い詰めると、老人は快活に笑った。
フライパンに乗せたままの肉をナイフで切り分けて2枚の皿に盛りつける。その上に細かく刻んだ香草をかけて、ひょいと皿を掲げて背後のテントをアゴでしゃくった。
「続きは中で話すとしましょうか。いろいろと・・・積もる話もあるのである」
「っ・・・!」
俺は一度息を飲んで、苦笑する。
「そうだな。聞かせてもらうとしようか、爺さん」
俺は老人の後に続いてテントへと入った。
テントの中は外から見た以上に広々としており、大人二人が寝そべってもまだ余裕があるサイズだった。
老人はどっかりと俺の前に座って皿を置き、ヒゲを生やした顔に手をかけた。
「ふうー、変装は疲れるのであるな!」
老人がしわくちゃの皮膚ごとヒゲを引き剥がすと、作り物の顔面の下から若い男の相貌が現れた。頭の白髪もカツラで、その下からサクヤと同じ黒髪が現れる。
見慣れた男の姿になった老人に、俺は気安く話しかけた。
「久しぶりだな、オボロ。元気そうじゃないか」
「うむ、若殿のほうこそ久しぶりなのである! ご無事の帰還、なによりなのである!」
その男の名はオボロ。俺の配下の隠密集団『鋼牙』の次期頭領であり、サクヤの実兄でもある青年であった。
腕輪の力を使って馬の脚力と体力をブーストさせ、休みなく西方へと進んでいく。
王都の近くでは人の目も多いため、どうしても街道から外れた細い道を通る必要があり、予定よりもやや到着が遅れてしまった。
それでもその日の夕暮れ時には、王国中央部と西方辺境を分ける境界線上の関所へと到着することができた。
「やれやれ・・・少しだけ遅かったみたいだな」
腕輪の力を解除して歩みを緩め、馬上から関所の門を見上げた。
夕暮れと同時に関所の門は閉められており、ここから先は通行することができなくなっていた。
周囲の平原には俺と同じように門を通り損ねた旅人らしき者達がテントを張っており、煮炊きの焚き火があちこちで煙を上げている。
「俺も今日は野宿だな・・・ああ、クソ。テントは持ってきてねえってのに」
予定では夕暮れの前に関所を抜けており、近くの町で宿をとっているはずだった。
しかし、昨晩のベナミス・セイバールーンとの会話の内容が気になってなかなか寝つけなくなってしまい、起床の時刻も遅くなってしまった。
俺は舌打ちをして、どこか空いているスペースはないかと平原を見渡した。
「ああ、そちらの旅の方。お一人かな?」
「ん?」
声をかけてきたのは、近くでキャンプを張っていた白髭の老人である。
老人は焚き火に鉄製のフライパンをかけており、中ではジュージューとぶ厚い肉が香ばしい匂いを放っている。
「この時期に西方へお越しとは珍しい。ひょっとして、傭兵さんかね?」
「そんなところだな」
俺は肩をすくめて応えた。雇われたわけではなかったが、戦いに行くというのは間違いではない。
「ここで待っている者達はみんなそうじゃよ。スフィンクス家の当主殿がかなり高額で募集をかけたようじゃからな。仕事にあぶれたものや冒険者崩れの者まで集まっているようじゃ」
「へえ・・・ひょっとして爺さんもそうかい?」
「まさか! ワシは西方にいる娘夫婦が心配で尋ねてきただけじゃよ。無事でいてくれるといいんだが・・・」
「そうだな・・・」
俺は老人の話に耳を傾けながら、フライパンを握っている手をじっと見つめる。
老人の腕は顔つきから予想される年齢よりも随分とがっしりとしている。
手の平にはタコができており、見間違えようもなく剣などの武器を振り続けていてできる痕である。
「見た目よりも若そうだな、爺さん。アンタ、いったい何者だ?」
「ほほっ、これはまたご慧眼!」
声のトーンを下げて問い詰めると、老人は快活に笑った。
フライパンに乗せたままの肉をナイフで切り分けて2枚の皿に盛りつける。その上に細かく刻んだ香草をかけて、ひょいと皿を掲げて背後のテントをアゴでしゃくった。
「続きは中で話すとしましょうか。いろいろと・・・積もる話もあるのである」
「っ・・・!」
俺は一度息を飲んで、苦笑する。
「そうだな。聞かせてもらうとしようか、爺さん」
俺は老人の後に続いてテントへと入った。
テントの中は外から見た以上に広々としており、大人二人が寝そべってもまだ余裕があるサイズだった。
老人はどっかりと俺の前に座って皿を置き、ヒゲを生やした顔に手をかけた。
「ふうー、変装は疲れるのであるな!」
老人がしわくちゃの皮膚ごとヒゲを引き剥がすと、作り物の顔面の下から若い男の相貌が現れた。頭の白髪もカツラで、その下からサクヤと同じ黒髪が現れる。
見慣れた男の姿になった老人に、俺は気安く話しかけた。
「久しぶりだな、オボロ。元気そうじゃないか」
「うむ、若殿のほうこそ久しぶりなのである! ご無事の帰還、なによりなのである!」
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